artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
《真光寺》
[愛知県]
名古屋にて、間宮晨一千が手がけた笠寺の《真光寺》を見学する。ダイナミックなコンクリートの寺院だが、道路側に落ちる大きな片流れの屋根がシンボル性を獲得しており、現代の宗教建築における屋根の重要性を改めて感じさせるものだ。正面の抽象化された山門から続くガラスのスリットは、建物を切断し、その隙間から光が注ぐ。1階が椅子式に対応した本堂、2階は多目的な空間になっており、寺院ゆえの公共施設的な意味も帯びている。
2014/04/25(金)(五十嵐太郎)
五十嵐研ゼミ合宿(2日目)
会期:2014/04/23~2014/04/24
[東京都]
ゼミ合宿の二日目も、住宅の見学をコンセプトとし、まず午前は前川國男や堀口捨己による近代住宅や民家などを楽しめる江戸東京たてもの園へ。ちょうど土浦亀城の展覧会を開催中であり、現存する自邸の大きな模型を中心に、卒計ほか、モダニズムの住宅図面、写真家としての妻の仕事なども展示されていた。園内では、レストランにも使われる《デ・ラランデ邸》が増えていた。ただ、洋館の場合、家具がない部屋は空虚感がより強くなる。
午後は前から行きたかった八王子のUR都市機構技術研究所を訪れた。スケルトン・インフィルの考えを提示するKSI住宅実験棟、自然と共生するテクノロジーを紹介するすまいと環境館を経て、お目当ての集合住宅歴史館へ。同潤会の単身者用(畳ベッドを備えていた)と家族用の部屋、2DKの蓮根団地(55型)、多摩平団地のテラスハウス、二層分を再現した前川國男の晴海高層アパートなど、新しい日本の住まいの形式を提示し、日本住宅公団がもっとも輝いていた1950年代を中心とした実物移築の展示を楽しむ。
URの展示を見終えた後は、中央線で戻りながら、幾つか建築をまわった。ファーレ立川を久しぶりに再訪したが、街なかのアートを探しているうちに、おそらくそうでないものも作品のように見えてくる。三鷹の駅前ではパチンコ屋を改修した、MOUNT FUJIによるハモニカ横丁ミタカで軽く一杯をやって休憩した。ハモニカ横丁の雰囲気をイメージした、異なる飲食店を同じ空間に混在させた独特のインテリアだが、そもそも、各店を説得して、よくこの企画を成立させたものだと感心する。最後はオリジナルである吉祥寺のハモニカ横丁でアトリエ・ワンの手がけた店舗を見てから、ゼミ合宿の打ち上げを行なう。
写真:上から、《デ・ラランデ邸》、堀口捨己《小出邸》、吉祥寺のハモニカ横丁
2014/04/24(木)(五十嵐太郎)
五十嵐研ゼミ合宿(1日目)
会期:2014/04/23~2014/04/24
[東京都]
埼玉県立近代美術館の「戦後日本住宅伝説」展の模型制作の準備を兼ねて、五十嵐研のゼミ合宿で東京をまわる。初日は、菊竹清訓の《スカイハウス》(これは外観のみ)、宮脇檀の《松川ボックス》、磯崎新の《ホワイトハウス》、東孝光の《塔の家》、坂倉準三による《岡本太郎邸》(=岡本太郎記念館)などをまわる。最初の一軒をのぞき、内部や非公開部分も見学することができた。《松川ボックス》では、現在、清水敏男のオフィスになっている部分に入ったが、木造とRC造をミックスしたポストモダン的な感覚を堪能した。《塔の家》では、模型をつくるために担当の学生が実測を行なう。また移動の途中、《軍艦マンション》、山本理顕の《ハムレット》、《国立能楽堂》、槇文彦の《津田ホール》と《東京体育館》、《国立競技場》、竹山聖の《テラッツァ》、《山田守邸》(=蔦珈琲店)、中央アーキの《神宮前ビルディング》、坂本一成の《QUICO神宮前》、青木淳の《SIA青山ビル》、坂倉の《ビラモデルナ》、アトリエ・ワンの《ナイキパーク》なども寄る。仙台と違い、この圧倒的な建築の密度感が東京らしさだ。
写真:上から、中央アーキ《神宮前ビルディング》、《軍艦マンション》、坂倉準三《ビラモデルナ》、竹山聖《テラッツァ》
2014/04/23(水)(五十嵐太郎)
出版記念トークイベント・建築系ラジオ公開収録「ようこそ建築学科へ!──公開オリエンテーション」
会期:2014/04/19
カフェ・アリエ[東京都]
カフェ・アリエにて開催された、筆者監修による『ようこそ建築学科へ!』(学芸出版社)の刊行記念イベントに向かう。これは磯崎新の幻の処女作《ホワイトハウス》で、10年ほど前に噂を聞いて、椹木野衣と探しにいったことがある。今はカフェとなり、内部も見学できるようになった。イベントでは最大30名近くが入っていたが、かつてネオダダのアーティストがここに集って盛り上がった時代を想いながら、建築系ラジオの収録を行なう。
2014/04/19(土)(五十嵐太郎)
カタログ&ブックス│2014年4月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
「ハイレッド・センター:『直接行動』の軌跡」展 カタログ
2013年11月9日から12月23日まで名古屋市美術館で、2014年2月11日から3月23日まで渋谷区立松濤美術館で開催された、「ハイレッド・センター:『直接行動』の軌跡」展のカタログ。
戦後美術の坩堝であった読売アンデパンダン展が崩壊した1963年、三人の若き前衛芸術家(高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之)によって、ハイレッド・センターは結成されました。...記念すべき結成50周年に開催する本展では、HRCが発行した印刷物やイベントの記録写真をはじめとして、主要メンバーの同時期の作品も含めて、ハイレッド・センターの「直接行動」の軌跡を紹介します。[名古屋市美術館サイトより]
Magazine for Document & Critic: AC2 No.15
国際芸術センター青森が、2001年の開館以来、およそ毎年1冊刊行している報告書を兼ねた「ドキュメント&クリティック・マガジン エー・シー・ドゥー」の第15号(通巻16号)。2013年度の事業報告とレビューのほか、関連する対談や論考などを掲載。
S-meme Vol.7 仙台文学・映画の想像力
仙台から発信する文化批評誌『S-meme』の第七号が完成しました。今回はテーマを「仙台文学・映画の想像力」とし、...仙台の文学と映画をテーマに様々なコンテンツを収録しています。
また、今回の装幀では「ひっくり返して二面読める本」に取り組みました。本としての挙動がスムースであることはもちろん、蛇腹を活かしてページを広げて読むこともできますし、机に置いて読む時のページが立ち上がるようなちょっとした挙動は普通の本と違っていて、新鮮に受け取って戴けるのではないかと思います。ミシン目は型抜きで施しており、意味の無いように見える場所にあるミシン目は型代を減らすために背表紙の部分の型を使い回してできたいわば「盲腸」です。蛇腹の張り合わせは受講生が自ら手で行ない一冊一冊仕上げています。[せんだいスクール・オブ・デザインサイトより]
ようこそ建築学科へ! 建築的・学生生活のススメ
建築学科と言っても大学、高専、専門学校、住居系、芸術系、工学部系はどう違う?そんな学科紹介に始まり、授業と課題に取組むツボや“建築的”日常生活、学外での建築体験、そして将来設計まで、知れば知る程のめり込む、ハードだけどハッピーな建築学生ライフのススメ。学生生活のあらゆる場面でためになるアドバイス満載。[学芸出版社サイトより]
嶋田厚著作集(全3巻)
コミュニケーション論、文学、社会学、また芸術やデザインをめぐる思想史の領域で、独特の学際的、越境的な仕事を残してきた嶋田厚(1929〜)の自選著作集。第1巻:『生態としてのコミュニケーション』、第2巻:『小さなデザイン 大きなデザイン』、第3巻:『明治以降の文学経験の諸相』自筆略年譜、著作一覧付き。[新宿書房サイトより]
2014/04/15(火)(artscape編集部)