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建築に関するレビュー/プレビュー

《如風庵》、《凱風館》

[兵庫県]

光嶋裕介の案内により、中島工務店神戸支店にて、建築模型を見学した後、竣工間近の《如風庵》の現場を訪問した。久住有吉による左官の仕事が光る、うねる大きな壁が印象的な住宅である。いわゆる抽象的な白模型ではなく、多彩な素材感と人の動きを細かく、ていねいに見せる模型だったが、実際の建築もそれを強く意識したデザインになっており、多様な場面の展開と手触り感の強い住宅である。その後、住吉に移動し、光嶋が手がけた、内田樹の自邸兼道場の《凱風館》を見学する。大きなヴォリュームを小さな屋根の単位で分節しながら、それぞれの場にいろいろな素材を配して、異なる空間をつくる。一方、1階奥の道場は中心軸の通った大空間だ。合気道、麻雀、寺子屋など、パブリックな場として活躍する開かれた家である。


《如風庵》


光嶋裕介《凱風館》


光嶋裕介《凱風館》模型

2014/07/28(月)(五十嵐太郎)

第40回大原美術館美術講座 1960年以後の芸術・建築

会期:2014/07/26~2014/07/27

倉敷アイビースクエア オパールホール[岡山県]

倉敷アイビースクエアに向かい、大原美術館の美術講座「1960年以後の芸術・建築ー万博、モノ派、21世紀へのビッグバン」に出席した。毎年恒例のシリーズであり、地元で楽しみにしているファンが多いことが印象に残る。高階秀爾が大原のコレクションをもとに20世紀の現代美術史、建畠晢が後に大きな影響を与えたパリの「大地の魔術師」展(1989)、李禹煥がもの派、筆者が万博の時代の建築について、それぞれレクチャーを行い、最後に質疑応答を交えて全体討議を行なう。二日間の濃いプログラムだった。

2014/07/26(土)(五十嵐太郎)

《はじまりの美術館》

[福島県]

猪苗代湖に向かい、《はじまりの美術館》を見学した。築120年の古い蔵をリノベーションし、アール・ブリュットの美術館に変えたものだが、美術に閉じることなく、今後は周囲の住民を巻き込む活動を展開するという。オープニング展は、専門的な美術教育を受けていない作家と、いわゆる現代美術家と等しく組み合わせている。建物の設計は竹原義二であり、蔵の中に小さな蔵をつくるような展示室群だ。また縦横の両軸とも、端から端まで、建物を貫通し、向こうの風景まで見える視線の抜けが抜群だ。それにしても、蔵は全長33mもあり、もとの梁のあまりの太さに度肝を抜かれた。



《はじまりの美術館》内部

2014/07/25(金)(五十嵐太郎)

《メソニックビル》

[東京都]

東京に移動し、神谷町の《メソニックビル》(1980)を見学する。東京タワーのほか、アントニン・レーモンドの教会や《ノアビル》などの近くで、外観はガラス張りのモダン建築だが、内部の地下には、フリーメーソンの青いブルー・ロッジと黄色のスコティッシュ・ライト・ホールなど、大工道具を基調とした象徴的なシンボルに彩られた空間がある。筆者は卒論のとき、18世紀フランスのアンビルドの建築家ジャン・ジャック・ルクーを題材とし、フリーメーソンと建築の関係に少し触れたので、懐かしい雰囲気だ。


ブルー・ロッジ


スコティッシュ・ライト・ホール

2014/07/23(水)(五十嵐太郎)

《名古屋城》、《乃木倉庫》、《名古屋能楽堂》

[愛知県]

名古屋にて、あいちトリエンナーレ2016の芸術監督を決定する委員会に出席した後、県庁舎からの徒歩圏なので、シンボル的な存在である名古屋城、乃木倉庫、名古屋能楽堂などのエリアを散策する。熊本城を見学したばかりなので、比較すると、名古屋城の大きさを実感できる。これもオリジナルの木造ではなく、コンクリートで再建してから半世紀以上が過ぎているが、ある意味では模像自体もすでに歴史的存在になっている。


《乃木倉庫》


《名古屋能楽堂》

2014/07/22(火)(五十嵐太郎)