artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
《海遊館》
[大阪府]
ケンブリッジ・セブン・アソシエイツが手がけた《海遊館》を訪れた。まずエスカレーターで一気に最上階までアクセスする。屋上の屋外展示を経て、室内に入ると、やがて目玉となる巨大な水槽に出会う。スペクタクル的な空間のスケールをもつ、十字の水槽のまわりを降下しながら、さまざまな角度と高さから鑑賞しつつ、その脇にも異なる環境の展示空間を付設する。なるほど、よくできた動線だ。とくに同一の小さな水槽に対して、高さを変えて何度か観察できるのが興味深い。自然が創造する生物の造形の凄さと多様さをこれだけ見せつけられると、美術館より水族館の集客があるのもうなずける。
2014/07/20(日)(五十嵐太郎)
《熊本城》
[熊本県]
熊本城を訪れるのは、学生のとき以来だろうか。RC造で復元されたものとはいえ、改めて外観の細部をつくづくと眺めると、日本のお城というのは、面白いかたちをしている。これまでの日本建築のヴォキャブラリーを活用しながら、象徴性と機能性をアクロバティックに架橋する。やはり、火災にも耐える石垣がもっとも長く残りそうな建造物だ。
2014/07/14(月)(五十嵐太郎)
プロジェクト群、「水戸岡鋭治からのプレゼント」展
会期:2014/06/28~2014/09/15
熊本市現代美術館[熊本県]
久しぶりに熊本へ。おそらく震災がなければ、もっと早く訪れていたはずの熊本駅前のプロジェクト群を見学した。佐藤光彦による用途に応じて大小様々な開口を空けた壁を折り曲げて囲む《西口駅前広場》、西沢立衛の大きなしゃもじのような大屋根がある《東口駅前広場》、クライン・ダイサム・アーキテクツのカラフルでかわいらしい《熊本南警察署熊本駅交番》、デザインヌーブの《白川橋左岸緑地トイレ》、田中智之らによる駅周辺のサインやデザインなど。2011年3月の九州新幹線の全線開通にあわせて、すごい密度感でこれらのプロジェクトがそろった。くまもとアートポリスの制度を使いながら、どこにもないユニークな駅周辺の景観が生まれている。また熊本市現代美術館では、「水戸岡鋭治からのプレゼント まちと人を幸福にするデザイン」展をちょうど開催しており、のぞくと、JR九州関係のプロジェクトが目白押しだ。他地域と違う、JR九州の攻めの姿勢を感じる。展示は、会場内にカフェ、ショップ、子供が乗るミニトレイルもあり、楽しげな雰囲気だった。
2014/07/13(日)(五十嵐太郎)
《サニーヒルズ 微熱山丘 南青山》、《アーバンプレム南青山》 、《House SH》
[東京都]
閉館した黒川紀章による《ベルコモンズ》を通り過ぎ、南青山の隈研吾によるパイナップルケーキ店《サニーヒルズ》を見学した。この目立つ形態は、小さなアイコン建築として機能している。この周辺の散策を続けると、永山祐子の《アーバンプレム南青山》、《中村拓志のHouse SH》を発見した。やはり建築家の物件が多いエリアである。
2014/07/12(土)(五十嵐太郎)
ルドルフ・シュタイナー展 天使の国
会期:2014/03/23~2014/08/23
ワタリウム美術館[東京都]
ワタリウム美術館のルドルフ・シュタイナー展は、過去にも開催されているが、今回はとくに最初のゲーテアヌム(1922)の建設、完成、そして放火による焼失まで、約16分間のスライドショーが圧巻だった。曲線が多い、複雑な造形や装飾をよく木造で施工したなあと感心させられる。大量の写真を通じ、第1ゲーテアヌムの記録で、これだけ詳しいものは初めて見ることができた。時期的には、田舎においてRC造で全部つくるのは大変だろうが、3Dプリンタのように、木の層を幾重にも積みあげて、有機的な内部ヴォリュームがつくられている。その大変さゆえに、逆説的にかたちへの意志が感じられた。
2014/07/12(土)(五十嵐太郎)