artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

遠藤秀平《サイクルステーション米原》、《ハーモニーホール駅》、《えちぜん鉄道大関駅(駐輪場)》

[滋賀県、福井県]

米原駅の横にある遠藤秀平の《サイクルステーション》を久しぶりに訪れる。さらに福井に移動し、田園の中の福井電鉄《ハーモニーホール駅》と、えちぜん鉄道大関駅の《駅輪場》に足を運んだ。これらは初めてである。いずれもコルゲート鋼板をうねらせて独自の幾何学を描く、1990年代半ばの仕事だが、とくに大関駅の駐輪場に、遠藤のデザインの特徴がよくあらわれていた。平坦な日本の街の中に人々に共有される風景を生みだしている。
写真:遠藤秀平《ハーモニーホール駅》

2014/05/25(日)(五十嵐太郎)

AAA30s「住まいが風景をつくる」展

会期:2014/05/25~2014/06/01

GALERIE hu:[愛知県]

名古屋へ。車道のGALERIE hu: にて、AAA30s展の会場を見る。単に愛知県の同世代、すなわち30代の若手建築家9組を集めたのではなく、建築を現代美術の「ギャラリー」で展示することの意味を考え、しかもキャプションなしで見せるというのは、思い切った試みだ。建築は、どこで、どう見せるかについて意外と無頓着だからこそ評価したい。名古屋工業大学では、AAA30sのシンポジウムが開催された。9組による矢継ぎ早のプレゼンテーションの後、筆者がコメントを行い、最後は全体で討議を行なう。「住まいが風景をつくる」というタイトルは、50年代の計画学による最小限住宅、70年代の閉ざされた住宅などを歴史的に振り返っても、現在の若手の意識をよくとらえたものだった。ちなみに、愛知の家づくりでは、親と子の関係が重要らしいことも浮上した。公共施設でなくとも、個人住宅から共有される風景をつくることを議論し、海外経験のある建築家からは日本の特殊な住宅事情が語られ、マニフェストとしての自邸兼オフィスにも触れて、さらに建築家の仕事を獲得し、拡張していく活動などに触れる。最後は、現在は住宅から次のステップに進めないという隈研吾の論「パドックからカラオケへ」の問題提起を考えることになった。

2014/05/24(土)(五十嵐太郎)

『ねもはEXTRA 中国当代建築』出版記念イベント「中国当代建築の〈すべて〉──オリンピックと万博を終え、中国建築はどのように進化したのか」

会期:2014/05/17

アーツ千代田 3331 1Fラウンジ[東京都]

アーツ千代田3331における『ねもはエクストラ中国当代建築』の出版記念トークイベントに登壇する。この特集を企画した市川紘司が中国近現代建築史を概観し、次に筆者が入った対談では、1991年に初めて訪れて以来、まず古建築、近代建築を見てからの変化を語る。中国で活動するKUUの佐伯聡子は自作を紹介した。以前、マイナスKハウスを見学したが、中国らしからぬ外観からではなくプランからの思考と、プロジェクトの変更に対応しやすい点、部分でも世界観が伝わるデザイン(全体は部分の集積)が、KUUの特徴だろう。ところで、中国でレクチャーを行なうと、日本では建築家の系譜図を描けることに驚かれる。中国でそれがないのは、文化的断絶と広さも一因だろう。また日本の建築雑誌は、よく10年ごとに近過去を振り返る作業を繰り返し、それが歴史の輪郭をスタディし、建築界に基盤となる共通認識をもたらしているのかもしれない。

2014/05/17(土)(五十嵐太郎)

開館10周年記念 レアンドロ・エルリッヒーありきたりの?

会期:2014/05/03~2014/08/31

金沢21世紀美術館 展覧会ゾーン[石川県]

金沢21世紀美術館の「レアンドロ・エルリッヒーありきたりの? 」展へ。すでに常設で組み込まれたプールの作品のように、空間のイリュージョンをつくりだす作風で知られるが、美術館の内部に様々な虚構の空間が出現する。映画『インセプション』のように、横倒しになった大きな階段室、展示室内のありえないエレベーター、鏡面効果を用いた屋内庭園、床に映り込む街路、鏡越しのリハーサル室、ログハウスなど、自分がどこにいるのか、くらくらする体験が続く。

2014/05/16(金)(五十嵐太郎)

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工藤和美《金沢海みらい図書館》

金沢海みらい図書館[石川県]

金沢へ。昨年はまさかの水曜休館で外観のみしか見ることができなかった、工藤和美が設計した金沢海みらい図書館をようやく再訪した。内部は、無数の小さな丸窓に覆われたキュービックな大空間の吹抜けである。天気もよかったが、大開口なしでも、明るくて気持ちがいい。丸窓は船のイメージもあるだろう。交通量が多い道路に面した敷地は、外と積極的に交流する周辺環境ではなく、内部に豊かな外部的環境をつくる。

2014/05/16(金)(五十嵐太郎)