artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
せんだいスクールオブデザイン メディア軸♯5 ディスカッション+祐成保志
会期:2014/06/25
東北大学片平キャンパス都市建築学専攻仮設校舎SSDプロジェクト室2[宮城県]
SSDのPBL3メディア軸の新しい建築ガイドをつくるスタジオで、講師の磯達雄、星裕之らの受講生とともに二度目のフィールドワークを行なう。定禅寺通りの山下寿郎による東京エレクトロンホール宮城(県民会館)から出発したが、仙台市役所や藤崎百貨店も同じ設計者によるものだ。今回は街区よりも小さいマイクロ・ブロックの単位で、普段は素通りするような普通の建物も詳細に観察することを心がけ、スローウォーク並みにゆっくりとしか、通り沿いに移動できない。が、そこに1960~80年代から現在のデザインが積層し、50年代の記憶も見つかるのは興味深い。とくに竹中工務店が設計した黒い仙台第一生命ビルや、岡田新一が手がけた鹿島建設東北支店は、1970年頃に出現したカッコいい建築だった。
2014/06/25(水)(五十嵐太郎)
素顔のブラジル展
会期:2014/06/13~2014/09/15
無印良品有楽町2F ATELIER MUJI[東京都]
有楽町・無印良品の「素顔のブラジル」展は、膨大な写真と現地の小物のディスプレイによって、生活と日常のデザインを紹介する。展示台や天井の布などの会場デザインは、CAt+安東陽子らが担当し、ぐにゃぐにゃしたフォルムのテーブルは、オスカー・ニーマイヤーが関わったイビラプエラ公園内のかたちを縮小したものだ。関連企画のトーク「ブラジルの引力アート、デザイン、建築、都市」を、ちょうどブラジル特集を刊行した『カーサ・ブルータス』の編集者、白井良邦と行う。筆者と彼の組み合わせは、東京国立近代美術館の「ブラジル:ボディ・ノスタルジア」展(2004年)のブラジリアをめぐるトーク以来だから、10年ぶりになる。今回、ブラジルの社会・建築・芸術の流れをまとめたが、1936年からの教育保健省は重要なプロジェクトだったことがわかった。ルシオ・コスタがル・コルビュジエを招聘し、ニーマイヤーらが設計に関わったからである。これはモダニズムを伝統化し、「食人宣言」のように飲み込んだブラジル建築の近代の出発点と言える。
2014/06/23(月)(五十嵐太郎)
せんだいスクール・オブ・デザイン Interactiveレクチャー♯2 江坂恵里子「“コ・クリエイション”で都市をデザインする」
会期:2014/06/19
house/阿部仁史アトリエ[宮城県]
せんだいスクール・オブ・デザイン2014年度春学期のInteractiveレクチャーは、仙台の将来へのヒントにすべく、今期は「地域からデザインをおこす」ことをテーマとしている。そこで名古屋の国際デザインセンターの海外ネットワークディレクターをつとめる江坂恵里子をゲストに迎えた。名古屋はデザイン都市宣言を行い、ユネスコの創造都市ネットワークで、神戸とともにデザイン都市として認定されていることから、さまざまに国際的な活動を展開している。その鍵となるのが、彼女だ。歴史を振り返ると、名古屋は1988年のオリンピックの誘致に失敗し、その代わりにデザイン博を開催したことから、こうしたデザインへの流れが生まれている。もしオリンピックが来ていたら、なかった可能性も高い。
2014/06/19(木)(五十嵐太郎)
せんだいスクール・オブ・デザイン メディア軸♯5 大山顕レクチャー「ままならなさへのまなざし」
会期:2014/06/19
東北大学片平キャンパス都市建築学専攻仮設校舎SSDプロジェクト室2[宮城県]
せんだいスクール・オブ・デザイン2014年度春学期PBLスタジオ1メディア軸にて、大山顕のレクチャー「ままならなさへのまなざし」を行なう。彼が大学時代に工場に興味をもったいきさつから、団地、ジャンクション、高架下、クリスマスの浮かれ電飾など、現在に至るまでの観察の活動がまとめて紹介された。建築が陥りがちな作家主義を排したところから、当たり前だと思っている風景をいま一度じっくり観察することから、豊かな世界が目の前に広がっていく。土木ファン層の開拓や、ときには貸し切りバスを使う現地見学会のイベントの話も興味深い。
2014/06/17(火)(五十嵐太郎)
カタログ&ブックス│2014年6月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
世界のデザインミュージアム
美術評論家・暮沢剛巳が現地取材した世界9カ国25館のデザインミュージアム。コレクションにとどまらず、その由来や展示空間、建築、そして19世紀以降のデザイン展開の歴史についても徹底解説。この1冊でデザインミュージアムのすべてがわかる! [本書カバーより]
Rhetorica#02 特集:DreamingDesign
レトリカ新刊の特集は、技術と未来を考える方法としてのデザインです。人工物と人間の絡み合いを解きほぐし、再構成する。そのことを通じて、現実に対するイメージを変容させる。そんな技法としてのデザインについて考えています。目次=巻頭言:「人工物に夢を見せる」論考:太田知也「Fitter Happier? ──〈人間?人工物〉共生系の都市論」論考:松本友也「ヴァーチャル化とディスポジション──DreamingDesignについてのノート」勉強会:中村健太郎+松本友也+瀬下翔太「逡巡するアルゴリズム」往復書簡:成上友織+松本友也「いま再び、キャラクターについて」[本書特設ウェブサイトより]【http://rheto2.rhetorica.jp/】
現代建築家コンセプトシリーズ17 大西麻貴+百田有希/o+h
2008年から活動をはじめ、コンペ案や展覧会、住宅作品を発表してきた「大西麻貴+百田有希/o+h」による、国内初の単著。生活空間に物語を与え、生活時間を豊かにし、生活のすべてを尊ぶという、建築の本来の姿をどのように現在の世界にうみだすことができるだろうか。そう問い続けながら大西と百田は、建築におけるあらゆる物事のあるべき関係やディテールを考えなおし、建築が新しく輝き、もっとも愛される瞬間を探している。本書では、大西麻貴+百田有希/o+h の8つの作品が、どのような物事の関係性からうみだされたかを綴る。阿部勤氏との往復書簡、西沢立衛氏との対話も掲載。バイリンガル[本書「かたちをこえる──AIRの枠組みそのものをtrans×formする試み」より]
アトリエ・ワン コナモリティーズーーふるまいの生産
アトリエ・ワンにとって、共同体と都市空間、小さなスケールの住宅と大きなスケールの街をつなぐものは何か。30年におよぶ活動の上に、いま彼らは「コモナリティ」(共有性)のデザインの重要性を位置づけます。「コモナリティ」のデザインとは、建築や場所のデザインをとおして、人々がスキルを伴って共有するさまざまなふるまいを積極的に引き出し、それに満たされる空間をつくりだすことです。 本書では、アトリエ・ワンの「コモナリティ」をめぐるさまざまな思考と作品を紹介します。 世界各地で出会ったコモナリティ・スペースの収集と分析、建築・思想書の再読、また芸術創造、歴史、社会哲学論の観点から「コモナリティ」を考える3つの対話も収録。アトリエ・ワンによる都市的ふるまいや文化的コンテクストを空間に反映させる実験的なインターフェイスである《みやしたこうえん》、《北本駅西口駅前広場改修計画》、《BMWグッゲンハイム・ラボ・ニューヨーク》、《同・ベルリン》、《同・ムンバイ》、《カカアコ・アゴラ》も解説とともに掲載。」[LIXIL出版社サイトより]
αMプロジェクト2013 楽園創造[パラダイス]—芸術と日常の新地平—
武蔵野美術大学創立80周年にあたる2009年、かねてより待望されていた恒常的なギャラリースペースが、千代田区東神田に「gallery αM」として新たにオープン。2013年度には、中井康之氏をゲストキュレーターに迎え、連続展「楽園創造—芸術と日常の新地平—」を開催いたしました。本カタログには、現在活躍中の作家6名と1組による7回の展覧会のそれぞれについての論考と作家趣旨文、会場風景の写真とアーティストトークの記録がまとめられております。[本書より]
東京国立近代美術館 研究紀要 第18号
東京国立近代美術館が一年度に一回刊行している研究紀要。今号では、論文「アジアからの美術書誌情報の発信」、「吉澤商店主・河浦謙一の足跡(1)」、資料紹介「メディア連携を企図する館史としての『東京国立近代美術館60年史』」などを収録している。
2014/06/16(月)(artscape編集部)