artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
《原広司自邸》/《トラスウォール・ハウス》
[東京都]
埼玉県立近代美術館の「戦後日本住宅伝説~挑発する家・内省する家」展の準備のために、原広司の自邸を訪問した。玄関は小ぶりだが、傾斜地を活かし、奥には住宅のイメージを超えた幾何学的な空間が展開する。後の京都駅などにも通じる形式であり、住まう家の枠組に囚われないヴィジョンを内包していた。スケールの操作も興味深い。その後、同じ鶴川にある原の初期作品の《慶松幼稚園》と、《鶴川保育園》も訪れた。前者は、のびのびとした造形で、光の穴と鮮やかな色が各部屋を彩る。後の那覇の小学校にも連なるデザインだった。後者は、矩形フレームを内外で反復しながら、丸柱の列柱廊や吹抜けが領域をつくる。ここにも原の他の作品との連続性がうかがえる。
鶴川駅の近くでは、大学院のとき、完成したばかりに見学した、牛田+フィンドレイによるトラスウォール・ハウスを再訪した。キースラーばりの臓器のようなぐにゃぐにゃした造形のインパクトは変わらない。ただ、壁は白さがだいぶなくなっていた。
写真:上=原広司《慶松幼稚園》、中=原広司《鶴川保育園》、下=牛田+フィンドレイ《トラスウォール・ハウス》
2014/03/27(木)(五十嵐太郎)
2014プリツカー賞受賞 坂茂
坂茂がプリツカー賞を受賞ということで、共同通信やEFEスペイン通信社からコメントを依頼された。彼は、構法や素材の実験と、被災地などでの社会的な活動の両輪を接合した実践的な建築家である。それにしても、SANAA、伊東豊雄の受賞に続き、世界における日本の建築家への注目の高さがうかがえる。
2014/03/25(火)(五十嵐太郎)
《清華亭》
[北海道]
札幌を発つ前に《清華亭》を見学した。明治初期の和洋折衷建築である。ベタに洋室と和室が接続し、その即物的な感じが、蝿の頭を人体にくっつけた映画『蝿男の逆襲』的で興味深い。この緩やかではない和洋の合体は、トトロなどジブリ映画にも出るモチーフである。
2014/03/24(月)(五十嵐太郎)
「好きです。さっぽろ(個人的に。)」トークフォーラム「景観開放」てのひらの都市計画/それぞれの都市空間
インタークロス・クリエイティブ・センター1階「Cross×Garden」[北海道]
インタークロス・クリエイティブ・センターの「景観解放 てのひらの都市計画/それぞれの都市空間」に参加する。イベントは投票で選んだ札幌景観48のカードの完成記念を兼ねていた。これは遊びながら、まちづくりを学べるというもの。行政が関わる景観関係イベントはいろいろ呼ばれたが、ここはもっともサブカル寄りで別の軸を打ち出している。トークでは、「景観をつくるもの」のプレゼンを行なう。ジョン・ハサウェイ(日本人)は、無重力と少女の世界を描く彼の絵を紹介する。これは村上隆のスーパーフラットも想起するが、よりアナログでマッドサイエンティスト的だ。観光社会学の岡本健は、森川嘉一朗の趣都論を地方×ツーリズムの文脈に展開する。ジョン・ハサウェイの絵は、神戸ビエンナーレ2013で初めて見たが、二次元の膨大過ぎるレイヤーによって情報量をひたすら増やす画法だ。これは時間がかかる。コミケや海外などでの作品集や自主制作の売上げといったお金の出入りのディテールを聞いたが、現時点では確かに商業出版にのせないほうがよさそう。
2014/03/23(日)(五十嵐太郎)
シンポジウム「札幌市資料館を再考する」~アートによる歴史的建造物の活用と展望~
札幌市資料館 2階研修室[北海道]
札幌へ。初めてテレビ塔に登る。名古屋のタワーと同様、今やそれほど高い構築物ではないのだが、東西の軸線上という都市計画的に重要な位置に置かれているので、やはり見晴らしがいい。続いて、札幌市資料館へ。1926年に誕生したかつての控訴院である。名古屋の市政資料館と同じ施設で、現在、この二都市だけに残るという。ここで札幌国際芸術祭2014プレフェスティバルのシンポジウム「資料館を再考する」の前半を聴講した。建築史家の角幸博は、この建物の意匠的な特徴や保存のあり方について。芹沢高志は、神戸のデザインセンターKIITOの試みと、横浜トリエンナーレ2005での近代建築活用の事例を紹介した。大変でも、あえて近代建築を使い続けることの意義を語る。
写真:上=札幌テレビ塔。中=テレビ塔からの眺望。下=札幌市資料館。
2014/03/23(日)(五十嵐太郎)