artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

ここに、建築は、可能か 第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展

会期:2013/01/18~2013/03/23

TOTOギャラリー・間[東京都]

ギャラリー間の「ここに、建築は、可能か」展を訪れた。大量のスタディ模型など、大がかりなインスタレーション以外のコンテンツは、ほぼすべてを東京会場でも見ることができ、内容的にはヴェネチアビエンナーレ国際建築展2012の完全移植と言える。ただし、オリジナルがあの使いにくいと言われる日本館を巧みに使い倒した空間展示のインスタレーションだっただけに、場所を変えたときの違いはやはり気になってしまう。例えば、四面の壁で囲まれていた畠山直哉による陸前高田のパノラマ写真が、ここでは一直線に展開している。

2013/02/22(金)(五十嵐太郎)

せんだいスクール・オブ・デザイン 2012年度秋学期学内講評会

会期:2013/02/15

KatahiraXプロジェクトルーム、ギャラリートンチク[宮城県]

せんだいスクール・オブ・デザインの学内講評会を行なう。メディア軸のスタジオの成果物は、現代美術を特集した『S-meme』5号である。今回の内容は、受講生全員による志賀理江子「螺旋海岸」展レビューとsmtの担当学芸員・清水建人さんのレクチャー、そしてスローウォークの実践という二本柱だ。そのほか、拝戸雅彦によるあいちトリエンナーレと、住友文彦の前橋、横浜、別府における地方とアートのレクチャーも収録した。そして螺旋海岸展とスローウォークの運動をヒントに、蛇腹形式を三ひねりくらいした前衛的な装幀デザインが最大の特徴である(全体を開くと一直線ではなく、S字になり、菊判一枚に)。また印刷機を活用したグラデーション印刷の手法も実験した。いずれも紙の媒体でしかできない読書の体験をもたらす試みである。

2013/02/15(金)(五十嵐太郎)

隈研吾《アオーレ長岡》

[新潟県]

隈研吾が設計した《アオーレ長岡》を訪れた。駅から空中のブリッジを介して直接アクセスできる。これ以前にたっていた石本喜久治のかわいらしいおむすびのような近代建築、《厚生会館》も好きだったが、今回完成した《アオーレ長岡》は現代的なテイストによる地方の公共施設の新しいモデルを示す。ちょうど隈の『小さな建築』を読んでおり、《根津美術館》とは違うかたちで、隈スタイルの集大成と言うべき作品であると思った。《アオーレ長岡》は、屋根が付いた大きな広場を中心に据え、そのまわりに分棟形式で市庁舎の機能を置く。まさに開かれた市庁舎である。後日、『city&life』誌の企画で、隈研吾さんと市庁舎をめぐって対談をしたのだが、やはり、長岡市長の存在が大きかったようだ。経歴も建築学科卒である。建築を変えるなら、建築学科から政治家になる人をもっと増やすのが近道かもしれない。

2013/02/14(木)(五十嵐太郎)

平成24年度 東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻修士論文最終審査 デザイン・計画系

会期:2012/02/13

東北大学片平キャンパス電気通信研究所2号館講義室(430)[宮城県]

東北大学にて修士論文の発表会が行なわれた。五十嵐研からは、江川拓巳による岡本太郎の怪獣建築と言うべきマミ・フラワー会館論(太陽の塔と同時期)と、平野晴香による戦後の国公立美術館における建築展の研究が無事に終了した。いずれも建築とアートを架橋するテーマだが、後者は建築展の情報に関する貴重なアーカイブとなり、前者は貴重な資料を探り、岡本太郎のまだあまりよく知られていない側面を掘り下げる内容になった。

2013/02/13(水)(五十嵐太郎)

『五十嵐太郎研究室アーカイブス2005-2012』

発行日:2013年01月

東北大学の五十嵐研の8年間の活動をまとめた全208頁の本、『五十嵐太郎研究室アーカイブス2005-2012』が完成した。10年という節目ではなく、これを制作したのは、いまがちょうど五十嵐研の第一期が終わった頃と判断したからである(あいちトリエンナーレ2013が始まる今年が第二期のスタートになるだろう)。家型、広場、窓学、温室、聖地などのリサーチ、ヴェネチア・ビエンナーレ、横浜トリエンナーレ、3.11以降の建築展などの設営、出版や執筆の企画、『ユリイカ』のOMA事典や『美術手帳』のSANAAキーワード、南相馬の仮設住宅地計画など、さまざまなプロジェクトを紹介している。ほかには、五十嵐研の学生による東京建築コレクションの最優秀、卒計日本一決定戦の日本二、同ファイナリスト3作品を含む、全国レベルでの評価を獲得した5作品も収録した。

2013/01/25(金)(五十嵐太郎)