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建築に関するレビュー/プレビュー

京都精華大学建築学科 卒業制作講評会

会期:2013/01/22

京都精華大学[京都府]

京都精華大学にて、ゲストとして卒計の講評会に参加した。鈴木隆之、新井清一、塚本由晴など、各スタジオの個性が学生の作品に強く表われている。総合では、塚本スタジオの黒越啓太による里山の住生活を100年かけて再生していく建築的プログラムが圧倒的に抜きん出ており、ほとんど討議の必要なく、最優秀になった。他に気になったのは亀井洋樹の淡路島の小屋バリエーション、泉谷真之輔の広場建築。長谷川翔の都市に葬儀場を埋め込む純粋建築、文元諒の帯状パターンによる学校などである。五十嵐の個人賞は、他の審査員が拾えそうにないものとして、戸田代紗絵子の納本堂と光益公太郎の橋を重ねる建築を想定し、前者が別の賞をとったので、後者を選ぶ。ところで、卒計講評会で一番感心したのは、賞を選ぶプロセスを完全に公開していること。学生が見ている前で、投票を行ない、議論をして絞っていく。また卒計で落とす学生も同様の手続きで決める。卒計イベントは公開されるのが普通だが、大学の卒計だと、相当希有な事例ではないかと思う。

2013/01/22(火)(五十嵐太郎)

坂口恭平 新政府 展

会期:2012/11/17~2013/02/03

ワタリウム美術館[東京都]

ワタリウム美術館の坂口恭平展へ。個人的には、彼自身よりも、まず彼を受容する坂口現象に興味がある。ネタとしての天才・会田誠ではなく、尾崎豊のようなベタな天才肌だ。今回、多くのドローイングを見ながら、彼は造形の人ではなく、本質的にアウトサイダーアート的な絵描きなのではないかと気づく。同時開催の森本千絵にも同じ匂いがあり、ワタリウムは一貫している。坂口の路上観察にはあまり新しさを感じないが、ゼロセンター以降の動きは、とことんその先を見たい。美術館の近くにゼロセンターを立ち上げる実行力もさすがだ。ただ、美術館内は撮影禁止である。0円主義なら、スケッチやアイデアの画像所有権にこだわらず、どんどん来場者に撮ってもらい、思想を拡散させればよいのに。

2013/01/20(日)(五十嵐太郎)

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武蔵野美術大学建築学科 芦原義信賞・竹山実賞、卒業制作選抜講評会

武蔵野美術大学[東京都]

武蔵野美術大学にて、審査を担当した芦原義信賞の授賞式に出席した。今回選んだのは、梶原紀子が栃木県で企画運営している、もうひとつの美術館である。廃校となり、存続が危ぶまれていた木造校舎をリノベーションによって救い、ハンディキャップのある人のアートを専門に展示する施設だ。いまでこそ、類似したスペースはだいぶ増えたが、これを10年も前にオープンさせ、しかもずっと継続させてきた実績を高く評価した。それにしても、武蔵野美術大学の建築学科は、さまざまなジャンルに人材を輩出していると思う。

2013/01/19(土)(五十嵐太郎)

二川幸夫「日本の民家 1955年」展

会期:2013/01/12~2013/03/24

パナソニック 汐留ミュージアム[東京都]

・パナソニック汐留ミュージアムの二川幸夫「日本の民家 1955年」展へ。会場構成は藤本壮介によるもの。彼らしい離散配置された写真の森をさまよい歩く。日本各地の民家の撮影は、二川の原点となる仕事だが、現在から見ると、解村される前のぎりぎりのタイミングで記録された生きる民家と言える。土着的な地域にねざした民家は、どれも強い個性をもつが、とくに富山県上平村・越中桂の民家がすさまじい存在感を放っていた。

2013/01/18(金)(五十嵐太郎)

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カタログ&ブックス│2013年1月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

集落が育てる設計図 アフリカ・インドネシアの住まい

企画:LIXILギャラリー企画委員会
写真・図提供:東京大学生産技術研究所藤井研究室
イラスト:TUBE graphics、川原真由美、ゆりあ・ぺむぺる工房
発行日:2012年12月31日
発行所:LIXIL出版
サイズ:210×210mm 93頁
定価:1,890円(税込)

LIXILギャラリーで行なわれている「集落が育てる設計図–アフリカ・インドネシアの住まい」展のカタログ。本書では、50ヵ国500もの集落を実測記録してきたフィールドワークの中から、住居づくりの原点である「土」からなるアフリカと「木」からなるインドネシアのユニークな住まいを2本柱に、集落ごとの独自性と共通性を、味わいのある線描写の立体図面や平面図また写真を多用し、分かりやすく読み解いていく。調査リーダー・藤井明氏の丁寧な解説付きで、暮らしの原点に通じる英知と空間に潜む考察が繰り広げられる。調査に同行した元研究生らのインタビューも収録。建築家の目で行ってきたフィールドワークの成果を凝縮した一冊。
同展覧会は、2013年2月21日までLIXIL大阪ギャラリー、2013年3月6日〜5月25日にはギャラリー1(東京)にて行なわれる。
LIXIL出版サイトより]


冥府の建築家 ジルベール・クラヴェル伝

著者:田中純
発行日:2012年12月18日
発行所:みすず書房
サイズ:188×127mm 540項
定価:5,250円(税込)

幼少期の結核が元で宿痾をかかえたジルベールは、イタリア未来派の演劇活動として未来派演劇の監督、さらに「自殺協会」と題された幻想小説の作家であり、アヴァンギャルドにして、南イタリアはポジターノの岩礁を爆破し穿孔して建てた洞窟住居の建築家である。本書は、バーゼル、マッジャ、ローマ、ポジターノなど、スイスとイタリアの各地に分散した遺稿や資料を可能なかぎりすべて調査し、この知られざる特異な作家/建築家の生涯と妄執を辿り直した、世界でも初めての評伝である。
[書籍帯等より構成]


マグリット 光と闇に隠された素顔

著者:森耕治
発行日:2013年01月20日
発行所:マール社
サイズ:B5変形判(220×170mm) 160項
定価:2,625円(税込)

日本人初のベルギー王立美術館公認解説者・森耕治氏による、マグリットの作品を新しい解釈で読み解いた作品解説書です。《光の帝国》《大家族》《ピレネーの城》といった日本でも有名な作品はもちろん、マグリットの人生を解き明かすうえでかかせないシュルレアリスム以前の作品や、これまで日本では画集に掲載されたことのない貴重な作品なども収録した、画集としても充実の1冊です。作品のほかに、当時のモノクロフィルムや、現在のマグリットゆかりの地の写真も豊富に掲載! “イメージの魔術師”の異名を持つマグリットが追い求めたもの。それが人類普遍の願いであることに、あなたもきっと驚くはずです。
[マール社サイトより]


TOKYO INTELLIGENT TRIP 02 TOKYO研究所紀行

編集:勝山俊光
発行日:2012年9月1日
発行所:玄光社
サイズ:A5判 143頁
定価:1,260円(税込)

最先端科学から宇宙研究、暮らしの最新技術まで実際に訪れて、見学できる研究所を集めました。ほんの少し先の未来を感じられる場所へ、小さな旅に出かけてみませんか。
「TOKYO図書館紀行」に続く、TOKYO INTELLIGENT TRIPシリーズ第2弾!!
好奇心が刺激される最新研究所を紹介します。福岡伸一、枝廣淳子書き下ろしエッセイ、べつやくれい研究所コミック、瀬名秀明、福江翼インタビューなども収録。
最新の研究を知ることができる、これまでになかった研究所ガイドです。
玄光社特設サイトより]


7iP♯03 KOJI KAkiuchi

編集:team 7iP
発行日:2012年11月10日
発行所:ニューハウス出版
サイズ:A5変判 96頁
定価:1,575円(税込)

建築を完成させるまでの行程を丁寧に繙いていきました。
プロジェクトによって変化する建築家の考え方、 作り上げるための構造、設備、施工のアイデア。クライアントをはじめ、携わる人とのコミュニケーション… 1つのプロジェクトだけを特集した本。
1冊で1プロジェクト、シングル盤のような本をつくりました。
この目的のもとすすめられる7inchProjectの第3弾。100年前から建つ京都の町家を、垣内光司と素人である施主(作り手=住み手)が ゼロから作り上げていくプロセスを通して、DIYの社会性とその未来を探る。
7inchiprojectサイトより]


TOKYO BOOK SCENE
読書体験をシェアする。新しい本の楽しみ方ガイド

執筆・アートディレクション:桜井祐(東京ピストル)
編集協力:くわ山ともゆき(東京ピストル)
装丁・デザイン:吉田朋史(東京ピストル)
企画:草彅洋平(東京ピストル)
写真撮影:新藤琢、鈴木渉、坂田貴広
発行日:2012年12月13日
発行所:玄光社
サイズ:A5判 127頁
定価:1,260円(税込)

本書は、“新しい読書体験のビギナー”に向け、東京近郊の「本を介したコミュニケーションの場」を紹介するブックカルチャーガイドです。気になる個性派本屋、おしゃれなブックカフェはもちろん、それぞれ課題図書を読んできて、感想を話し合う読書会、珍しい本との出会いに誘う古本市など…。
これまでは読書と言えば、個人で楽しむものでしたが、最近はSNSなどを通じて“みんなで本を楽しむ”新しい読書スタイルの提案などもしています。
本好きの方はもちろん、新しいブックカルチャーに触れてみたい方、知的な趣味を探している方などにも、ぜひ手にとっていただきたい一冊となっています。
玄光社サイトより]

2013/01/15(火)(artscape編集部)