artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

空を拓く~建築家・郭茂林という男

会期:2013/02/02~2013/03/15

渋谷ユーロスペース

僕も協力でクレジットされたドキュメンタリー映画『空を拓く』を見る。霞ヶ関ビルや新宿副都心、台北の高層建築をとりまとめた台湾出身の建築家、郭茂林の生涯を追いかけたものである。彼は日本統治時代の台湾で末っ子として生まれ、普通の学校から東大助手を経て、日本の高度経済成長に伴い、人のネットワークを生かし、大型プロジェクトのフィクサーとして頭角を現わす。特に前半は、人を成長させていく、教育の力を思い知らされる。映画では、台湾の建築批評家、謝宗哲さんもコメントしていた。

2013/03/01(金)(五十嵐太郎)

トウキョウ建築コレクション2013

会期:2013/02/26~2013/03/03

代官山ヒルサイドテラス[東京都]

トウキョウ建築コレクションへ。以前、東北大学の五十嵐研究室ではデザイン系の活動を紹介する年報「トンチク」をプロジェクト展に出品したが、実際に代官山ヒルサイドテラスでの展示を見るのは初めてだ。今回は研究室のアーカイブ本を出品し、併せて幾つかの書籍プロジェクトの実物を展示した。会場で他の出品作と比べると、やはりうちだけが南相馬の仮設住宅地や窓学のリサーチなど、多数のプロジェクトを本という形式で紹介するメタ・プロジェクトだった。また書籍ゆえに、実物を会場に置くことができたのも、うちだけである。ともあれ、全体として論文展やプロジェクト展は、なかなか展示の方法が難しいことがよくわかる。現状がベストではないことはわかるのだけど、どう見せたらよいかを考えさせられる。なお、修士設計の展示も、明快なアイデアで一点突破する卒計的なものは伝わりやすいが、部厚いリサーチ・ベースの作品はやはりわかりにくい。

2013/02/28(木)(五十嵐太郎)

渋谷区立松濤美術館改修

松濤美術館[東京都]

渋谷区立松濤美術館が、改修工事のために来年初め(予定)まで休館する。休館中は渋谷区文化総合センター大和田で収蔵品展を開催する予定である。
 松濤美術館は静岡市の芹沢銈介美術館(石水館、1981)とともに建築家白井晟一(1905-1983)が最晩年に手がけた作品であり、1981年に開館した地下2階、地上2階の建物である。外側には窓がほとんどなく、内側には噴水のある円形の吹き抜けがある。地下2階は講演会や映画上映に使われるホール、地下1階の主陳列室は1階まで吹き抜けの大きな空間となっている。2階展示室は「サロンミューゼ」と名付けられ、かつてはここでお茶を飲みながら美術品を鑑賞することができた。建物は堅牢で耐震性には問題がないということであるが、開館から32年を経過し内部設備の大規模な改修が必要になった。これまで開館当初の姿がほぼそのままの状態で保たれてきたが、今回の改修でも照明設備の更新とLED化、摩耗した床材の張り替えを除くと、外観、内装の変更はともに最低限に留めるとのこと。白井がヨーロッパで買い付けてきたソファなどの調度類や、彼がデザインした照明具や案内パネルなどは引き続き使用されるようだ。
 3月10日(日)まで「渋谷区小中学生絵画展」「渋谷区立小・中学校特別支援学級連合展覧会」(入場無料)が開催されており、展示終了後から休館となる。なお、開館中は受付で申請すると建物の見学と撮影が可能である。[新川徳彦]


上記2点、松濤美術館エントランスと内部の吹き抜け
提供=渋谷区立松濤美術館


白井晟一デザインの照明器具と案内板
筆者撮影

2013/02/26(火)(SYNK)

せんだいスクール・オブ・デザイン 2012年度秋学期成果発表会|記念講演 (講師:照明デザイナー面出薫)

会期:2013/02/24

東北大学工学研究科中央棟大講義室(青葉山キャンパスセンタースクエア)[宮城県]

SSD成果発表会にて、照明デザイナーの面出薫のレクチャーが開催された。本領発揮は日没後だけに、これだけ夜景が続くスライドは珍しい(逆に言うと、建築のスライドは陰影がくっきりする昼の写真が多いことに改めて気づく)。こうして通してみると、せんだいメディアテーク、京都駅、茅野市民館、東京国際フォーラム、東京駅、京都迎賓館、長崎平和祈念館など、あれもこれも面出の仕事である。まさに名建築の夜の顔をつくったデザイナーだ。いまやシンガポールや香港にも拠点を置き、海外でも活躍している。

2013/02/24(日)(五十嵐太郎)

震災2年目を迎える日本─建築、アートの可能性 ~復興再生にどうかかわり、何ができるか~

会期:2013/02/21

フォーリンプレスセンター ブリーフィングルーム[東京都]

日比谷にて、FPCJ特別企画プレス・ブリーフィング「震災2年目を迎える日本─建築、アートの可能性」を開催した。五十嵐は、被災した気仙沼のリアスアーク美術館、3.11により青森県立美術館で中止になった青木淳と杉戸洋のコラボレーションの実現、仙台在住の志賀理江子や青野文昭、被災地をリサーチした海外作家ブラスト・セオリーやアルフレッド・ジャーによるプロジェクトなど、あいちトリエンナーレにおける東北との関係を紹介した。一方、伊東豊雄はみんなの家と釜石のプロジェクトの現状を語る。後半は、仙台のみんなの家の現場と中継を結ぶ。当日は多くの外国人記者が集まり、いまだにさめない復興への関心の高さがうかがえる。

2013/02/22(金)(五十嵐太郎)