artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
SSDハウスレクチャー 「線の事件簿」松田行正
会期:2012/12/18
阿部仁史アトリエ[宮城県]
仙台の卸町にて、デザイナーの松田行正が自ら手がけた大量の本を会場に持ち込み、レクチャーを行なった。二次元的なグラフィックにとどめるのではなく、本という三次元のモノへのこだわりが強く感じられる内容だった。個人的にも『線の事件簿』でファンになり、筆者が編集委員長のとき『建築雑誌』の表紙デザインを依頼したことがある。毎年、牛若丸で自由に好きな本をつくっているが、実は恒例のライブで喜ばれるお土産からスタートしたとのこと。またデザイナーの資質に加え、もともと編集者的なセンスが根源にあったことを知る。
2012/12/18(火)(五十嵐太郎)
歴史的再編コンペティション2012~第1回「学生のまち・金沢」設計グランプリ~公開審査
会期:2012/12/16
金沢市が学生の活動をサポートする取り組みの一環で生まれた「歴史的空間再編コンペティション2012」の審査に参加した。システムは卒計日本一と似ているが、歴史というテーマの設定に金沢らしさを出している。新しくオープンした町家を改修した、金沢学生のまち市民交流館で一次審査。続いて、ファイナルの10人は金沢21世紀美術館でプレゼンテーションを行なう。全体的にまだ歴史が記号として使われる感があり、歴史ならではの掘り下げは足りなかった。最後に残った案はどれも一長一短があり、結果は地元の金沢工大の学生が1位になったが、筆者と妹島和世は別案を推し、これらが2位、3位になる。個人的に印象に残ったのは、建築よりも、鎌倉の切通し周辺に小道をつくり、新しくつないだ風景を生む提案(京都工繊・大竹絢子)だった。
2012/12/16(日)(五十嵐太郎)
「3.11-東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか(海外巡回展)」ケルン展
会期:2012/11/14~2013/02/02
ケルン市立東洋美術館[ドイツ、ケルン]
ケルンのグリーンベルトに建つ東洋美術館は、前川國男が唯一海外で設計した建築である。コンクリートをむきだしにせず、タイル貼りの落ち着いた後期の作風なので、熊本、東京都、宮城の美術館と似ている。その向かいがケルン日本文化会館で、こちらはル・コルビュジエの流れをくむモダニズムだ(別の日本人建築家によるもの)。こうした建築の組み合わせは、上野公園の雰囲気を思い出させる。日本文化会館では、ちょうど「東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展と、被災地の作家による「ポストカード・フロム・ジャパン」展を同時開催していた(あいちトリエンナーレ2013に出品する青野文昭も参加)。ここで震災後の建築についてレクチャーを行なったが、ドイツということで、原発の事故や被災建物の残し方に高い関心が示されていた。
写真:左=「3.11-東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか(海外巡回展)」ケルン展、右上=東洋美術館、右中=日本文化会館、右下=「ポストカード・フロム・ジャパン」展
2012/12/12(水)(五十嵐太郎)
聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館
[ドイツ、ケルン]
ピーター・ズントーのコロンバ美術館へ。今年のベスト級に素晴らしい。ローマ遺跡と戦争で破壊された中世の教会の廃墟を抱きかかえたリノベーション建築である。上階が美術の場になっており、変形プランのマイナスを感じさせないユニークな展示スペースを実現している。また中世美術と現代美術を混在させる展示手法のセンスも秀逸だった。
2012/12/12(水)(五十嵐太郎)
シュニットゲン美術館
[ドイツ、ケルン]
大きな四角い民族学博物館に隣接するシュニットゲン美術館は、ロマネスクの教会にガラスのボックスをつなぎ、まるごと中世美術のミュージアムにしたものである。教会の内部が、かつて現役の宗教施設だった頃とは違う大胆な手法で、木彫や石彫、金属細工などのインスタレーション空間に新しく生まれ変わっていることが興味深い。
2012/12/12(水)(五十嵐太郎)