artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

土木デザイン競技 景観開花。9 公開最終審査会&トークセッション

会期:2012/12/08

東北大学青葉山キャンパス[宮城県]

日本国内唯一の土木系アイデアコンペ、景観開花の審査を今年もつとめた。テーマは「未来へつなぐ防潮堤デザイン」である。石巻にジグザグの防潮堤をつくる予選トップ通過の社会人の案は伸び悩み、佳作どまり。逆に予選ぎりぎりで通過した案「わたしのまちの堤防の家」(塩田一弥、江川拓未、根本周)のプレゼンテーションがよく、逆転で最優秀になる波乱含みだった。雄勝の漁村の集落に、海が見えなくなる大きな防潮堤をつくる代わりに、小さなL字の厚いコンクリートの壁を数多く分散させ、それを利用して家や各施設などをつくるというもの。このコンペ9年目にして、東北大の建築チームが初の1位に輝いた。

2012/12/08(土)(五十嵐太郎)

名古屋市科学館

[愛知県]

名古屋市科学館を訪問した。展示は建築や都市計画に関するパートも含むが、竜巻ラボなど、実際に室内で自然現象を起すところは、改めて科学系アートと紙一重だと思う。グリッド状の都市計画のおかげで、遠くから巨大な球体が浮いているのがよく見える、話題のプラネタリウムは、休日だと朝から長い行列が生まれ、すぐに一日分のチケットがはけてしまうが、平日だとあっさりとに入ることができた。プログラムは興味深いものだったが、映像の冒頭で名古屋の街が完全に西欧風に表現されていたのには違和感をおぼえた。

写真:竜巻ラボ

2012/12/05(水)(五十嵐太郎)

公共建築から考えるソーシャルデザイン・鶴ヶ島プロジェクト2012

会期:2012/12/03~2012/12/08

渋谷ヒカリエ 8階 クリエイティブスペース 8/COURT[東京都]

渋谷ヒカリエの藤村龍至による「公共建築から考えるソーシャルデザイン・鶴ヶ島プロジェクト2012」展を見る。これまでも彼はワークショップを通じて、先鋭的な集団制作の形式を追求し、今回はついに自治体や住民など、実際のステークホルダーを巻き込む実践的な場を創出したとものと言えるだろう。東洋大の多くの学生を複数の班に分けながら、合議にもとづく、失敗しない、すなわち一定水準の建築のつくり方の形式を提示している。

2012/12/05(水)(五十嵐太郎)

JDP復興支援デザインセンター特別フォーラム「復興とデザインの様々なかたち」

会期:2012/11/23~2012/11/25

東京ビッグサイト 東4ホールメインステージ[東京都]

ビッグサイトのグッドデザイン賞の展覧会にて、JDP復興支援デザインセンター 特別フォーラム 「復興とデザインの様々なかたち」のファシリテーターをつとめる。釜石の仮設住宅、仙台の教育施設、石巻工房、そして逃げ地図など、異なるタイプ、異なる場所のプロジェクト・リーダーたちに語ってもらい、その後に討議を行なう。震災はある意味において、デザインの潜在的な可能性を引きだす契機にもなっていたのではないか。

2012/11/25(日)(五十嵐太郎)

建築の際シンポジウム「映画、建築、記憶」

会期:2012/11/17

東京大学情報学環・福武ホール地下2階 福武ラーニングシアター[東京都]

「建築の際」シンポジウムに際して、諏訪敦彦監督の『H STORY』(2001年公開)とアラン・レネの『二十四時間の情事』(1959年6月公開)を久しぶりに見る。後者は当時の広島平和記念資料館の展示の様子がわかって興味深い。前者はラストの原爆ドーム内からのショットが印象的で、『不完全なふたり』と同様、開口=フレームが多くを物語る。シンポジウムでは講師を呼んで終わりではなく、4名の学生が問題提起を行ない、2部にわたって「映画、建築、記憶」をめぐる討議を展開した。射程は3.11後に及ぶ。諏訪がすべてを決定する主体としての監督ではないことがわる。また懇親会では、奥様も制作の過程で重要な役割を果たしていたことを知る。

2012/11/17(月)(五十嵐太郎)