artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

ハジメテン「ハジメテン庫──ビッチビチストレージ!」

会期:2013/04/05~2013/05/06

ナディッフギャラリー[東京都]

イテテ、先週ぎっくり腰を患ってしまい、展覧会を見に行くのは久しぶり。ハジメテンは梅佳代、金氏徹平、小橋陽介らおもに関西ベースの8人のアーティストたちが、個々の活動のかたわら時おり集まって「ハジメテ」のことをしていくユニット、らしい。地下のギャラリーに降りて行くと、いろんなガラクタ類がところ狭しと置いてある。どんな小道具で使ったんやっていう発泡スチロール製の岩山、なぜかパン(これもハリボテで、食パン、バゲット、クロワッサンと多種類そろってる)、それにハリボテの大仏の頭と胴体。おそらくデカすぎて入んなかったから上下分けての展示になったんだろう。いや展示とはいわないな、とりあえずビッシリ詰め込んであり、足の踏み場もないほど。考えてみればこのギャラリー、最初のChim↑Pom展のときからモノを詰め込む展示が多い。地下空間で比較的容積が小さいせいか、物量攻めでそれなりに満足感が得られるからかもしれない。

2013/04/18(木)(村田真)

若沖が来てくれました─プライスコレクション江戸絵画の美と生命─

会期:2013/03/01~2013/05/06

仙台市博物館[宮城県]

仙台市博物館「若冲が来てくれました」展へ。前評判通り。見せ方というか、表題の付け方を変えるだけで、だいぶわかりやすく印象が変わる。例えば、有名な若冲の「鳥獣花木図屏風」は「花も木も動物もみんな生きている」に。絵そのものは変わっていないが、言葉のフィルターの大きさを感じる。

2013/04/17(水)(五十嵐太郎)

はじめての美術 絵本原画の世界2013

会期:2013/04/06~2013/05/12

宮城県美術館[宮城県]

宮城県美「はじめての美術 絵本原画の世界」展へ。なるほど、多くのアーティストは絵本も描いており、興味深い切り口。70年頃から増えている。絵から発想された物語もある。また物語を知らない原画を見ながら、物語を作ってみるのも面白そう。林明子の「はじめてのおつかい」は、空間表現も秀逸。

2013/04/17(水)(五十嵐太郎)

ソフィ・カル「最後のとき/最初のとき」

会期:2013/03/20~2013/06/30

原美術館[東京都]

フランスのアーティスト、ソフィ・カルの作品はおおむね自伝的な出来事、記憶にかかわることが多い。さもなければ、自分自身のパフォーマンスが他者に及ぼす影響がテーマとなる。ところが、今回原美術館で展示された「最後のとき/最初のとき」では、珍しく他者の体験を受容することが起点となっている。いつもの、傷口の瘡ぶたを引きはがすような痛みをともなう強烈な作品を期待すると肩すかしを食うが、これはこれで彼女の「物語」構築能力の高さをよく示す仕事だった。
美術館の2階スペースに展示された「最後のとき」は、盲目の人たちに自分が最後に見たイメージとは何かを問いかけ、その答えとそのイメージを再撮影した写真、さらに彼らのポートレートを組み合わせたものだ。明らかに、生まれつき目の見えない人たちに、彼らにとっての「美しいものとは何か」と問いかけ、その答えとなるイメージを撮影した「盲目の人々」(1986年)につながる作品と言えるだろう。スリリングなテキストと、静謐な写真の組み合わせによって、「見る」という体験の意味が問い直されていく。
1階スペースには、新作の「海を見る」が展示されていた。こちらは映像作家のキャロリーヌ・シャンプティエとの共同作品で、トルコ内陸部に住む人々をイスタンブールの海岸に招き、海を見るという体験の「最初のとき」を撮影した映像のインスタレーションだ。老若男女が登場するのだが、特に老人たちの歓びとも憂いともつかない微妙な表情が印象的だった。ソフィ・カルというアーティストの懐の深さを感じさせてくれるいい展示だと思う。

2013/04/16(火)(飯沢耕太郎)

KYOTO STUDIO 17のスタジオと88人のアーティスト

会期:2013/04/13~2013/05/19

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]

美大の集積率が高い京都では、複数の若手作家たちがスペースを共有して作品制作を行なう共同スタジオ(アトリエ)が30軒以上あると言われている。本展ではそれらのうち17軒が現場の再現あるいはインスタレーションを行ない、88作家による100点以上の作品が展示された。京都では近年、共同スタジオによるオープンスタジオが活発化し、話題を集めるようになっていた。本展はその動向を踏まえたものであり、時機を逃さず開催したことは評価されるべきである。また、会期中に共同スタジオを巡るツアーが4種類も企画され、展覧会場と現場を結ぶ導線を確保したのも優れたアイデアだった。

2013/04/16(火)(小吹隆文)