artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
カタログ&ブックス│2013年4月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
キャパの十字架
若き日、ロバート・キャパの半自伝作品『ちょっとピンぼけ』を読んだ沢木耕太郎さんは、〈見るだけにすぎない〉傍観者として彼に強いシンパシーを持ちました。以来、キャパに関心を持ち続け、その伝説に包まれた出世作「崩れ落ちる兵士」の謎を解き明かすことが積年のテーマとなったのです。スペインをはじめ、世界各地で数度にわたる取材を敢行、その結果、驚くべき地点に立っていることに沢木さんは気づきます。キャパとその恋人、ゲルダ・タローが遺した物語とはーー。渾身のノンフィクション。(IH)
[文藝春秋サイトより]
地域を変えるミュージアム
人がつながり、アイデアがひらめき、まちがもっと元気に、クリエイティブになる。そんな場となり、みんなに嬉しい変化をもたらしているミュージアムがある。藁工ミュージアム(高知市)、せんだいメディアテーク(仙台市)、星と森と絵本の家(三鷹市)、津金学校(北杜市)、理科ハウス(逗子市)……全国各地から厳選した30事例を豊富な写真とともに多角的に紹介。見て・読んで楽しいだけでなく、まちづくりや場づくりのヒントが一杯の一冊です。
[英治出版サイトより]
新宿学
江戸時代の新場と遊郭、玉川上水、大名屋敷が、新宿発展の原点だった。
一日350万人の乗降客を誇る世界最大のターミナル駅を中心に、新宿のこれからを展望する。図版90点・「淀橋・追分・御苑,散策大路・散策小路めぐり」まち歩きガイド付。江戸の宿場町「新宿」のまちの今昔そして「未来図」を、土地利用、都市計画の要素も視野に入れながら、様々な切り口で明らかにする。江戸時代の宿場町として誕生以来、時代を先取りして発展してきた「新宿」のまちの今昔そして未来を、地理地形、街道、遊郭、大名屋敷、上水道、鉄道とターミナル、老舗、歌舞伎町、西口高層街など、土地利用、都市計画の要素も視野に入れながら、様々な切り口で明らかにする。新宿再開発による、緑あふれる「淀橋・追分・御苑 散策大路・散策小路」の実現も提唱。
[紀伊國屋書店BookWebサイトより]
吉本隆明
戦後思想最大の巨人をもっとも長期にもっとも近くで撮り続けた写真家による肖像を没後一年に集成。生涯市井にあったその思考と生活の現場を刻印する記念碑的出版。序文=吉本多子。
[河出書房サイトより]
虚像の時代 東野芳明美術批評選
ネオ・ダダ、ポップアート、デザイン、建築、マクルーハンなどの最新動向を紹介し、戦後の日本美術を拡張した批評家、東野芳明が、1960年代に様々な媒体に寄せたスピード感溢れる批評を収録した。東野芳明というと、マルセル・デュシャンの研究者という印象もあるが、本書では、現代的な観点から、評論をセレクトしている。特に、同時代の芸術状況をメディア論として捉えようとしたテキストや、日記体による同時代の作家達とのやりとりなど、生中継のような批評のあり方に注目して欲しい。また、この時代を共に歩んだ建築家・磯崎新が解説を執筆している。
2013/04/15(月)(artscape編集部)
小寺絵里 展「かんたんなまほう」
会期:2013/05/07~2013/05/19
ギャラリー揺(ゆらぎ)[京都府]
5年ぶりとなる小寺絵里の個展。絵画作品とともに、蟹の甲羅(本物)やふとんの白いシーツで「見立ての風景」がインスタレーションされた同ギャラリーでの前回の発表は、自由な想像力と繊細な感性、ユニークな視点があちこちに感じられるたいへん魅力的な展示だった。今展のタイトルには、「大きくなったら簡単な魔法くらいなら使えるかもしれない」という夢や希望を持って生きてほしいと願う、2年前に誕生した我が子への思いが込められているのだそう。水彩画のほか、庭と和室の展示空間全体を使ったインスタレーションが発表される予定。時を経て制作環境も変わった小寺の新作が楽しみだ。
2013/04/15(月)(酒井千穂)
京芸 Transmit Program #04「KYOTO STUDIO: 17 Studios &88 Artists in KYOTO, 2013」
会期:2013/04/13~2013/05/19
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]
京都にはアーティスト達がスペースを共有し作品制作の場として使用している「共同スタジオ(アトリエ)」が多数点在している。ここ数年では、複数の共同スタジオの作家達が普段は制作現場であるそれぞれのスタジオを同時期に公開し、作品展示やライブコンサートなどを行なうイベントがしばしば開催され、その都度注目を集めている。本展はそのようなイベントの先駆けで、2009年より毎年開催されている「京都オープンスタジオ」を集約し共同スタジオ17軒をギャラリースペースに再現、88名の作家の作品を展示するというもの。「京都オープンスタジオ」自体が京都市立芸術大学の出身者中心のイベントなので偏った例かも知れないが、美術をめぐるコミュニティやそこでのコミュニケーションのあり方など、新しい可能性を多角的に考えることができる展覧会になりそうだ。
2013/04/15(月)(酒井千穂)
「re:framing──表情の空間」(京都芸術センター春まつり展覧会プログラム)
会期:2013/04/13~2013/05/26
京都芸術センタ─[京都府]
同センターの「春まつり」にともない開催される展覧会プログラム。独自の手法と概念で絵画表現を行なっている3名のアーティストが紹介される。「絵画」の画面を超え空間をも「re:framing=再構築」していくことをテーマに、会期中は映像投影などのライブパフォーマンスも行なわれる。出展作家は、サテン布と染料、メディウムなどを用いた絵画作品を発表している横内賢太郎、鉛筆で繊細に描いた風景に、同じ場所で撮影した映像を重ねるという手法で作品を制作しているヤマガミユキヒロ、近年「時間に絵を描く」ことをテーマにOHPを用いたライブパフォーマンス《TiME PAINTING》を活動の中心にしている仙石彬人。アーティストトークやワークショップなどイベントも多数開催されるのでスケジュールをチェックしておきたい(仙石彬人の作品展示は会期中に複数回行なわれるパフォーマンスとなる。詳細=http://www.kac.or.jp/events/3861/)。ヤマガミユキヒロは同時期にGallery PARCで個展が開催されるのでこちらもあわせて楽しみたい。
2013/04/15(月)(酒井千穂)
棚田康司「たちのぼる。」展
会期:2013/04/06~2013/05/26
伊丹市立美術館/旧岡田家住宅・酒蔵[兵庫県]
手足の長い細身な「少年少女」を“一木造り”によって制作しつづけている棚田康司。関西初の大規模な個展となる今展では、大学院修了作品から最新作までの約50点とスケッチなどによって棚田の制作が網羅的に紹介される。東日本大震災の被災地、仙台市にある東北生活文化大学高等学校普通科美術コースの生徒達と、棚田の出身校である兵庫県明石高等学校美術科(明石市)の生徒達の協力のもとに制作された最新作《たちのぼる─少年の場合》、《たちのぼる─少女の場合》は初公開。当館に隣接する旧岡田家・酒蔵でも作品が展示される。4月27日(土)には三沢厚彦(彫刻家)との対談(定員100名)、4月28日(日)にはアーティストトークも。
2013/04/15(月)(酒井千穂)