artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
アジアをつなぐ──境界を生きる女たち 1984-2012
会期:2013/01/26~2013/03/24
栃木県立美術館[栃木県]
今日は栃木2連発。県立美術館の「アジアをつなぐ」は、これまで何度か開催して来た「女性展」の延長上に位置づけられるだろう。絵画あり彫刻あり、インスタレーション、写真、映像なんでもありなので展覧会としてまとまりに欠けそうだが、そこは「アジア」と「女性」がつなぎ止めてくれるので、ある意味安心して見ることができる。しかしそれは、見るときの心構えが「女性」「アジア」にシフトしているということであり、いいかえればフィルターを通して見ざるをえないということだ。では、フィルターを解除してもういちどながめ直すと、つまり「女性」も「アジア」も忘れて作品本位で見てみると、なにが残るか。イースギョンの陶器の破片を金継ぎでつなぎ合わせたオブジェ、ジョン・ジョンヨプの何万個もの小豆の肖像、ソン・ヒョンスク(過去何度か作品を見たが、女性とは思わなかった)の最小限の筆致……。みんな韓国人だった。アジアの中ではレベルが突出しているなあ。
2013/02/23(土)(村田真)
東北芸術工科大学卒業・修了展
会期:2013/02/23~2013/02/27
東京都美術館[東京都]
隣の部屋にはたくさんの若者が集ってるので「東京画」の続きかと思ったら、素人っぽい彫刻が並んでいて、なぜか山口晃と山下裕二が対談している。どうやら別の展覧会にまぎれ込んだらしい。そこに彫刻家の深井聡一郎が来て、これは東北芸工大の卒展で、自分も教えているという。そうか、ついでだから見ていくか。終了間際にさっと回った限りで気になった作品を挙げると、小さなキャンバスにパステルカラーの絵具を盛り上げた高田幸平の小品、いまどきありがちな絵ながらそそられる藤倉麻美の物語画、それに酒見浩司の版画による抽象風景。
2013/02/23(土)(村田真)
東京画II──心の風景のあやもよう
会期:2013/02/24~2013/03/07
東京都美術館[東京都]
栃木からトンボ返りで上野へ。「東京画」はトーキョーワンダーサイト主催の展覧会なのに、なんで自分とこ(本郷)でやらないんだと思うが、きっと都美館側からオファーが来て同じ都の組織として断れなかったんじゃないかと勝手に推測。そんな事情はどうでもいい。桑久保徹は西洋名画が額縁つきでズラッと並んだ海岸風景、ほか数点の展示。これはすばらしい。私が裕福なコレクターだったら迷わず買い占めるだろう。千葉正也は相変わらず白い手づくり人形を風景のなかに置いて描いているが、おもしろいのはキャンバスを壁にかけず、彫刻みたいに台座の上に立てていること。だから裏が丸見えで、木枠は自作であることがわかる。佐藤翠はカーペット、靴箱、クローゼットなど四角い家具調度をそのまま四角いキャンバスに収めた絵。しかしカーペットを描こうと思うか? それを壁に飾るか? この3人は絵画というメディアに対してきわめて自覚的、かつ攻撃的だ。一方、熊野海は鮮やかなストライプ模様を背景に、人の集う海岸に核爆発や彗星墜落のようなカタストロフィを描き出す。未来を予言しているとはいわないが、モチーフも色彩もにぎやかで、まさに旬の絵画。いまどきの日本の絵画の最良部分がここに集結している。
2013/02/23(土)(村田真)
第16回文化庁メディア芸術祭
会期:2013/02/13~2013/02/24
国立新美術館[東京都]
国立新美術館の文化庁メディア芸術祭はものすごい混みよう。とてもゆっくり見るという感じではなかった。アート部門新人賞のQuayolaによる作品《Strata #4》が印象に残る。名画をデジタル処理して、ポリゴンの集積に変えていくもの。またマンガ部門の大賞として、ベルギーの建築的な漫画の巨匠フランソワ・スクイテンも展示されていた。相変わらず、驚くべき精緻なドローイングによる、きわめて芸術性が高い作品である。
写真=Quayola《Strata #4》
2013/02/23(土)(五十嵐太郎)
アーティスト・ファイル2013─現代の作家たち
会期:2013/01/23~2013/04/01
国立新美術館[東京都]
国立新美術館の「アーティスト・ファイル2013」展を訪れた。最初の部屋のヂョン・ヨンドゥは、子どもが描く想像の世界を、そのまま写真として再現しようとする試みである。むろん、そこに作家の解釈も相当入り込むが、元の絵と写真を並べる展示の形式も興味深い。志賀理江子はスペースの都合上、せんだいメディアテークで展示された写真の1/3くらいを持ち込む。場所によって、見え方が変わっていくインスタレーションである。
2013/02/23(土)(五十嵐太郎)