artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
長谷川直美 展

会期:2012/10/22~2012/10/27
Oギャラリーeyes[大阪府]
愛知県生まれの長谷川は、これまでおもに名古屋や東京で発表をしており、今展は私も初めてその作品を見る機会だった。旧約聖書に書かれた物語や以前作家が訪れたことのある沖縄、アウシュヴィッツの光景などを題材にしたその絵画には、《a prayer》というタイトルがつけられたものが数点あり、悲しみに暮れる人や祈りの場面が描かれている。何故人間は存在するのかという問いかけにも始まる重いテーマを持つ内容だったのだが、全体に絶望ではなく、ごく普通に暮らす個人という、ひとりの人間を慈しむ眼差しをひしひしと感じる絵画で穏やかさにも溢れた魅力的な作品だった。
2012/10/27(土)(酒井千穂)
川俣正・東京インプログレス ドームづくり
会期:2012/09/15~2012/10/26
春海橋公園[東京都]
川俣が汐入タワー(荒川区)、佃テラス(中央区)に続いて制作した春海橋公園の豊洲ドーム(江東区)。タワー、テラス、ドームと手持ちの技を繰り出している。高さ12メートルのこのドームは、がっちり組み立てた鉄骨構造の内外に都内で集めた廃材を斜めに貼りつけていったもの。コップを伏せたような形態で、なんとなく原発を思い出させないでもない。
2012/10/27(土)(村田真)
キュレーターからのメッセージ2012 現代絵画のいま

会期:2012/10/27~2012/12/24
兵庫県立美術館[兵庫県]
現代における絵画の諸相を、14作家の仕事で紹介している。作品傾向はバラエティに富み、いわゆるタブロー(居城純子、渡辺聡、彦坂敏昭、丸山直文、横内賢太郎、奈良美智、法貴信也)から、超大作(平町公)、壁画(野村和弘)、映像を駆使したもの(大﨑のぶゆき、石田尚志)、その他(和田真由子、三宅砂織、二艘木洋行)と、実にさまざまだった。また、いわゆるタブローとグルーピングした作家も、その作風には多様性が見られた。質の高い作品が揃ったので見応えがあり、現代の多様な状況が窺える展覧会だったのは確かだ。ただ、同種の企画展にありがちなことだが、総花的な紹介に終始し、明瞭に「現代絵画とは〇〇だ」というような見解が示されることはなかった。それが非常に困難なことは理解しているが、今、あえてそこに踏み込む勇気を見せてほしいとも思った。
2012/10/26(金)(小吹隆文)
青木野枝│ふりそそぐものたち

会期:2012/10/20~2012/12/16
名古屋市美術館[愛知県]
名古屋市美の青木野枝展を見る。1階、2階ともに、可動壁を一切使わず、むき出しになった黒川紀章の建築。名古屋市美がこんなに広々として明るい空間に見えることに驚かされた。こうした状態を初めて見たが、やはり開館以降、前例がないらしい。その空間的な特徴に寄り添い、空間と対話をしながら、厳選された鉄の彫刻を置く。旧作でさえも、ここのためにつくられたと思えるほどだ。彫刻=オブジェがまわりの環境をつくり、館全体の空気をつなげていく。
2012/10/26(金)(五十嵐太郎)
六甲ミーツ・アート──芸術散歩2012

会期:2012/09/15~2012/11/25
六甲ガーデンテラス、自然体感展望台 六甲枝垂れ、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、六甲オルゴールミュージアム[兵庫県]
「六甲ミーツ・アート──芸術散歩」は現代アートをピクニック気分で鑑賞、というとおり、森の中や六甲山上の各施設屋内外に展示作品が点在していて、歩いて楽しむ展覧会だ。まず鉄道の最寄り駅に着いたら六甲ケーブル駅まで移動し、ケーブルカーで六甲山上まで上るのだが、その後はバス移動するほうが良い距離の会場もあるのでちょっと体力も時間も必要だ。しかし遠足気分で天気の良い日に訪れたなら、作品鑑賞だけでなく、山からの展望、美しい紅葉、鳥の鳴き声など、いろいろと楽しめて最高だ。会場は8カ所。受付でもらえる公式周遊マップには、各展示場所の鑑賞済みの作品にスタンプを押してチェックする欄もついているのでスタンプラリーのように巡ることができて便利。43作品の欄があったが、実際に展示を見ることができたのは41作品だった。個人的には特に、紅葉も素晴らしい六甲高山植物園の展示が気に入った。さすがに六甲山は市街とは違って寒いのだが、まだ会期はあるので興味のある方にはぜひ薦めたい。

左=公募大賞グランプリ作品 今村遼佑《森と街灯》
右=久門剛史《jazzと虫》
ともに、六甲高山植物園

左=中川洋輔+藤原直矢《霧がつくる輪郭》(六甲オルゴールミュージアム)
右=開発好明《物干川》(六甲山カンツリーハウス[中央入口より])
2012/10/26(金)(酒井千穂)


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