artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
ビデオ・パーティー2012

会期:2012/09/21~2012/09/30
アートラボあいち4階[愛知県]
愛知芸術文化センターで行なわれる「アーツ・チャレンジ」の審査のため、昨日から名古屋に滞在。今日は審査が早めに終わったので帰る前にアートラボに寄ってみたら、全館を使って名古屋周辺の美大と連携した展覧会をやっていた。愛知芸大や名古屋造形大などの展示を冷やかし半分で見ていたら、なつかしい名前に出会った。4階で「ビデオ・パーティー」と称して、名古屋学芸大の映像メディア科と大阪成蹊大の情報デザイン学科の学生や卒業生による映像作品を流しているのだが、これをキュレーションしているのが瀬島久美子さんといって、もう30年以上も前に西武美術館で知り合った音と映像のプロデューサーだ。うわー久しぶり、当時はまだビデオアートの勃興期だったからなあ、隔世の感がある。いまは名古屋学芸大学の特任教授を務めているらしい。しばし感慨にふける。
2012/09/23(日)(村田真)
メリーゴーランドのひきだし
会期:2012/09/23
ブリコラージュファクトリー[大阪府]
今年の1月に、中之島4117のプロジェクト「RACOA」の企画による「大人が学び合うこどもの声」という研修バスツアーに参加して以来すっかり、四日市の子どもの絵本専門店「メリーゴーランド」のオーナー、増田善昭さんの魅力的な人柄のファンになってしまった(関連記事=http://artscape.jp/report/review/10021505_1735.html)。大阪で「メリーゴーランドのひきだし」というイベントが開催されるのを知り、すぐに申し込んだ。会場が、たまたま古くからの友人が家族で営む木のおもちゃのお店だったことにも、このイベントの企画者が「RACOA」バスツアーに参加したメンバーのひとり、駒崎さんだったことにも驚いたのだが、その駒崎さんもあのバスツアーの際に、増田さんやそこで「あそびじゅつ」というワークショップ教室の講師をしている(重盛)ペンギンさんの人となりに魅了されたのだそう。「RACOA」の企画を通じて広がった素敵な縁を知る機会でもあった。当日は、はじめに増田さん自身の思い出や子どもたちとのやりとりのエピソードをまじえた絵本紹介のトークがあり、休憩を挟んで、ペンギンさんによるスケッチのワークショップ、二人のギターと歌によるライブ演奏が行なわれた。参加者は子どもや本に関わる仕事をしている人たちが多かったようだが、会場は満員。遠回しな表現や難しい言葉など使わず、ストレートに自らの感覚と考えを皆に発する増田さんの話には圧倒されるような説得力と魅力がある。また、その活動の在り方は、アートに関わるという立場でも学ぶことや揺さぶられるものが多く、またしても豊かな気持ちになっていく時間だった。会場の「ブリコラージュ」を訪れたのは初めてだったのだが、元々、家具工房だったというその広い空間では、ものづくりのワークショップやアートイベント、コンサートなどもときどき開催されているのだそう。地域の人々に親しまれているのを感じる場であったのも印象に残る。こんな場所はいろんなところにあるのかもしれない。もっと知りたいという興味もかき立てる機会であった。

会場風景
2012/09/23(日)(酒井千穂)
明倫茶会「半農半Xな茶会」

会期:2012/09/22
京都芸術センター[京都府]
さまざまな分野で活躍する人を座主に迎え、毎月、京都芸術センターで開催されている「明倫茶会」。茶会といっても茶道はあまり関係なく、毎回の座主の個性に合わせ自由な趣向で行なわれているユニークな茶会だ。9月は「半農半X研究所」代表の塩見直紀さんが座主で、秋分の日に開催された。当日は1時間ほどの席が計4回設けられていたのだが、各回ごとに「半農半芸」「晴耕雨創」「敬天愛人」「則天去私」という四文字のテーマがあり、「天職発見のためのミニワークショップ」がそれぞれの席で行なわれた。塩見さんが提唱する「半農半X」とは、各人が“持続可能な”小さな「農」のある暮らしをし、自分の才能や好きなこと(X)を世に活かす生き方、暮らし方をすること。私が参加した「半農半芸」の回では「『半農半芸』で生きるとしたらどんな芸で表現するか」や、「人生で叶えたいことを自由に」書き込むワークシートが配布され、参加者が自己紹介をかねてそのひとつを披露するという時間が設けられていた。茶室の床の間に飾られた丹波の毬栗、生け花として飾られた綾部の稲穂、お菓子、秋分の日を含めたしつらいなども「一期一会」を尊ぶ塩見さんならではの趣きで楽しかった。ただ少し残念だったのは、参加者が多かったせいもあるのだろうが、ワークショップが長くなって、座主自身のお話の時間があまり取られなかったこと。1時間の茶会なので欲張りな希望だが。
2012/09/22(土)(酒井千穂)
東日本大震災災害支援チャリティーオークション「サイレントアクア2012」

会期:2012/09/15~2012/09/30
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]
京都市立芸術大学の学部生、院生、留学生、教員、旧教員、卒業生、修了生などが出品展示する東日本大震災災害支援チャリティーオークション。今回2回目の開催である。作品はどれもハガキサイズほどの小さなものだが、入札も3,000円からという多くの人が参加しやすい設定。詳しい人にはすぐにわかってしまうだろうが、展示作品の作家名はすべて伏せられているため、落札したときにはじめて誰の作品かを知るという点も面白く、見る側にとっては先入観を持たずに好きな作品を探す楽しみもある。会場の作品番号は630まであり、大勢の作家が参加していたが、収益という金銭面だけでなく、物理的に顔の見えない人と人をつなぐという意味でも芸術大学(と芸術大学に関わる人々)の可能性を感じる。このオークション開催による今後のさまざまな発展にも注目したい。
2012/09/22(土)(酒井千穂)
榎倉康二「記写」

会期:2012/09/04~2012/09/29
タカ・イシイギャラリー[東京都]
日本を代現する現代美術家のひとりだった榎倉康二は、写真に強い関心を抱き続けていた。彼は東京藝術大学写真センターの創設者であり、初代のセンター長をつとめた。1994年には齋藤記念川口現代美術館で「榎倉康二・写真のしごと 1972-1994」展も開催している。だが、今回タカ・イシイギャラリーで展示されたのは、「写真のしごと」、つまり作品として構想され制作されたのではなく、自作のインスタレーション作品のドキュメントとして撮影された写真群だ。1969年の椿近代画廊での個展「歩行儀式」から、1976年のときわ画廊での個展「不定領域」に至る展示の状況を、榎倉は自ら入念に撮影し、プリントしていた。そのなかには1971年の第7回パリ青年ビエンナーレ(同展には中平卓馬も参加していた)に出品した「湿質」「壁」のような、のちに彼の代表作と見なされるようになる作品の記録写真も多数含まれている。
彼はもちろんプロの写真家ではないから、技術的にはやや甘さがあるし、プリントも完成度の高いものではない。だが逆に、そこからは榎倉が写真に何を期待し、何を求めていたのかがいきいきと伝わってくる。作品を周囲の環境との相互関係のなかで捉えようとしていること、作品の質感やその周囲の光の状態への細やかな配慮、一枚の写真で完結させるのではなくシークエンス(連続場面)として提示していこうとする指向など、そこにはのちにくっきりと形をとってくる、「写真家」としての榎倉の特質がよくあらわれているのだ。残念なことに、榎倉は1995年に急逝してしまう。2000年代、つまりデジタル化以降に彼の写真がどんなふうに変わっていくのかを見届けたかったのだが、それは叶わなかった。
2012/09/21(金)(飯沢耕太郎)


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