artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
Chim↑Pom展

会期:2012/09/22~2012/10/14
パルコミュージアム[東京都]
渋谷のパルコにて、Chim↑Pom展を見る。海外で制作されたゴミや排ガスの作品もあったが、パルコならではの場所の特性をいかした展示がおもしろい。例えば、建物ファサードの巨大ロゴを外し、室内に「P」と「C」を移設したもの。そして店内のブティックを再現したような部屋があり、そこをハチャメチャにドローイングするものなどである。
2012/09/27(木)(五十嵐太郎)
藤岡亜弥「離愁」

会期:2012/09/09~2012/09/29
AKAAKA[東京都]
藤岡亜弥には『さよならを教えて』(ビジュアルアーツ、2004)という名作がある。フランソワーズ・アルディの物憂いメロディの名曲にのせて、エストニアからフィンランドへ、さらにヨーロッパ各地を彷徨うロード・ムービーのような写真集だ。藤岡にはむろん『私は眠らない』(赤々舎、2009)のような、ひとつの土地に根ざしたいい作品もあるのだが、僕はどちらかというと彼女の「旅もの」の方が好きだ。
今回AKAAKAで展示された「離愁」もブラジルへの旅の産物である。藤岡の祖母はブラジル移民の二世で、20歳のときに日本に帰国した。その遺骨をかかえ、60年前の親友「文江さん」の行方を探して、彼女は2002年と2011年の二度にわたってブラジル各地を旅する。会場にはその間に撮影した42点の写真と、昔の思い出を語る日系人たちを撮影したビデオの画面をプリントアウトした画像、彼らの肉声を起こしたテキストが展示してあった。
結局、「文江さん」はすでに亡くなっており、いまや四世の代になっている日系人たちとの交流も、中途半端なものにならざるをえない。だが旅では多くの場合、当初の目的が達成されることはなく、宙吊りの気分のままに時が過ぎていくのではないだろうか。そんななかで少しずつ形をとり、旅の時間を侵食していく「離愁(サウダージ)」の感情が、微妙に揺らぎつつ連続していく写真群に色濃くまつわりついているように見える。いまのところ、写真集になる予定はないようだが、ちょうど『さよならを教えて』のように、テキストと写真とが絡み合って進行していく幻の写真集が見え始めているように感じた。
2012/09/27(木)(飯沢耕太郎)
椎原保 展 ephemera/ここのむこう

会期:2012/09/25~2012/10/07
ギャラリーアーティスロング[京都府]
画廊の備品のほか、懐中電灯、レンズ、水、火、再帰性反射布など野素材を、互いが緩やかに関係するよう点在させたインスタレーション。見た目はスカスカな空間をゆっくり歩くと、見えてくるのは、光の多彩なバリエーションだ。じっくりと空間を味わううちに、自分の日頃の美術鑑賞が、いつの間にかワンパターンになっていたことに気付かされる。慣れないスポーツや柔軟体操をして筋肉や身体の動きに改めて気付かされるように、椎原の個展は凝り固まった精神をほぐしてくれた。
2012/09/25(火)(小吹隆文)
KYOTO EXPERIMENT 2012 公式プログラム ビリー・カウィー「Tango de Soledad/The Revery/In the Flesh」

会期:2012/09/22~2012/10/28
京都芸術センター[京都府]
イギリスを拠点に国際的に活動するビリー・カウィーによるビデオ・インスタレーション。自ら振付・作詞・作曲・演奏を手掛けたダンス作品を、3D映像で上映している。3つの作品は、映像に対して、水平、見下ろす、見上げる視点で見るよう構成されており、それらはどれもダンサーの細かな表情や息遣いまで感じられるリアルなものだった。ダンサーが手を差し伸べてきた時は、3Dと知っているにもかかわらず、つい手が伸びそうになったほどだ。バーチャルではあるが、舞台公演ではありえないほど間近でパフォーマンスが見られるのは、確かに魅力的である。テクノロジーにより身体感覚を増幅させるその手法に、大きな可能性を感じた。なお、ビリー・カウィーは3Dと生身のダンサーが共演するプログラムを模索中で、京都滞在中に日本人ダンサーと3D映像を制作、帰国後にイギリスで撮影した他のセクションを加えて編集し、来年再び京都に戻って数人の生身のダンサーとのコラボレーション作品を発表する予定である。
2012/09/25(火)(小吹隆文)
「Chim↑Pom」展

会期:2012/09/22~2012/10/14
パルコミュージアム[東京都]
「ゴミ」をテーマにすることで、渋谷のデパートに置かれた美術館での展示という条件を生かそうとしたChim↑Pom。(恐らく)パルコの商品が陳列された空間をマクドナルド(?)のイメージカラー(黄色とケチャップ色)でめちゃくちゃに塗りたくった最初のブースや、着替え室を潜るとパルコ(PARCO)の看板から奪取した「C」と「P」がクイーンの代表曲に合わせてカラフルに点滅する次のブースは、いたずら心が炸裂していてわくわくさせられた。最後のブースは「ゴミ」をテーマとする作品が並ぶ。インドネシアや東アジアや日本のゴミ事情をリポートするような作品群は、現状確認に留まっていて、なんだかおとなしい。黄色いネズミの剥製が生誕した地、渋谷での展示なのだから、ネズミたちに登場してもらいたかったのは正直なところだ。いや、というよりも、あのネズミたちのように、渋谷の表層が引き剥がされて隠れていた生命力がむき出しになるといった痛快な事態を期待してしまった。服をゴミにしたあとで、さらにそのゴミにタグを付けて販売するといったダイナミックな反転が見たかったのかもしれない。
2012/09/24(月)(木村覚)


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