artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
プレビュー:若手芸術家・キュレーター支援企画 1floor 2012「TTYTT, -to tell you the truth,-」

会期:2012/08/25~2012/09/17
神戸アートビレッジセンター[兵庫県]
若手アーティストおよびキュレーターの育成支援を目的に、2008年から毎年行なわれている公募企画。月1、2回のミーティングを重ねながら、作品プランについて協議を重ねるだけでなく、展覧会タイトルやチラシ、ポスターなどの広報物、会期中の関連イベントもアーティストとスタッフが共同で企画する。今回選ばれたのは、陶芸作家でパフォーマンスユニット「contact Gonzo」のメンバーでもある金井悠と、シルクスクリーンを用いたインスタレーション制作とプリントプロダクトユニット「AO」で活動する小出麻代の2人。両名とも展示のみに留まらない活動が評価されており、この2人だからこそ可能な企画の実現が期待される。
写真:上=金井悠《OOPARTS-改-》2008、下=小出麻代《nu show》2010
2012/07/30(月)(小吹隆文)
プレビュー:自然学~来るべき美学のために~

会期:2012/08/11~2012/09/23
滋賀県立近代美術館[滋賀県]
日本の成安造形大学と英国のロンドン大学ゴールドスミスカレッジの国際学術交流プロジェクトに端を発し、成安造形大学と滋賀県立近代美術館の連携推進事業として行なわれる企画展。21世紀の最も大きな課題である地球環境問題に対し、芸術がどのようにアプローチすべきかを考察。芸術の論理基礎である「美学」を、「自然」をキーワードに新しく組み替え、「自然学」という新たな枠組みを提唱する。出品作家は、石川亮、宇野君平、岡田修二、木藤純子、ジョン・レヴァック・ドリヴァー、Softpad、西久松吉雄、馬場晋作、真下武久。会期中の8月11日にはプロジェクトのコアメンバーによる国際シンポジウムも行なわれる。また、2013年3月には英国展も予定されている。
2012/07/30(月)(小吹隆文)
大地の芸術祭──越後妻有アートトリエンナーレ2012
会期:2012/07/29~2012/09/17
新潟県十日町+津南町[新潟県]
朝、十日町に出て芸術祭のオープニング。いつもキナーレの広い中庭で行なうのだが、今回はボルタンスキーが古着を敷きつめてしまったため使えず、駐車場の隅っこで華々しい開催となった。再びバスに乗って見学ツアー。今日のガイドさんは今回の芸術祭の公式ガイドブックの編集も手伝ったピー峰プー佳さんで、『中原佑介美術批評選集』の編集にかかわっているため、車内で披瀝してくれた「大地の芸術祭と中原批評」はとても示唆に富んでいた。今日はまず、津南町にある蔡國強のドラゴン現代美術館(アン・ハミルトンの個展を開催中)を訪れ、近くの廃屋でやっていたアン・ハミルトンの音の出る作品を鑑賞。昼食のソバをたぐってから、JR飯山線アートプロジェクトを見に行く。利用客が減る一方のローカル線の駅にアートを設置して活性化させようという試みで、越後田沢駅のアトリエ・ワンと河口龍夫による《船の家》、下条駅のみかんぐみ+神奈川大学曽我部研究室による《茅葺きの塔》のふたつ。下条駅の近くでは小沢剛らが明治初期の《油絵茶屋》を再現している。十日町に戻り、廃校に土の作品を集めた《もぐらの館》を見て、最後に中心街の空き店舗を利用した4組の作品を回り、駅前で解散。
2012/07/29(水)(村田真)
第28回東川賞受賞作家作品展

会期:2012/07/28~2012/08/19
写真の町・東川町文化ギャラリー[北海道]
北海道上川郡東川町は1985年に「写真の町」を宣言し、毎年夏に東川町国際写真フェスティバル(フォト・フェスタ)を開催し始めた。今年はもう28回目ということで、僕は1980年代末からその変遷を見ているのでとても感慨深いものがある。最初の頃は町民との一体感がまったくなく、会場は閑散としていた。だが当地の夏祭りと同時期に開催されるようになり、全国の高校写真部の精鋭が集結する「写真甲子園」も話題を集めるようになって、近年は大いに盛り上がりを見せるようになった。写真の恒例行事として、完全に定着したのは素晴らしいことだと思う。
今年は「赤レンガ公開ポートフォリオオーディション」のレビュアーのひとりとして招聘されたのだが、東川町文化ギャラリーで開催されていた「第28回東川賞受賞作家作品展」がかなり面白かった。フォト・フェスタの目玉でもある東川賞の今年の受賞者は、海外作家賞がアリフ・アシュジュ(トルコ)、国内作家賞が松江泰治、新人作家賞が志賀理江子、北海道ゆかりの写真家に与えられる特別作家賞が宇井眞紀子、地域に根ざした活動を長く続ける写真家を対象にした飛騨野数右衛門賞が南良和だった。この5人の組み合わせは、ジャンルも年齢も経歴もまったくバラバラなのだが、逆にそれが写真という表現メディアの広がりと可能性をさし示していて興味深いものだったのだ。
会場の入口から、南が1950年代以来撮影し続けている埼玉県秩父の記録写真、アシュジュのイスタンブールを撮影したパノラマ写真、松江の「地名の収集」として続けられている巨視的な風景作品、志賀の「Lily」「Canary」そして新作の「螺旋海岸」のシリーズ、宇井のアイヌの女性運動家、アシリ・レラの活動の記録が並ぶ。そのつながり具合が絶妙で、あたかも写真という生きものの体内を巡っているようなスリリングな視覚的体験を愉しむことができた。特に11月にせんだいメディアテークで本格的に展示されるという志賀の「螺旋海岸」は、現在の日本の写真表現を大きく左右していく可能性を秘めた重要な作品になっていくだろう。さまざまな貴重な出会いを誘発する場としてのフォト・フェスタの役割は、今後より大きくなっていくのではないかと思う。
2012/07/29(日)(飯沢耕太郎)
大地の芸術祭──越後妻有アートトリエンナーレ2012
会期:2012/07/29~2012/09/17
新潟県十日町+津南町[新潟県]
上越新幹線、ほくほく線を乗り継いで十日町で下車、受付を済ませてプレス用バスツアーで出発。同乗したのは、ピー浜美術館館長やピー浜市芸術文化振興財団専務理事やピー日新聞美術記者やピー摩美術大学教授やピーメディア・デザイン研究所所長など美術関係者が多いせいか、ボランティアのガイド(ピー原プー子さん)は専門的な解説を避け、明るく楽しくをモットーに振る舞っていた。まず向かったのはアジア写真映像館。廃校となった小学校の校舎でロンロン&インリ、森山大道、石川直樹ら日中の写真や映像を公開しているが、こんな場所で見せられてもな。続いて鉢&田島征三の絵本と木の実の美術館でメシ食って、松代の農舞台に寄り、松之山のオーストラリア・ハウス、マリーナ・アブラモヴィッチの《夢の家》、ジャネット・ローレンスの《エリクシール/不老不死の薬》、ローレン・バーコヴィッツの《収穫の家》などを訪れた。このうち農舞台の新作とオーストラリア・ハウス以外は、いずれも既存作品を改修したりヴァージョンアップさせたもの。オーストラリアは以前、古い農家を借りて作品を見せていたが、地震で全壊したため別の場所に作家の滞在施設も兼ねた展示施設を新築。力を入れてるなあ。再び松代に戻り、昨年亡くなった中原佑介氏の約3万冊もの蔵書を積み上げた川俣正のインスタレーションを鑑賞。これは圧巻。最後にBankART妻有に寄って、十日町の越後妻有里山現代美術館「キナーレ」のオープニングへ。この現代美術館は原広司設計の交流館の回廊部分をギャラリーにしたもの。中央の中庭にはクリスチャン・ボルタンスキーの古着を積み上げたインスタレーション、ギャラリーにはカールステン・ヘラー、レアンドロ・エルリッヒ、ゲルダ・シュタイナー&ヨルク・レンツリンガー、クワクボリョウタらの作品が並んでいる。こんな場所に並べられてもな。夜は松代のBankART妻有に宿泊。
2012/07/28(火)(村田真)


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