artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
西村健太 個展 Re
会期:2012/07/27~2012/07/29
素人の乱12号店[東京都]
薄暗い会場に入ると、髑髏のオブジェが数点、床に広がり、それぞれの上部から水滴が落ちている。白い髑髏は、その水滴によって穴を穿たれ、徐々に外形を崩していく。なかにはボロボロに崩れた髑髏もある。人間の死の象徴である髑髏を、さらに破壊し、自然へ還っていく様子を見せようとしているのだろう。別の映像作品では、胎児のかたちをしたオブジェを両手で水に漬け、徐々に水に溶かしていく。人間のかたちをした胎児が、次第にその形態を失ってゆき、たんなる物質と化して、水に溶けてなくなっていく過程は、なんともおそろしい。聞けば、この胎児も、先の髑髏も、ともに入浴剤を凝固させたものだというが、そのことを知らずとも、死に向かっていく生の残酷な時間、そして生命を管理操作する人工的技術などのテーマがおのずと脳裏に去来する。作品のコンセプトと展示構成が明快に結びついた、たいへんレベルの高い個展だった。
2012/07/27(金)(福住廉)
伊藤彩 展──猛スピードでははは
会期:2012/07/20~2012/09/01
小山登美夫ギャラリー京都[京都府]
伊藤彩の作品は以前にも同ギャラリーやほかの展覧会で見たことがあったのだが、彼女の作品が、細かなプロセスを経て構成されているという事実は今展で初めて知った。各作品ごとにマケットをつくり、何枚も写真を撮り、視覚的効果を検討してからペインティングにいたる、「フォトドローイング」と伊藤が呼ぶ手法だそうで、今展には、その手法を用いて制作された新作のペインティングと、それに関連したセラミックや紙粘土の立体、木(を使った作品)などが展示されていた。絵画作品のモチーフやイメージが重なる造形物が会場のあちらこちらにあるのが面白い。描かれた場面やイメージをつないでひとつの物語や脈絡を想像するのは難しいが、立体的なコラージュのような世界が広がっていて、それぞれのインパクトも鮮やか。9月1日まで開催されている。

展示風景。左=伊藤彩《They watch THAT together》、右=同《REBORN》
2012/07/26(木)(酒井千穂)
「隠喩としての宇宙」展──The Cosmos as Metaphor
会期:2012/07/20~2012/09/01
タカ・イシイギャラリー京都[京都府]
「隠喩としての宇宙」展の第一会場、タカ・イシイギャラリーには、木村友紀、土屋信子、ビョーン・ダーレム(Bj rn Dahlem)、平田晃久、前田征紀、矢津吉隆の作品が展示されている。回転する円盤上のLEDの光が錯視で歪んで見える矢津の《Anarog Universe》は能面と組み合わせられた作品でまた存在感が強い。視覚や意識、脳、宇宙と言葉の連想が巡った。木材と鉄、ライトなどを用いたビョーン・ダーレムの小さなオブジェはその名も《宇宙》。木村友紀の二脚の椅子を配置したインスタレーション《11》もだが、こちらの会場は見るものから見えない世界へと想像が広がっていくような作品が多くまた楽しい。


左上=木村友紀《11》(左)、ビョーン・ダーレム《宇宙》(右)
右上=木村友紀《11》(左)、前田征紀《Elemental/ Receptor》(右)
下=会場風景(タカ・イシイギャラリー京都)
2012/07/26(木)(酒井千穂)
あいちトリエンナーレ2013企画発表会
会期:2012/07/25
あいちトリエンナーレ2013の実行委員会有識者部会、愛知県公館にて知事との懇談、愛知芸文センターに戻り、実行委員会運営会議、そして企画発表会(記者会見)と、3回同じ話をする日だった。11組の作家を追加で発表、公式デザイナーに廣村正彰、教育普及のコミュニティ・デザイナーに菊地宏子が就任、パフォーミングアーツ部門ではサミュエル・ベケットを基軸にしたことを報告する。これで全体の1/3の作家が公表された。
2012/07/25(水)(五十嵐太郎)
第38回釜山美術展

会期:2012/07/20~2012/08/19
釜山市立美術館[韓国]
家族で海外旅行、というとゴーセーだが、もっとも近い釜山なら国内旅行より安上がり。しかも釜山といえば隔年で国際展(釜山ビエンナーレ)が開かれる文化都市でもある。今年はビエンナーレの開催年であるのだが、残念ながら展覧会は9月からで、その反動というべきか、この時期アートは街から一掃されている感じ。そもそも釜山は人口340万人を超す大都市にもかかわらず、目の前に海水浴場が広がる観光地なので、夏はリゾート気分全開なのだ。だから家族で来たんだけどね。しかし唯一の美術館である釜山市立美術館でも現代美術はお呼びでなく、全館を使って公募団体展みたいな「釜山美術展」しかやってなかった。これは絵画、彫刻、デザイン、書などを集めたもので、ジャンル分けも作品傾向も日展や二科展とよく似ている。近年の韓国の文化政策は急進化を遂げていると聞いていたが、やっぱりこんなものもまだやってるのね。街のギャラリーものぞいてみたけど、いまはリゾート客向けなのか版画や小品展しかやってなかった。
2012/07/24(火)(村田真)


![DNP Museum Information Japanartscape[アートスケープ] since 1995 Run by DNP Art Communications](/archive/common/image/head_logo_sp.gif)