artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

井上家 Exhibition Vol.2

会期:2012/04/26~2012/06/26

さらさ花遊小路[京都府]

京都市内にあるカフェでの展示。はじめは展覧会タイトルだと思っていた「井上家」はアーティストのユニット名だった。会場では会えなかったのだが「井上家」は夫婦で作品制作を行なっているようだ。店内の壁にずらりと大きな絵画作品が並んでいた。モチーフはシマウマや、カメレオン、クジャクなどすべて動物。金を背景にした画面に散りばめたようなとりどりの色彩、動物の描写がどれも美しく、近づいてみると意外にもとても細やかに描いているのにも気づき驚いた。二人の作業の役割はどのように分かれているのだろう。作品も素敵だったが制作法も気になるアーティスト。


展示作品

2012/04/26(木)(酒井千穂)

安部泰輔──ヒヨリモノ

会期:2012/04/27~2012/06/03

日和アートセンター[宮城県]

東北新幹線で仙台に出て、高速バスで石巻へ。駅前で自転車を借りて海岸沿いのガレキの山を見ていく。あたりまえだが、写真で見るのとは違って匂いも音もする。夕方、被災した市街地の空き店舗を改装した日和(ひより)アートセンターへ。ここは横浜市の黄金町との文化芸術交流の拠点としてこの3月にオープンしたばかりの施設で、アーティスト・イン・レジデンスを軸に展覧会やワークショップを開いている。この日は、古着をリサイクルした作品で知られる安部泰輔が滞在・制作した成果を発表する初日。ギャラリー内に数本の柱を立て、刺繍した古着を貼りつけている。安部は横浜で何度も会っているが、ここのスタッフも黄金町から移り住んだ人だった。被災地でアートになにができるかを問うより、アートを媒介に人が動くという潜在力に賭けた確信犯的なプロジェクト。

2012/04/26(木)(村田真)

「8/」オープニングパーティー

会期:2012/04/23

渋谷ヒカリエ8階[東京都]

渋谷東口の東急文化会館跡にオープンするヒカリエの8階は、クリエイティブフロア8/(ハチと読むらしい)。小山登美夫ギャラリーやd47ミュージアムなどが入居し、アートやデザインに力を入れるのはいいんだけど、なにかこの匂い以前にも嗅いだことあるような。六本木のアクシスとか、渋谷西武のロフトとか。いずれも華々しくオープンしたものの先細りしていった気がする。まあ末永く発展されんことを祈るばかりだ。で、小山さんちでは第1弾として、ダミアン・ハーストの「ニュースポットプリンツ」を展示。色違いの円が整然と並んだ版画で、先ごろそのペインティングが世界8都市にあるガゴシアンギャラリー計11軒で同時開催され話題になったばかり。版画とはいえ高いだろうなあと思ったら、小さいものなら買えない値段ではなかった。買わないけどね。

2012/04/23(月)(村田真)

光あれ! 河口龍夫──3.11以後の世界から

会期:2012/04/03~2012/04/22

いわき市立美術館[福島県]

3.11以後、どのようなアートが必要なのか。多くのアーティストは自問自答を繰り返している。これまでの作風を一変させる者もいれば、あえて貫き通す者もいる。考えあぐねたまま、何も手につかない者もいる。だが、ほとんどの美術家に通底しているのは、震災前から確保してきた表現する主体としての自己を、震災後も持続させる構えだ。
被災地のいわきで催された河口龍夫の個展は、そのような自明視を根底から問い直したという点で、画期的だったと思う。展示されたのは、河口が震災直後から制作した作品200点あまり。東北各地の被害を伝える新聞紙を一月ずつ束にして紐で縛り、わずかに着色するなどして物体として定着させた作品や、蓮の種子を貝殻の内側に仕込んで真珠に見立てる作品など、いずれも東日本大震災を主題としながらも、そのことに狼狽し、混乱し、不安に陥り、しかしそこから立ち直ろうともがく河口自身の姿が透けて見える作品ばかりだ。
《手始め》は、文字どおり震災後に河口が初めて手がけた作品。河口自身の手が描かれたシンプルなドローイングで、何から手をつければよいのか途方に暮れた河口が、表現することを一から見つめ直しているように見える。再起のための手がかりを、みずからの「手」に見出すところに、3.11以後を生きなければならない私たちは、大きな共感を寄せるにちがいない。
表現することとは生きることである。それゆえ生き方に大きな修正が迫られたとき、表現だけが無傷であるわけがない。行き先を見失ったのであれば、原点に立ち返ればよい。そこから再び道を切り開くという基本的な態度を、河口龍夫は示した。

2012/04/22(日)(福住廉)

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「BEAT TAKESHI KITANO 絵描き小僧」展

会期:2012/04/13~2012/09/02

東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]

パリのカルティエ財団での個展の凱旋なのだが、いかに自分が(拡張している?はずの)「現代美術」の枠組をもってしまっているかを再認識してしまう内容だった。つまり、これは現代美術とはどこか違うと感じてしまうのだ。もっとも、初期の動物+花の絵や自動ポロック生成の作品などは面白いが。むしろ、ビートたけしの懐かしいギャグ映像も展示されており、やはりそれが圧倒的に良い。いや、こちらの方がアートらしく感じた。

2012/04/22(日)(五十嵐太郎)

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