artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
小島瑛由 初個展「風神雷神ズ漫画」

会期:2012/04/17~2012/04/29
アートライフみつはし[京都府]
京都精華大学出身のストーリーマンガ家が、マンガ屏風というジャンルを開拓。風神と雷神の伝承をもとにした作品を発表した。展示室の左右には四曲一隻の屏風があり、正面には二曲一双の屏風を配置。左右からそれぞれ風神と雷神の物語が巨大なコマ割漫画として描かれ、正面の二曲一双の屏風で両者が相まみえる。吹き出しはなく絵だけで物語を表現しているが、古典的題材なので老若男女問わず親しむことができる。また、オタク臭が希薄なのも門戸を広げるうえで有効だろう。屏風の造作が雑なのが惜しかったが、そこさえクリアすればアートとマンガをつなぐユニークな表現として彼の代名詞になるだろう。
2012/04/17(火)(小吹隆文)
国立西洋美術館「ユベール・ロベール─時間の庭」展関連シンポジウム「時の作用と美学」2日目
会期:2012/04/15
東京日仏学院 エスパス・イマージュ[東京都]
ユベール・ロベールの展覧会にあわせて開催されたシンポジウムである。ミュリエル・ラディック、稲賀繁美、北川フラム、宇野邦一の発表後、セッション2「建築と自然 新たなる対話へ」の司会を担当しつつ、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展2008の温室をめぐって「建築と植物」についても発表した。隈研吾は東北地方にある自作について語り、パトリック・ブランはこれまでの作品の軌跡を紹介しながら、パワフルな発表を行なう。ブランの視点は植物学者らしく、完全に人間側ではないところが新鮮だった。地面に生えない植物はいっぱいあって、植物自体が高性能のアーキテクチャーなのだ、という。また建築VS植物の廃墟にならずとも、両者は共存できる。そして時間の尺度が壮大だった。数十年や数百年ではなく、もっと長い単位で世界を見ている。
2012/04/15(日)(五十嵐太郎)
大友良英 with 二階堂和美ライブ

会期:2012/04/15
万代島旧水揚場[新潟県]
7月から新潟市で始まる「水と土の芸術祭2012」のプレイベント。まずは信濃川の河川敷に完成した王文志(ワン・ウェンチー)による竹のドームを見に行く。これは3年前、やはり河川敷につくられたインスタレーションをヴァージョンアップしたもので、なかに入ると意外に広々としていてくつろげるうえ、竹の隙間から周囲の風景が透けて見えるというスグレもの。前回は市民の憩いの場としても人気を博したため、芸術祭に先行して制作してもらったという。そこから下流に15分ほど歩いて、ライブ会場となる万代島の旧水揚げ場へ。かつて漁獲物を水揚げした場所で、ガランとした巨大な空間は現在なにも使われておらず、芸術祭の展示のメイン会場になる予定だ。ライブは川(入江)に面した開口部にステージを設けたため、光を背にした逆光のなかで行なわれた。そのため客席からは大友も二階堂も顔の表情がほとんど読みとれないかわりに、向こう岸の倉庫や行き交う船や舞い飛ぶカモメを見ながらのライブ体験となった。おまけに漁船のエンジン音や「アーアー」というカモメの鳴き声も聞こえてきて、ふつうのコンサートならぶち壊しになるところを、自然体の大友と二階堂はそれを効果音として受け入れていたのはさすが。ちょっと寒かったけど、ライブは暖かかった。
2012/04/15(日)(村田真)
Mètis─戦う美術─

会期:2012/04/07~2012/05/20
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]
日常社会や常識などで、これまで当たり前だったはずの常識が大きく揺らいでいる現在、「私たちが生きてゆくために、どうすれば日々の営みを意義あるアクションに変えてゆくことができるのか」をテーマに、6組の作家(伊東宣明、中田有美、佐藤雅晴、高須健市、ヒョンギョン、Weast)が集った。タイトルやテーマからメッセージ色の濃い展覧会を予想したのだが、実態は極めてドキュメント的でパーソナル色の強いものだった。それは、各人が自分なりのやり方を日々実践することでしか世界は変わらないというメッセージなのであろうか。作品では、自分の胸に聴診器を当て、鼓動のリズムに合わせて肉塊を叩き続ける伊東宣明の作品と、内面に蓄積された負のエネルギーを暴発させたようなヒョンギョンの作品に共感。他の作品も見る者の感性に爪を立てるような挑戦的なものが多く、全体として気迫のこもった企画展だった。
2012/04/15(日)(小吹隆文)
プレビュー:すべての僕が沸騰する──村山知義の宇宙

会期:2012/04/08~2012/05/13
京都国立近代美術館[京都府]
ベルリンでダダや構成主義などを吸収し「マヴォ(MAVO)」や「三科」といったグループの活動を通じて日本の近代美術に影響を与えた村山知義(1901-1977)。本展は、油彩、コラージュ、版画や雑誌『マヴォ』のほか、自ら設計し新興芸術運動の拠点とした自邸兼アトリエ《三角の家》の室内装飾や建築、舞台美術、ポスターなど、1920年代の美術の仕事を中心に村山知義の多彩な仕事を紹介する。挿絵作家「Tom」としても晩年まで活躍した村山。会期中には、彼が手がけた絵本の世界にふれながら物語をつくる子どもたちのためのプログラムや、記念講演会なども開催される。
2012/04/15(日)(酒井千穂)


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