artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
「建築、アートがつくりだす新しい環境─これからの“感じ”」展

会期:2011/10/29~2012/01/15
東京都現代美術館[東京都]
ヴィム・ヴェンダースによる立体映像、金獅子賞のバーレーン、銀獅子賞のスタジオ・ムンバイなど、ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展2010で紹介された多くの作品を展示していた。同じ長谷川祐子が両方の企画に関わっているからだろう。しかし、造船所跡のアルセナーレの赤茶けた空間においてカッコ良かった作品たちが、東京都現代美術館のホワイトキューブに持ち込まれ、規模や仕様が変更されると、相当のインパクトを失うのは残念だった。一方、屋外の平田晃久による制作パヴィリオンは、1/1の建築であり、実際の空間を楽しめる。
2011/11/13(日)(五十嵐太郎)
テリーさんまたね展
会期:2011/11/12
Chap2[神奈川県]
びわこビエンナーレの準備のため1年ほど横浜を離れることになった包帯アーティスト(っていうのか?)、テリーこと寺田忍の壮行会を兼ねた1日だけの展示会とパフォーマンス。寺田自身の作品(木彫りの熊の片足に包帯を巻いた作品がよかった)のほか、藤原京子、椎橋良太、片桐美佳、まつながえみら、BankARTスタジオで知り合ったアーティストを中心とする展示。夜は寺田による「ヨコトリ2011感想パフォーマンス」が開かれた。3脚の椅子の上にほうき、時計、電話機が置かれている。白い包帯ドレスをまとった寺田が登場し、まずほうきを手にゆっくり歩きながら床を掃き、「ていうか、レレレのおじさんじゃねえんだよ!」とか叫んでほうきの柄を折る……。ヨコトリを見た者ならだれでもわかる、ポスターにもなったミルチャ・カントルのパフォーマンス映像をパロッたもの。時計はもちろんクリスチャン・マークレーの24時間映像のモチーフ、電話はオノ・ヨーコのインスタレーションに使われた作品アイテムで、それぞれ最後に「おもしろいけど長すぎるんだよ!」とか「ぜんぜんかかってこないじゃん!」とか悪態ついて破壊するという罵倒パフォーマンスだ。一部で大ウケしていたので、みんな似たような感想というか不満を抱いていたんだろう。王様は裸だと。
2011/11/12(土)(村田真)
日常/ワケあり
会期:2011/10/18~2011/11/19
神奈川県民ホールギャラリー[神奈川県]
江口悟、田口一枝、播磨みどりの3人のインスタレーション展。いずれもニューヨークで活動する30代のアーティストだが、ぼくはひとりも知らなかった。江口は机や椅子、棚、柱、バッグといった日常品を並べたインスタレーション、と思ったら、これがすべて着彩したハリボテ。たしかフィッシュリ&ヴァイスにも似たような作品があったなあと思って隣の部屋に行くと、前の部屋と瓜二つの机や椅子が配置を変えて並んでいるのでメマイがしそう。田口はプラスチックフィルムをさまざまなかたちに曲げ、そこに照明を当て光を乱舞させる作品、播磨は紙で馬や犬や鳥をつくり表面にその写真を貼りつけたり、大きな家のモデルに光を当てて幻想的な情景を生み出している。3人それぞれやりたいことは異なるが、作品の印象はどこか共通したものがある。それはハリボテ感が強く、実体感が希薄なこと。だから見ていてなにかずっしりとした手ごたえのようなものが感じられないのだ。これは9.11以降のニューヨークの傾向なのか、それとも30代の日本人アーティストの特徴なのか。
2011/11/12(土)(村田真)
大島成己 展「緑の触覚─haptic green」

会期:2011/11/05~2011/12/03
ギャラリーノマル[大阪府]
DMを見た第一印象は、雑木林を撮ったありふれた写真。しかし、大島がそんなストレートフォトを撮るわけがない。会場で実物に接して驚いた。ひとつの風景のなかに複数のパースペクティブが混在する、不思議な質感を持った情景が撮られているのだ。作家本人にうかがったところ、本作は一定の距離からアップで撮った画像をコンピューターで何百枚も繋ぎ合わせたもので、一種触覚的な視覚体験を誘発させる仕組みを持っているのだという。これまでも視覚を巡るさまざまな考察を行なってきた大島らしい、曲者の作品を楽しんだ。
2011/11/12(土)(小吹隆文)
mariane個展「人肌/body warmth」

会期:2011/11/12~2011/12/17
studio J[大阪府]
和紙にアクリルガッシュで生き物のような形態を描くmariane。描かれた形態は海の軟体生物や菌類を思わせるものがあり、一種毒々しい色合いもあって、爛熟した色香を漂わせている。新作は画面構成に大きな変化があり、タッチも一層細密になっているのが特徴だ。よりスケールの大きな世界を表現できそうなので、今後は襖絵のような大作に挑んでもよいかもしれない。
2011/11/12(土)(小吹隆文)


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