artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

山添潤 彫刻展

会期:2011/11/08~2011/11/20

ギャラリー揺[京都府]

石彫の新作・近作を出品。山添の特徴は、完成形を目指して造形するのではなく、素材との対話を通じて徐々に形が出来上がることだ。それゆえ作品には深い思念が感じられ、時間をかけて観賞するほど豊かな実りを得ることができる。そんな山添だが、新手法の模索も怠ってはいない。作品全面に黒のアクリル絵具を塗り、ワイヤブラシで削り取ることでメタリックな質感を得るなど、新作には幾つかの新しい試みが見られた。大転換はしないが、小さな進化を着実に重ねていく。それが山添流なのかもしれない。

2011/11/08(火)(小吹隆文)

谷内薫 作品展III

会期:2011/11/08~2011/11/27

arton art gallery[京都府]

櫛目を入れた粘土板をひねって、貝や木の葉を思わせる形状の陶器、オブジェを制作する谷内薫。初個展以来ハイペースで活動を続けている彼女だが、ここ1年で明らかに洗練度が増している。初期作品は生々しい有機性が際立っていたが、近作では生命感とエレガンスがちょうどいいバランスで融合するようになったのだ。オブジェと器、工芸とアートなど、複数の領域を包含する独自の造形が、徐々に結実しつつあるのだろう。

2011/11/08(火)(小吹隆文)

チョイ・カファイ「ノーション:ダンス・フィクション」

会期:2011/11/07~2011/11/08

シアターグリーン[東京都]

筋肉組織に電気信号を与えると伸縮することは以前から知られていたが、その筋肉の動きをデータ化し、ニジンスキーやピナ・バウシュら過去のダンス映像に合わせてダンサーの動きをコントロールしようという試み。実際、腕や脚にコードをつけたダンサーは、横に映される巨匠のダンス映像と同じ動きをしてみせる。ダンス公演というより、実験の成果を発表する生体科学のデモンストレーションに近い。だが、はたしてどこまでが電気刺激による動きなのか、疑問が残る。途中でコンピュータがトラブり、同じ動きを繰り返したところもわざとらしい。笑いをとるためのヤラセか? ひょっとしたら初めから電気など流れておらず、まったくのフィクションかもしれない(タイトルも「ダンス・フィクション」だし)。おそらく電気が流れているのは事実だろう。だが、コードをつなげば素人でも土方巽と同じ動きができるわけではなく、何度も練習したダンサーだからこそ映像と同じ動きができたのだ。ならば電気を流さずとも練習すれば同じ動きができるはずだし、そもそも過去のダンサーと同じ動きをしても単なる模倣にすぎないだろう。これはそれを先端科学技術を駆使してあえてやってしまうバカバカしさに最大の意義があるだろうし、その愚行自体がダンスなのだ。

2011/11/07(月)(村田真)

「マウリッツハイス美術館展」記者発表会

会期:2011/11/07

時事通信ホール[東京都]

現在改修工事中の上野の東京都美術館が、来年6月にリニューアルオープンする。その特別展第一弾が「マウリッツハイス美術館展」だ。マウリッツハイスといえば「絵画の黄金時代」と呼ばれる17世紀オランダ美術の宝庫。なかでも人気が高いのがフェルメール作品で、3点所蔵するうち《真珠の耳飾りの少女》と《ディアナとニンフたち》の2点がやって来る。とくに《真珠の耳飾り…》が貸し出されるのは「きわめてまれなこと」、とマウリッツハイス館長がネット中継で強調していたけど、数えてみたら日本に来るのは3度目で、どこが「まれ」なんだ? もうひとつの《ディアナ…》にいたっては来日4度目、もう常連ではないか。それにひきかえ、残る1点の《デルフト眺望》はまだ一度も来ていない。《真珠の耳飾り…》の人気が高いのはわかるけど、専門家筋では《デルフト…》のほうが評価は高い。そろそろ《デルフト…》を連れてきてはどうなんだ? あるいは《デルフト…》のほうが価値が高いから貸せないとか? ともあれ、いまさら《真珠の耳飾り…》じゃねーだろ感は否めない。そんなビミョーな空気を察知したのか、フィリップ・ドゥ・ヘーア駐日オランダ全権大使はあいさつのなかで、「もし1点もらえるなら、《真珠の耳飾り…》もいいが、私はフランス・ハルスの《笑う少年》を選ぶ」と述べた。さすが「閣下」、目玉のフェルメールでもナンバー2のレンブラントでもなくハルスを選ぶとは! いったいこの反骨と諧謔の精神を、会場にいた何人が理解しただろう。

2011/11/07(月)(村田真)

ライアン・ガンダー展「墜ちるイカロス──失われた展覧会」

会期:2011/11/03~2012/01/29

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

会場に入ってすぐ目につくのは床に散らばった数十枚の紙。そこには1枚にひとりずつ似顔絵が描かれており、杉本博司、須田悦弘、西野達らが識別できた。いずれもメゾンエルメスで展覧会を開いたアーティストだが、なぜか実際よりも老けて描かれている。法廷画家に頼んで約30年後の肖像を描いてもらったそうだ。その向こうには、セーヌ河畔でよく見かける古本屋の屋台のような深緑色のボックスがひっくり返り、壁には書籍リストが掲げられている。リストはやはりここで展覧会を開いたアーティストたちが選んだ本の題名で、ボックスのなかにはそれらの本が入っているという。解説を読むと、このフォーラムの開設10周年を記念して、ここで開かれた展覧会を主題にした作品を出しているらしい。いわば「メタ展覧会」。ここに足しげく通った人なら楽しめるかもしれないが、この展示だけ見ても「なんだこりゃあ」だろう。もうひとつの部屋には、ドガ風の踊り子が絵を見てる彫刻とか、イケアの家具を縦に並べたジャッド風ミニマルアートなどもあって、展覧会や美術史そのものにも言及している。ペダンチックな臭みがあるけど、けっこうこういうの好き。

2011/11/07(月)(村田真)

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