artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
オープン・スペース2013

会期:2013/05/25~2014/03/02
NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)[東京都]
ICCのオープンスペース2013展へ。ペ・ランのムービング・オブジェクトと和田永のオープン・リール・アンサブルは、振動や落下など、ともにシンプルな物理的運動だけで、こんなに美しい作品ができることに驚かされた。前谷康太郎も、アナログでユニークな効果をもたらす。ティル・ノヴァクは、遊園地の幾何学をハイパーにした作品で、建築系におすすめ。心象自然研究所の展示はかわいいし、他の作品も総じてよかった。
2011/11/17(日)(五十嵐太郎)
東京ミッドタウンアワード2011
会期:2011/10/28~2011/11/27
プラザB1Fメトロアベニュー展示スペース[東京都]
毎年ミッドタウン地下通路でやってるアートとデザインの2部門のコンペ。両部門合わせて1,470件の応募があり、13点の受賞作品を展示しているから、倍率は100倍以上だ。まず「都市」をテーマにしたアート部門では、チラシ広告によくある部屋の間取り図を切り抜いてつなぎ合わせ、鏡を使って増殖させた山本聖子の作品がグランプリを受賞。ほかに、アクリルミラーがもごもご歪む木村恒介や、明かりを灯したビルの模型を球状にまとめた栗真由美らの作品などがある。いずれもこぎれいにまとめていてコンペにはふさわしいかもしれないが、もっとアートならではのダイナミズムがほしかったなあ。デザインのほうのテーマは、ミッドタウン開館5周年にちなんで「5」。親指のついた5本指(?)のフォークはちょっとキモイが、道具が人間身体の延長であることを如実に示している。「ゴメンバコ」と「ごめんたい」はいずれも5面体の容器で、謝るときの贈り物として考えられたものだが、ダジャレが発想の原点だ。その他、ダイヤモンド型の角砂糖や、5文字だけの原稿用紙などウィットに富んだ作品ばかり。
2011/11/16(水)(村田真)
南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎

会期:2011/10/26~2011/12/04
サントリー美術館[東京都]
《泰西王侯騎馬図屏風》は桃山から江戸初期のあいだに制作された初期洋風画の代表作で、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世やフランス王アンリ4世をはじめ、ペルシャ王、モスクワ大公、トルコ王ら計8人が乗馬姿で描かれたゴージャスな屏風絵。残念ながら現在ではサントリー美術館と神戸市立博物館に分蔵されているが、今年それぞれ開館50周年と30周年を迎え夢の顔合わせとなった。もちろんいくら傑作とはいえ、これだけで会場を埋めるわけにはいかないので、狩野派による南蛮屏風や、輸出品としてつくられた蒔絵螺鈿の漆器、東西の描画技法が混在した西洋風俗図、そしてキリシタン弾圧を描いた殉教図や踏絵まで集めている。見ていくと、西洋=キリスト教によって目を開かされたのもつかのま、禁教令によって一気に闇夜に逆戻りしていった歴史が浮き彫りになり、まさにタイトルどおり「光と影」。肝腎の《泰西王侯騎馬図屏風》は予想以上の迫力で、西洋の動きや陰影表現が日本の素材とスタイルに融合し、唯一無二の絵画を創出している。その部分拡大写真がまた圧巻。髪の毛の艶、細やかな装飾、胡粉の盛り上がりまで余すところなく伝えてくれる。
2011/11/16(水)(村田真)
「アーヴィング・ペンと三宅一生」展

会期:2011/09/16~2011/04/08
21_21デザインサイト[東京都]
今日はミッドタウン3連発。まずは21_21へ。写真家アーヴィング・ペンとデザイナー三宅一生とはなんと異色の組み合わせ、と思いきや、ペンは一生のコレクションポスターを飾るため、1987年から13年間にわたり250点を超える服を撮ってきたのだ。そのポスターを一堂に会するほか、大型プロジェクターで写真を投影。また、一生がデザインした服をニューヨークのペンのスタジオに送り、そこで撮影した写真をもとに東京でポスターがデザインされるまのでプロセスを描いたアニメも上映している。その撮影現場に一生はいちども立ち会ったことがないという。イッセイミヤケのイメージを決定づけたシンプルなのにインパクトの強いポスター群は、彼のファッションデザインを独自に解釈した写真家ペンと、さらにその写真を素材にしたデザイナー田中一光という3者の個性が奇跡的にかみ合って生み出されたものであることがわかる。
2011/11/16(水)(村田真)
朝海陽子「Northerly Wind」

会期:2011/11/02~2011/11/20
NADiff Gallery[東京都]
自宅でホームビデオの映画を鑑賞している人々を撮影した朝海陽子の「Sight」シリーズ(2006~2010)は、とてもよく練り上げられた、想像力を刺激する作品だ。すでに同名の写真集(赤々舎、2011)も刊行されており、今のところ彼女の代表作であることは間違いない。
えてして、こういういい作品の後には模索の時期が続くことがあるが、まさに朝海が陥っていたのがそんな状況ではないだろうか。近作をいくつか見たのだが、まだ「これは」という水脈が見つかっていないように感じた。今回NADiff Galleryで展示された「Northerly Wind」にしても、試行錯誤の産物であることに違いはない。だが以前に比べると、何か手応えのようなものを感じさせる作品になってきている。
2011年夏、青森に滞在して撮影したいくつかのシリーズが並ぶ。「「Northerly Wind」は、海辺の道の風速表示板に、「北東の風2メートル」、「北の風0メートル」といった具合に数字が出ている様子を撮影している。「field sketch」は海、鳥の群がる樹、草原、燈台などのある風景をやや引き気味に撮影したランドスケープ。ほかに風が登場する小説の冒頭部分だけをモニターに映し出すインスタレーションも展示されていた。風というテーマは魅力的であり、可能性を孕んでいる。これまであまり表立っては見えてこなかった、朝海の作品のなかにある文学的なイメージが、さらに南風や東風や西風の領域にまで広がっていっても面白そうだ。
2011/11/16(水)(飯沢耕太郎)


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