artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

山内裕美 展

会期:2011/11/14~2011/11/19

Oギャラリーeyes[大阪府]

山内裕美の作品を久しぶりに見た。以前は画面に穴を開けるように網目状のドットを用い、自身が目にした光景を抽出するように描いていたのが、今回の発表では絵の具そのものの色彩や物質的な存在感というマテリアリティを追求して、より抽象的な絵画を描こうとしているようだった。先入観のせいだろうか、画面を見ているとやはり、空や山など、風景を連想するのだが、これから山内の表現はさらに変化していくような気がしている。今後も注目したい。

2011/11/18(金)(酒井千穂)

木野智史 展

会期:2011/11/14~2011/11/19

ギャラリー白[大阪府]

大きく開いたアサガオのような円錐形の磁器のオブジェが並んでいた。会場の奥には、まだ花が開いていないそのつぼみを想起させる形のものもひとつだけある。私の肩幅くらいだろうか、円錐形の作品は結構大きなサイズで、薄い器のようなそれらのフォルムや淡い釉薬の色あいが、なんとも儚げな雰囲気を醸していた。なかでも、表面にスリットがつけられたものは繊細なイメージが掻き立てるのだが、近づいてよく見ると、滑らかな質感のそれは意外にも逞しい。《翠雨》というタイトルがついていた。作家は現在、京都市立芸術大学大学院陶磁器科で学んでいるのだそう。彼の作品ははじめて見たのだが、薄いイメージの向こう側に控えているずっしりとした存在感が記憶に残る。次の発表もぜひ見てみたい。

2011/11/18(金)(酒井千穂)

世界制作の方法

会期:2011/10/04~2011/12/11

国立国際美術館[東京都]

アメリカの哲学者、ネルソン・グッドマンの著書と同名のタイトルの展覧会。エキソニモ、パラモデル、伊藤存+青木陵子、クワクボリョウタ、木藤純子、鬼頭健吾、金氏徹平、大西康明、半田真規の6人と3組のアーティストがそれぞれの方法論で展開する作品世界を紹介する。暗闇のなかを小さなライトをつけた鉄道模型が走り、周囲に設置されたザルや色鉛筆などの影がまるで建物や自然の風景であるかのように四方の壁面に映しだされるクワクボリョウタのインスタレーションは特に魅力的な作品だった。そこでは中学生の団体も一緒だったのだが、光と影に包まれる薄暗い空間で、あるとき一斉におお!という歓声があがる場面にも遭遇、それに私も興奮した。ダイレクトに観客のイマジネーションを喚起する力、見飽きさせないその強度の持続力もすごいと感じる作品。また、伊藤存+青木陵子のアニメーションとドローイング、大西康明のインスタレーションなど、アーティストの自由な想像力と創造力がうらやましく感じられるものがいくつも見られ、豊かな気持ちになった展覧会。

2011/11/18(金)(酒井千穂)

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いけばな雑司が谷2011

会期:2011/11/17~2011/11/20

旧高田小学校[東京都]

鬼子母神にほど近い廃校で催された生け花の展覧会。「生け花」というと格式高い伝統芸術の印象が根強いが、本展で発表されたのは型破りな生け花ばかり。流派の異なる17人の華道家/作家たちが、教室や廊下などで作品を展示した。教室の一面にススキの穂を渦巻状に立ち並べたり(太田光)、間伐材を極薄にスライスした素材「かなば」を縦横無尽に張り巡らせたり(日向洋一)、広い空間に決して見劣りしない作品が多い。いまでは廃校を使ったアートイベントは珍しくないが、これほどまでに空間の容量と作品のスケール感が調和した展覧会は決して多くはないだろう。なかでも抜群だったのが、上野雄次。乗用車の屋根に木の枝を組み合わせた巨大なオブジェを設置し、都内各所の繁華街を激走した。会場には、その様子を記録した映像が流されていたが、車高をも上回る大きなオブジェが街を水平移動していく姿は異様で、街の人びとから大きな注目を集めていた。ただし、この作品は非日常的な出来事によって日常を異化するパフォーマンスにすぎないわけではない。映像をよく見ると、木の枝のあいまに植物の葉が生けられているのがわかるから、これはやはり正真正銘の「生け花」である。巨大な死(木の枝)に包まれながら疾走する、わずかな生。生を美しく死に送り届けることが生け花の本質だとすれば、上野はそれを花器から解き放ち、私たちの都市生活の只中を走らせることで、それを反転して見せた。死から生を強引に導き出そうとするという点で、上野雄次の表現は「生け花」というより、まさしく「はないけ」なのだ。

2011/11/18(金)(福住廉)

龍野アートプロジェクト2011「刻の記憶」

会期:2011/11/18~2011/11/26

うすくち龍野醤油資料館周辺の醤油蔵、龍野城、聚遠亭(藩主の上屋敷)[兵庫県]

薄口醤油や素麺の産地として知られる兵庫県たつの市。同市はまた、古い歴史を持つ城下町であり、三木露風をはじめ文学者を多数輩出した土地としても知られている。その城下町エリアの3カ所を会場に行なわれたのが本展である。出品作家は、尹熙倉、東影智裕、小谷真輔、佐藤文香、芝田知佳、井上いくみ他ルーアン美術学校の卒業生たち。また、京都市立芸術大学准教授の加須屋明子が芸術監督を務めた。本展で特に印象深かったのは醤油蔵の展示で、作品の質はもちろんだが、空間自体のポテンシャルが大変高く、その相乗効果で非常に素晴らしい展示が見られた。この醤油蔵は、是非今後も有効活用してほしい。たつの市の城下町は小さいが、古い街並みが比較的良好に保存されており、観光地としても魅力的だ。このプロジェクトを単発で終わらせるのではなく、地元の文化・観光資産として長期的に育ててほしいと思う。

2011/11/18(金)(小吹隆文)