artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

プレビュー:成層圏 Vol.4 松川はり×川北ゆう

会期:2011/09/03~2011/10/08

gallery αM[東京都]

武蔵野美術大学が運営するギャラリーで開催されている三人のキュレーター(高橋瑞木、鈴木勝雄、田中正之)による企画展。今年度は「成層圏」というタイトルのシリーズで、今展には松川はりと川北ゆうの作品が展示される。「わたし」という存在について「水」というキーワードからアプローチする今展のキュレーターの意図にそって、印象の異なるそれぞれの作品の魅力をあじわってみたい。

2011/09/15(木)(酒井千穂)

プレビュー:六甲ミーツ・アート芸術散歩2011

会期:2011/09/17~2011/11/23

六甲ガーデンテラス、自然体感展望台 六甲枝垂れほか、複数会場[兵庫県]

六甲山上の各所にさまざまなアート作品が展示される「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2011」。六甲高山植物園に作品が展示されるクワクボリョウタや、「VOCA展2011」にも出展していた山本聖子をはじめ、安藤隆一郎、伊藤彩、石塚源太、かとうゆうき、染谷聡、パラモデル、KRen;による新ユニット(ゆ)など、気になるアーティストたちが参加している。ピクニック気分で展覧会を回遊できるという点がまた魅力的。秋の六甲山の空気や景色とともに楽しみたい。

2011/09/15(木)(酒井千穂)

プレビュー:中島麦──悲しいほどお天気

会期:2011/09/09~2011/10/10

Gallery OUT of PLACE[奈良県]

勢力的に活動を行なっている中島麦が初めて奈良で個展を開催。彼の個展ではいつも、たくさんのドローイングをおさめたファイルの量にも驚くのだが、展示されるタブローとともにそれらを見ていると、一瞬の時間をとらえようとする作家のまなざしを追体験するようで楽しい。今展では映像作品も発表されるとのこと。新しい展開への期待も膨らむ。

2011/09/15(木)(酒井千穂)

プレビュー:フィギュアたちの人生

会期:2011/09/03~2011/11/13

ボーダレス・アートミュージアムNO-MA[滋賀県]

アール・ブリュットの作り手による、紙やセロテープ、針金などの身近な素材だけでつくられた素朴な造形と、アーティストによる多彩な素材と手法による造形の展示を通して、「人はなぜフィギュアを、命あるもののように愛し、そして作るのだろう。」という謎にアプローチする展覧会。会期中の土日に開催されるトークイベントやワークショップもどれも面白そう。17日(土)、18日(日)には、会場の近くの八幡堀や近江商人の町並みで開催される「八幡堀まつり」に合わせたイベントも。近江八幡の町歩きも一緒に楽しみたい。

2011/09/15(木)(酒井千穂)

森岡督行/平野太呂(写真)『写真集』

発行所:平凡社(コロナ・ブックス)

発行日:2011年9月7日

「写真集の写真集」。このアイディアは以前から形にしたいと思っていたのだが、残念ながら先を越されてしまった。しかも、かなり理想に近い形で。
本書に収録された写真集は、すべて東京・茅場町の森岡書店で扱っているものである。森岡書店は、著者の森岡督行が1926(昭和2)年建造という古いビルの一室に、2006年に開業した古書店である。白壁と焦茶色の床の室内には、趣味のいい書棚と机が並べられ、そこにゆったりと、これまた趣味よく写真集を中心にした本が並べられている。壁の一部はギャラリーとしても使われていて、僕も個展を開催させていただいたことがあった(飯沢耕太郎コラージュ展「ストーンタウン・グラフィティ」2010年12月13日~18日)。個人的にも、とても好きな空間なのだが、ヨーロッパや日本の戦前の写真集など、古書店としての品揃えもしっかりしていて、定期的に足を運ぶお客も多い。本書はその森岡書店の粒ぞろいの写真集を、店主自ら解説して紹介するというなかなか贅沢な企画である。大竹昭子、平松洋子、ピーコ、しまおまほ、藤本壮介など、縁のある人々に森岡が写真集を手紙つきで送るという想定で書かれた文章も、しっかりと丁寧に綴られている。
だが、本書の最大の魅力は、何といっても平野太呂によって撮影された書影の素晴らしさだろう。むろん単なる複写ではない。この本はここに、こんなふうに置かれるべきだという思いがそれぞれ見事に実現されていて、ページをめくるたびに新しい世界が開けてくる。センスのよさだけではなく、写真集そのものに対する理解度の深さが伝わってくるのだ。実物で確認してほしいので、ここではあまり具体的なことは書きたくないが、ひとつだけ。エドワード・スタイケン編の『The Family of Man』が、白いハンガーにぶら下がっている写真を見て、思わず笑ってしまった。

2011/09/14(水)(飯沢耕太郎)