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美術に関するレビュー/プレビュー

高嶺格/ジャパン・シンドローム~step.1 球の裏側

会期:2011/09/23~2011/10/16

京都芸術センター[京都府]

「KYOTO EXPERIMENT 2011 京都国際舞台芸術祭」のプログラムとして開催された展覧会。本展は、今後約3年にわたり継続されるプロジェクトの第1回にあたる。南ギャラリーでは、ブラジルで取材した映像とスラム発祥の音楽が流れ、観客が手をかざすと変化するインタラクティブなインスタレーションが展示された。北ギャラリーでは、南ギャラリーでの観客の振る舞いを覗き見する、少々意地悪な視点の作品が。これは、日本人のブラジルに対する関心や南北問題を皮肉った表現なのだろうか? また、南ギャラリー近くの階段横では、食品の放射能汚染について語る商店主と客の会話を再現したビデオ作品《ジャパン・シンドローム~関西編》も。本作は当初の予定にはなかった作品かもしれないが、時宜を得たテーマだったので、むしろ南北ギャラリーの作品以上に印象的だった。

2011/09/23(金)(小吹隆文)

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CAFE in Mito 2011──かかわりの色いろ

会期:2011/07/30~2011/10/16

水戸芸術館現代美術センター[茨城県]

CAFEっつったって館内にカフェを開くわけではなく、Communicable Action for Everybody(だれもがコミュニケーションできる行動)の頭文字をとったもの。これまで3回は芸術館を出て街なかで作品を展開してきたので、今回も屋外に出て行くのかと思ったら大間違いで、ほとんどが屋内での展示だった。しかもインスタレーション系が少なく、水戸芸に関係したアーティストによる絵画か写真などの平面作品が大半を占め、おまけにこれまでの展覧会のポスターやカタログまで並べている。一見ずいぶん後退したというか、後ろ向きの印象は否めないが、もちろんこれにはワケがある。東日本大震災で水戸芸も被災し、開催中および予定していた企画展やイベントはキャンセルされ、4カ月余り休館。「CAFE展」は震災後初めて開く展覧会なのだ。とはいえまだ余震が続くため、大規模なインスタレーションはひかえ、絵画や写真など壁掛けの平面作品を中心に、元気の出る作品を集めたという。いってみれば水戸芸術館の再出発のごあいさつのようなもの。それにしても「揺れる美術館」というのは比喩としてはよく使われるけど、物理的に揺れるのは致命的だなあ。しかも水戸は全国的に見れば福島に近いし。こうした条件をプラスに転化させる展覧会はできないものだろうか。

2011/09/23(金)(村田真)

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棚田康司 展「◯と?」(らせんとえんてい)

会期:2011/09/22~2011/10/14

スパイラルガーデン[東京都]

スパイラルガーデンの巨大な吹き抜け空間に、2組4体の彫刻が置かれている。奥が「風神雷神」にヒントを得た《風の少年》と《導雷少女》で、手前が《ナギ》と《ナミ》。いずれも一木づくりで表面が彩色され、台座部分は木のかたまりのままだ。奇妙なのは《ナギ》と《ナミ》の展示で、両者が向かい合うように横倒しになっているのだ。この2体、巨木を縦に割ってそれぞれに彫っているのだが、台座の大きさに比べて人物像が細くて小さいため、横倒しにすると身体部分が宙に突き出したかたちになる。つまり作品の前に立つと、両側から《ナギ》と《ナミ》の頭がニューと出ていて、まるで「風神雷神」を守る遮断機のようなかっこうになっている。しかもこの2体、身体が微妙にねじ曲がっているため波形に見える。いや波形というより螺旋を描いているというべきか。スパイラルの語源になった螺旋状の吹き抜け空間に置かれた、ゆるやかに螺旋を描く1組の人体彫刻。空間を深く読みとったインスタレーションといえる。

2011/09/22(木)(村田真)

ゼロ年代のベルリン──わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)

会期:2011/09/23~2012/01/09

東京都現代美術館[東京都]

世界12カ国からベルリンに集まった15組(10/29から18組に増加)のアーティストを紹介。映像作品が多いので閉口するが、マティアス・ヴェルムカ&ミーシャ・ラインカウフの映像は笑える。マティアスが地下鉄構内や橋などにヒモを掛けてブランコ遊びをするところを記録したもので、映像作品というよりストリートアートのドキュメンタリーになっている。ミン・ウォンはパゾリーニ映画の登場人物すべての役を自分ひとりでこなすという映像作品がメインだが、その映画のワンシーンを描いたペインティングも出していて、こちらのほうがおもしろい。ペインティングでいえば、抽象表現とグラフィティを掛け合わせたようなカタリーナ・グロッセの作品が、今後の絵画の可能性を示唆しているように思えた。

2011/09/22(木)(村田真)

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世界遺産 ヴェネツィア展──魅惑の芸術・千年の都

会期:2011/09/23~2011/12/11

江戸東京博物館[東京都]

なぜいまヴェネツィア展なのか。今年はヴェネツィア・ビエンナーレの開かれる年だから、ってわけではない。ビエンナーレは2年に一度開かれるんだもん。考えられるのは、ヴェネツィアも日本もいま水没の危機に直面しているということだ。しかしそんな理由で来るかね。ともあれヴェネツィア。考えてみれば、ぼくがいちばんたくさん行った海外の都市は、パリでもロンドンでもニューヨークでもなく、ヴェネツィアなのだ。もちろんビエンナーレを見に行くためだが、何度か行くうちにビエンナーレの取材より、むしろヴェネツィアという街を再訪すること自体が楽しみになってきた。そして、行けば行くほどこの街は奥深い表情を見せてくれるのだ。こうして人はヴェネツィアと恋に落ちていくのかもしれない。なーんてね。展覧会はヴェネツィアの歴史と文化を紹介するのが目的なので、ガラスをはじめとする工芸品、衣装、家具、写本などもけっこう出ている。絵画は、ヴェネツィアを代表する画家ティツィアーノが1点もないのが残念だが、ベッリーニ兄弟、カルパッチョ、ティントレット、カナレットらはある。とりわけ仮面舞踏会などヴェネツィアの風俗を描いた18世紀の画家、ピエトロ・ロンギの作品を見られたのがうれしい。

2011/09/22(木)(村田真)

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