artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

AAPA東日本大震災復興支援・アートミーティング「第1回仙台セッション」

会期:2011/07/29

Ai_gallery[宮城県]

AAPA東日本大震災アートミーティング第一回仙台セッション「今、アートに何ができるか」が開催された。基調報告として、南條史生さんは311以降の森美術館のさまざまな対応、宮城教育大の村上タカシさんは3.11メモリアルプロジェクトなどのアート活動を紹介する。第一部「現場からの報告・提案」では、リアス・アーク美術館の山内宏泰さんが五感に訴えるアートの伝達力を強調した。続いて、えずこホールの水戸雅彦さんは4月12日にあえて公演を決行したこと、今こそアートが求められることを語る。そしてアーティストの遠藤一郎さんは「未来へ」号のクルマで東北各地をまわり、被災商店の看板ペイントや表札アートなどを行なう試み、森ビルの藤原純さんは県をまたぐ長大な津波浸水ラインに沿って、未来に記憶を残すパブリックアートを置いていくプロジェクトを提案する。第二部のパネルディスカッションでは、五十嵐が研究室の活動を紹介しつつ、建築界の状況をレビューしてから、全体でアートの役割について討議した。

2011/07/29(金)(五十嵐太郎)

丹羽良徳 個展「共同体の捜索、もしくはその逃亡劇」

会期:2011/07/23~2011/09/24

AI KOWADA GALLERY[東京都]

パフォーマンス・アーティスト、丹羽良徳の個展。路上や街中で行なわれるパフォーマンスを記録した映像作品を2点発表した。ひとつは、自分で持ち込んだ雑誌を書店で買い求めるパフォーマンスで、もうひとつはこの4月に新宿で催された脱原発デモの隊列の真ん中を逆行するパフォーマンス。前者が資本主義を、後者が政治運動を、それぞれ参照項として想定していることはまちがいない。一見すると、ナンセンスな笑いをねらった身体表現にすぎないように見えるかもしれないが、双方に通底しているのは芸術的な自己表現があくまでも一方的なものだという強い信念だ。資本主義にかぎらずあらゆる経済活動は交換を原則としているが、丹羽が実行しているのは一方的な贈与であり、それが何かしらの見返りを暗に要求するわけでもないという点で、反経済的・反交換的な表現である。政治運動にしても、あらゆる集団的な示威行動はその目的が達成されるために行動するという合目的性によって成立しているが、集団歩行に逆行する丹羽の身体は合理的な目的を持っているようには見えない。そこに山があるから登るように、そこに流れがあるから逆らっているような印象を覚える点では、きわめて動物的な身体表現だとさえいえる。丹羽が身体で切り開いているのは、他者や外部とのコミュニケーションにもとづく(指示表出としての)芸術ではなく、自分自身との対話や沈黙から生まれる(自己表出としての)芸術である。社会であれ他者であれ、何かのための芸術が横行するいま、丹羽の一方的な表現は心強い。

2011/07/28(木)(福住廉)

高田竹弥 作品展「小さな窓から」

会期:2011/07/27~2011/08/07

iTohen

高田の作品を見たのは約2年ぶりだ。廃材や木片、古書の一部、植物などに最小限の手を加える作風に大きな変化はないが、それでも幾つか新たな試みが行なわれており、作風の微妙な変化を楽しませてもらった。それにしても彼の作品から受ける感興は、詩や文学に接した時の感触に近い。これは私の勝手な推測だが、高田はフォルムよりも素材が持つソノリティ(響き)に重きを置いて制作しているのではなかろうか。

2011/07/28(木)(小吹隆文)

ライアン・ガンダー「Meaning...surrounds me now」

会期:2011/07/10~2011/09/18

1223現代絵画[東京都]

長い壁に小さめの同型パネルがペアで20組、色分けされて並んでいる。なんだかわからないけどちょっといい。この感覚は大切だ。突き当たりの壁には色もサイズもプロポーションも異なる数十枚のパネルが立てかけられていて、もっといい感じ。だが、もう一方の壁には前回展示されていた三輪美津子の絵画を入れた大きな箱が立てかけられていて、なぜ次の展示が始まってるのに撤去しないのか、とても残念に思った……のもつかの間、まったく同じ箱が隣にあって、これも作品であることが判明。ライアン・ガンダー、いいねえ。入場料500円はけっして高くない(安くもないけどね)。

2011/07/28(木)(村田真)

瀧本幹也「LAND SPACE」

会期:2011/07/16~2011/08/28

MA2ギャラリー[東京都]

この7月に役割を終えたスペースシャトルの本体、セラミック素材に覆われたその表面、噴射口、噴煙に包まれた打ち上げ直後の姿などを撮っている。これは美しい。2階では打って変わって、黒く塗った壁に、コケのむした岩や雪がまだらに積もった山などを撮影したプリントを展示。地球の重力圏から逃れる装置の人工美と、地球表面を上から見下ろした自然美の対比ともいえるが、1階と2階とでは作者の熱量がずいぶん違うように感じる。

2011/07/28(木)(村田真)