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美術に関するレビュー/プレビュー

プレビュー:plate journey──瓜生祐子 展

会期:2011/07/26~2011/08/07

Gallery PARC[京都府]

京都芸術センターで開催される「sweet memory:おとぎ話の王子でも」に出品する瓜生祐子の個展。甘いものや料理を風景に見立てた作品は繊細な線と淡い色彩が料理の盛りつけが崩れるときのような危うさを想起させる。その不安定なイメージが記憶に残る。

2011/07/15(金)(酒井千穂)

プレビュー:夏休み企画展「sweet memory:おとぎ話の王子でも」

会期:2011/07/20~2011/09/11

京都芸術センター[京都府]

甘いもの、お菓子などをめぐって表現を行なう4名の作家を紹介。人間に必要な栄養素というだけでなく、ときに安心や幸福感を与える甘いもの。その記憶との密接な関わりにも迫る。出品作家は謝琳、河地貢士、林智子、瓜生祐子。会期中は多彩なワークショップも開催。

2011/07/15(金)(酒井千穂)

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森花野子「lines. dots.」

会期:2011/07/14~2011/07/19

現代HEIGHTS Gallery DEN[東京都]

谷口雅の企画による現代HEIGHTS Gallery DENの連続展の第3弾。第2弾のシンカイイズミ「いつ どこで だれが」(7月7日~12日)を見過ごしたのは残念だったが、今回の森花野子の展示を見ても、各作家の作品のレベルがかなり高いのがわかった。
森が撮影しているのは、祖父や祖母が遺した器の類である。「戦時中に防空壕に埋めたという大皿」や「祖父がワインをたしなんでいたというグラス」などをクローズアップで、近親者の手の一部とともに撮影し、マット系の紙に大伸ばししたプリントが4枚、天井から吊り下げられている。写真の裏から強い光を当てているので、それがプリントの表面に滲み出し、モノクロームの微妙な陰翳をより際立たせている。森は武蔵野美術大学の出身ということだが、インスタレーションとしてなかなか工夫された展示といえるだろう。
日常の器に目をつけた視点もいいと思う。皿やグラスや壷は、それを使っていた家族の思い出とともに次の世代へと受け継がれ、また違う経験や記憶が付け加わっていく。その時、器は食べ物や飲み物の容器という実用的な役割を超えて、いわば「生と死を盛る器」としての存在感を強めていくといってもよい。その有り様をしっかりと見つめ、丁寧に写しとっていこうという態度が、きちんと貫かれていて気持ちがいい。このような身近な素材に注目する視点の取り方は、やはり作家の女性性のあらわれといえるのではないだろうか。次の展開にも期待したい。

2011/07/14(木)(飯沢耕太郎)

Identity VII「ゆっくり急げ Festina Lente」

会期:2011/06/24~2011/07/23

nca[東京都]

地下に降りる階段の上に黄色いシューズが1足、ポツンと置いてある。道行く人々にとっては落としものだが、地下に現代美術のギャラリーがあることを知ればこれが作品だろうと予測できる。価格は2万円。道行く人が知らずに持って行ったら窃盗になるだろうか。地下に降りると、エントランスのガラスには何人かの口紅がべったりとついている。これにも値段がついてるが、世話好きのコが気を利かせて消してしまったら賠償請求されるだろうか。ギャラリーに入るとまず、大相撲の八百長に関与したとして引退勧告を受けたものの、引退届を出さず解雇された内モンゴル自治区出身の蒼国来を救うためのキャンペーンが目に入る。心の準備ができていなければつい本気で読んでしまうところだが、幸いここまでふたつの作品を突破して来たのでだまされないぞ。しかし、これがもし作品に名を借りた本気のキャンペーンだとしたら? ま、このように疑心暗鬼にもかられる楽しい展覧会でした。

2011/07/13(水)(村田真)

吉村芳生 展

会期:2011/07/08~2011/07/16

ギャラリー川船[東京都]

3.11の大震災のニュースを伝える新聞紙に、自分の顔を描いた版画を刷り、それをギャラリーの壁全面に貼っている。版画は顔の向きや表情が異なる8種で、刷った枚数は23,000部。これは当時の死者・行方不明者の概数だという。こう書くと、震災に便乗した作品に見られるかもしれないが、これまでも毎日のように新聞紙に自画像を刷ったり、以前は新聞を丸ごと筆写したこともあるアーティストだけに、たんなる思いつきで始めたものでないことは明らかだ。毎日、徒労にも思える作業の繰り返しを自分に科しているこのアーティストにとって、3.11の大震災は日々のリズムを大きく狂わせる出来事だったに違いない。その歯車のきしみからひねり出された作品群と思いたい。

2011/07/13(水)(村田真)

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