artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
全国アート物産展!!

会期:2011/07/07~2011/07/31
ナディッフギャラリー[東京都]
island JAPANの七夕祭りだそうで、全国の若いアーティストたちが小品やアートグッズをところ狭しと展示販売している。遠藤一郎だとかオル太とか知ってる名前もあるが、多摩川カジュアル、ヌケメ、信長、星屑のキラメキっていったいだれ? つーかなに? まあ名前は許すにしても、なんでうんこ系ちんこ系が多いの? 困ったもんだ。人のことはいえないが。
2011/07/28(木)(村田真)
ジャン=ルイ・トルナート「Between II, Bad Dreams」

会期:2011/07/18~2011/07/31
PLACE M[東京都]
ジャン=ルイ・トルナートは1969年生まれ。1996年にアルル国立写真大学を卒業し、現在はパリを中心に活動している。2009年12月にも、PLACE Mで赤外線フィルムを使用して睡眠中の男女を撮影した「Between」シリーズを発表しているが、本展はその続編にあたる。ベッドで眠っている人の姿を定点観測的に撮影するというコンセプトに変わりはないのだが、今回はそれに「波動や煙、液体、亡霊のような形といった抽象的で奇妙な風景の写真」が付け加えられている。そのことによって、眠りの世界で、人間がいわば「気体化」して、ふわふわと宙を漂っているような感覚が強調されているようだ。まさに現実と夢の「中間(Between)にいる経験」の見事な視覚化といえるだろう。
これはまったく偶然なのだが、今月、吉行耕平の「The Park」に続いて、赤外線フィルムを使った作品を見ることができたのが興味深かった。むろん、デジタル的な処理を施しても同じような視覚的効果は得られるかもしれないが、目に見えない赤外線を感知することができるこのフィルムに写し出された世界は、被写体そのものが内側から発光しているような奇妙な生気に満たされている。闇の世界に分け入る手段として、さらなる可能性を孕んだ手法といえるのではないだろうか。
なおPLACE Mの階下のM2ギャラリーでは、トルナートのもうひとつの作品「Burned Land」が展示されていた。山火事にあった森を撮影したカラー写真のシリーズである。飛行機の残骸らしき物体が点在する黙示録的な光景もまた、「中間にいる経験」の表象化といえそうだ。
2011/07/26(火)(飯沢耕太郎)
山田はるか ヘルタースケルター respect for OK!

会期:2011/07/08~2011/08/05
浜崎健立現代美術館[大阪府]
岡崎京子の著作『ヘルタースケルター』を、主人公に扮した作家自身(写真)と、原作通りに描き下ろした作画でリクリエイトした作品を出品。作品の一部になり切るといえば森村泰昌が思い浮かぶが、山田の作品も対象への愛と敬意に満ちていて感動を覚えた。漫画家による漫画のカバーは過去に何度か試みられているが、美術家が漫画をカバーし、自分自身が写真で登場する作品を見たのは初めてだ。この方法論には、おおいなる可能性を感じた。
2011/07/24(日)(小吹隆文)
大沼洋美「くもがうまれるところ」

会期:2011/07/21~2011/07/26
谷口雅企画の現代HEIGHTS Gallery DENの連続展示の第四弾。山形の東北芸術工科大学を卒業して当地で活動している大沼洋美の作品は、文字通り「くもがうまれるところ」を扱っている。山間で煙、霧、靄などが立ちのぼる場所を撮影しているのだが、大地から流れ出る気流のかたちに神経を集中している様子がしっかりと伝わってくるいい写真だった。地面に近い場面は床に近づけて、山頂のあたりの場面は天井近くに展示するというインスタレーションも、よく考えられていた。
それとは別に、同時に展示されていた「谷口雅写真展」の最終回「水面を眺めてばかりいる」もなかなかよかった。谷口の記憶のなかに流れ、淀み、渦巻き、変化していく「水面」のイメージを、ふと目にした嵐の後の川面や、バルコニーの床に叩きつける雨粒などと重ね合わせて撮影していったシリーズである。「句読点のように置かれた水の記憶。撮り損なってばかりいる水。あるいはだからこそいまだに水面を眺め続けシャッターをきりつづけているのだろう」。写真から言葉へ、そしてまた写真へと「切断し旋回」していく思考と感情の流れが、繊細かつ的確に定着されていると思う。
少し気になったのは、写真がA4のコピー用紙にプリントアウトされた状態で、上の二カ所だけをホッチキスで止めて壁に並んでいること。なるべく大げさになることを避けて、軽い感じで展示したいという気持ちはわからないではないが、逆に衒いが目につき過ぎる気もする。普通のプリント、普通のフレームでよかったのではないだろうか。
2011/07/24(日)(飯沢耕太郎)
田口行弘

会期:2011/03/26~2011/08/28
森美術館[東京都]
床板や椅子などありきたりの日用品を少しずつ動かすことでストップモーション・アニメーションを制作するアーティスト、田口行弘の個展。森美術館のバックヤードや六本木近辺で制作した映像作品を、角材などで空間を構築した会場で発表した。どちらかといえば表現に対して規制が強く働くほうの美術館にしては、映像のロケーションから会場の構成まで、空間を巧みに使いこなした作品に仕上がっていたように思う。このある種の「受け入れられやすさ」こそ、田口の作品の真骨頂なのだろうが、その一方で、「受け入れられにくさ」の段階まで飛躍することを期待しないではいられない。田口のストップモーション・アニメーションは、凡庸な日常を前提にしているが、その日常そのものに大きな亀裂が生じてしまったいま、日常にちょっぴり手を加えて無邪気に楽しむ類いの作品を、以前と同じように受け入れることが難しくなってしまったからだ。これは、おそらく田口にかぎらず、多くのアーティストがいま直面している壁ではないか。
2011/07/23(土)(福住廉)


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