artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

堂島リバービエンナーレ2011「ECOSOPHIA──アートと建築」

会期:2011/07/23~2011/08/21

堂島リバーフォーラム[大阪府]

大阪の堂島リバーフォーラムで、第2回目となる「堂島リバービエンナーレ2011」が開催されている。青森県立美術館チーフ・キュレーター、飯田高誉氏をアーティスティック・ディレクターに迎えた今回は建築とアートがテーマ。自然環境、社会環境、人間の心理の三方向から、新たな自然観や未来の地球というヴィジョンを提示するという内容で、地圏、水圏、気圏という領域にわけられた会場に16組のアーティストの作品が展示されている。第1回目の華やかな会場の印象と比べれば、やや固い雰囲気にも感じられたが、われわれの身体の延長にある建築とアートのさまざまな関係を見せる今展は、目先の未来ではなく、まずわれわれの現在までの生き方や考え方そのものを問うものでもあった。会場はたいへん暗いが、それだけに各々の作品とテーマを咀嚼しながらじっくりと鑑賞しやすい雰囲気。

2011/07/30(土)(酒井千穂)

冨倉祟嗣 展

会期:2011/07/18~2011/07/30

Oギャラリーeyes[大阪府]

自宅の植木鉢を持ち上げたとき、その鉢底と地面の間で生きている虫がいたことを知り、新鮮な驚きを味わったことがあるという冨倉。普段は目にすることのない境界的な世界(を覗きみたときの感動)にアプローチするその絵画作品は、時間的な奥行きをともなって見る側の記憶をも刺激し、物語の想像を掻き立てる。《ブルーシート》《ケミカル菓子》《ぼうしパン》など、身近な食品や道具を想起させる色彩イメージとタイトルもじつに愉快。まだはっきりとは意識がない寝起きのひとときのような、不思議な作品世界が魅力的だ。

2011/07/30(土)(酒井千穂)

アトミックサイト

現代美術製作所[東京都]

会期:2011/07/18~2011/08/07、2011/08/11~2011/08/20
イルコモンズ監修による企画展。既存の「原子力発電PR施設」に対して「反/脱原子力発電PR施設」を仮設するという設定で、イルコモンズ自身をはじめ、石川雷太や伊東篤宏、Julia Leser & Clarissa Seidel、中村友紀、山川冬樹、吉田アミが作品を発表した。3.11からわずか半年しか経っていないにもかかわらず、3.11以前の日常を取り戻したかのような健忘症的多幸感のなかで、原爆の核と原発の核が同じ危険であることを意識の隅へ追いやり、依然として「人間の安全保障」を蔑ろにしてやまない私たち自身の愚かさを思えば、これに対抗する表現文化をはっきりと打ち出すことは絶対必要であるし、この20年のあいだにサブカルチャーが失ってしまったカウンターカルチャーとしての役割を蘇生させることも必要不可欠である。平たくいえば、イルコモンズによるクリティカルな表現活動の主旨には大いに賛同する。しかし、そうであるにもかかわらず、展覧会を見た後の違和感をどうしても拭い去ることができないのは、そこで発表されているのが、結局のところ、どこからどうみてもアート作品以外の何物でもないからだ。しかも、原発や放射能の危機をテーマとした中庸な作品ばかりであるところに、同じ危機を感じてやまない者としては、少なからず不満が残る。会場の冒頭には楳図かずおの『漂流教室』から引用した「あたしらはいま、ふつうの状態じゃないんだ! ふつうの状態じゃないときに、ふつうのやり方じゃまにあわないんだ!!」というマンガが象徴的なメッセージとして掲げられていたが、この展覧会そのものが「ふつうのやり方」に終始してしまっているといったら言い過ぎだろうか。楳図かずおを置き去りにするほどの「ふつうじゃない」表現が見てみたいし、それは必ずしも展覧会を構成するほどたくさんある必要はない。ひとつでもあれば、十分に生きてゆけるからだ。

2011/07/29(金)(福住廉)

上野政彦──四つ月の物語

会期:2011/07/19~2011/07/31

ギャラリーはねうさぎ[京都府]

シリーズで開催されている4組のアーティストによる「月」をテーマにした展覧会。今回は上野政彦の写真作品や小さなオブジェが展示された。透き通るような薄い素材や繊細なその手仕事の、重力から解放されるような軽やかなイメージにうっとりと見入ってしまう。夜空や月の満ち欠け、時間の経過に思いが巡るミニマルな表現。暗くなってから見に行ったのは正解だった。

2011/07/29(金)(酒井千穂)

タグチ・アートコレクション GLOBAL NEW ART

会期:2011/07/12~2011/08/31

損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]

価格が青天井の巨匠ウォーホルやリキテンスタインはさすがに版画だが、それ以降のキース・ヘリングや村上隆らネオポップの作品は1点ものが多い。なんか以前見たミスミアートコレクションに似てるなあと思ったら、同じコレクションだった(新しい作品がずいぶん増えているようだが)。事情は知らないが、ミスミという企業のコレクションから、その社長か会長であるタグチさんの個人コレクションに移行したらしい。いまさらウォーホルやリキテンスタインを集める必要はないし、ぜひこの若手開拓路線は守ってもらいたい。個人的には、工事現場の仮設壁にオスゲメオスが描いたグラフィティをひっぺがしてきた作品や、ガラクタの集積で人の顔をつくるヴィック・ムニーズの写真など、ストリート系の作品(どちらもブラジル!)が貴重だと思う。

2011/07/29(金)(村田真)

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