2020年07月01日号
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artscapeレビュー

丹羽良徳 個展「共同体の捜索、もしくはその逃亡劇」

2011年09月01日号

会期:2011/07/23~2011/09/24

AI KOWADA GALLERY[東京都]

パフォーマンス・アーティスト、丹羽良徳の個展。路上や街中で行なわれるパフォーマンスを記録した映像作品を2点発表した。ひとつは、自分で持ち込んだ雑誌を書店で買い求めるパフォーマンスで、もうひとつはこの4月に新宿で催された脱原発デモの隊列の真ん中を逆行するパフォーマンス。前者が資本主義を、後者が政治運動を、それぞれ参照項として想定していることはまちがいない。一見すると、ナンセンスな笑いをねらった身体表現にすぎないように見えるかもしれないが、双方に通底しているのは芸術的な自己表現があくまでも一方的なものだという強い信念だ。資本主義にかぎらずあらゆる経済活動は交換を原則としているが、丹羽が実行しているのは一方的な贈与であり、それが何かしらの見返りを暗に要求するわけでもないという点で、反経済的・反交換的な表現である。政治運動にしても、あらゆる集団的な示威行動はその目的が達成されるために行動するという合目的性によって成立しているが、集団歩行に逆行する丹羽の身体は合理的な目的を持っているようには見えない。そこに山があるから登るように、そこに流れがあるから逆らっているような印象を覚える点では、きわめて動物的な身体表現だとさえいえる。丹羽が身体で切り開いているのは、他者や外部とのコミュニケーションにもとづく(指示表出としての)芸術ではなく、自分自身との対話や沈黙から生まれる(自己表出としての)芸術である。社会であれ他者であれ、何かのための芸術が横行するいま、丹羽の一方的な表現は心強い。

2011/07/28(木)(福住廉)

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