artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

森と芸術

会期:2011/04/16~2011/07/03

東京都庭園美術館[東京都]

タイトルにそそられて行ってみた。結論を先にいうとハズレだった。おしまい。ではあまりにそっけないので、ルソーの描く素朴なジャングル画から、コローの幻想的風景画、セリュジエによるシンボリックな森、エルンストらシュルレアリスムの森の表現、川田喜久治の撮った《ボマルツォの森》まで、興味深い作品はいくつかあった。豊かな森(国立自然教育園)に囲まれた庭園美術館ならではの企画、というのもわかる。でも、日本中から森の絵(や写真)をただ集めただけという印象は否めない。森といえばゴシック建築からアンディ・ゴールズワージーまでいろいろあるだろうに。

2011/04/19(火)(村田真)

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極並佑展「彷徨うシンデレラ」

会期:2011/04/16~2011/05/28

イムラアートギャラリー京都[京都府]

太い輪郭線、平面的な彩色、顔の部分が見えない人物が特徴だった極並佑の絵画。しかし新作では、背景の部分が具象的な表現になり、作風に変化が生じていた。それは、以前の作品が持っていた無機質さから、さざ波のような不穏な気配への変化であり、ある種の物語性が発生することによる作品と観客の距離間の変化である。彼の作品をもって、現代人の曖昧で希薄な人間関係を示唆しているという指摘があるが、果たしてそれだけだろうか。自分自身、まだ言語化はできていないが、より深い解釈がまだ残されている気がする。極並の作品はまだまだポテンシャルを秘めているのではなかろうか。

2011/04/19(火)(小吹隆文)

小島徳朗 展 tableau / sculpture

会期:2011/04/19~2011/05/01

アートライフみつはし[京都府]

絵画と彫刻を出品。絵画は、漢字の部首や平仮名の一部を思わせる線や点が画面に点在する抽象的なもので、見ようによっては風景画や書の一種として観賞することもできる。彫刻は、細い鉄線を組み合わせており、やはり文字をモチーフにしているかのようだ。タイトルにも特徴があり、熟語ではない2文字または3文字を組み合わせた独特のもの。造形と直接的な関連はないが、見ている方が自然と両者を結びつけて想像をたくましくする。絵画、彫刻、タイトルの響き合いが心地よいハーモニーを奏でる個展だった。

2011/04/19(火)(小吹隆文)

ナイロビアートプロジェクト「ナイロビレジデンス」帰国報告会

会期:2011/04/17

京都芸術センター談話室[京都府]

東京藝術大学大学院博士後期課程に在籍する美術家の西尾美也を中心にした日本人とケニア人の有志からなる、西尾工作所ナイロビ支部により企画運営されているナイロビ・アートプロジェクト。ケニア共和国のナイロビで、日常的な生活空間を実験場に、アーティストと地域住民が創発的な関わり合いを生みだすアートプロジェクトを実践するというもので、3月の1カ月間、このプログラムに参加した東明と松原慈による報告会が京都芸術センターで開かれた。
東は、町の通り沿いにある家具工房の近くで制作した木の棒を組んだジャングルジムのような作品の制作についてや、人々が集う教会でナイロビのゴミ袋とカーテンでつくったパラシュート作品を飛ばすワークショップの様子を報告。松原からは、巨大な広告塔に薄い布を貼り、それをスクリーンにして町の人々を撮影した映像を上映するというプロジェクトや、滞在中に出会ったものごとをアナグラムなどの言葉遊びに変換し、新聞や雑誌にして地元の新聞売りとともに販売したことなどが発表された。
二人のアーティストの活動もさることながら、両者のプレゼンからはともに、まったく異なる生活文化に暮らす人々の常識や社会通念のひとつがあるときにポロっと崩れ、一部の人にしろ、それまでそこになかった別の価値観が好意的に迎えられるときがうかがえて、じつに興味深く感じた。ナイロビアートプロジェクトの今後の活動展開も気になる。
[写真:松原慈が滞在中制作した新聞]

2011/04/17(日)(酒井千穂)

開廊30周年記念「馬文(ジェニファー・ウェン・マ):浪ー墨春(Jennifer Wen Ma, Tide-Inked Spring)」

会期:2011/04/08~2011/04/30

アートスペース虹[京都府]

開廊30周年記念の企画展。ギャラリー壁面に設置された棚に合計12本の小さなしだれ桜が並べられていた。花をつけているものが多いのだが、どれも違和感がある。よく見ると木も枝も墨が塗られていて、葉もところどころ黒かった。最初は全体を真っ黒に塗ったものだったのだという。ギャラリー中央には、大きな石が置かれ、凹みに墨汁が張られている。その水面に浮かぶ白い布をスクリーンにして、筆が線を描く映像が映し出されていた。庭園のような設えの美しい空間なのだが、アーティストは日本人ではないだろうとピンとくる来場者も多かったと聞いた。木を墨で塗るという感覚が相容れない感覚なのだ。しかし、会期中のそれぞれの時間のうつろいを示していた小さな桜は、花を咲かせているものも散ってしまったものもじつに可憐だった。作家とはメールなどでやり取りをし、すべての展示はギャラリーのオーナー熊谷さんが手がけたのだという。開廊以来、さまざまな作品を紹介し、多くの作家を世に送り出してきた小さなギャラリーの歴史を如実に物語るような展覧会でもあった。

2011/04/16(土)(酒井千穂)