artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

山田郁予 展「絶対、一生、金輪際」

会期:2011/03/30~2011/04/30

Mizuma Action[東京都]

「こっち見んな」というフレーズが記憶に新しい、山田郁予の新作展。高橋コレクションでの個展「いいわけ」(2009)と同様、トレーシングペーパーを張り合わせた巨大な画面にパステルなどで少女を描いた平面作品を展示した。触れた瞬間に一気に崩壊するような、脆くも儚い感性が大きな特徴であることに変わりはない。ただ、今回の目玉は山田自身が出演した映像作品。いわゆる「自作自演」の短編映像をあわせて1時間にも及ぶ作品に編集した。ラジオ番組のDJやアイドルのイメージビデオなどの設定を借りて演出された映像に一貫していたのは、山田自身がみずからの美しさを大々的に画面に露出させたこと。ともすれば大きな反感を買いかねないことは重々承知しているのだろうが、伝家の宝刀を抜いた心意気は潔い。自己隠蔽と自己露出の矛盾を突き詰めるコンセプトも明快だ。しかしその反面、細部の綻びが気にならないわけではなかった。映像作品の出来不出来に極端なバラつきがあるばかりか、全体の尺も長すぎで、音声もやたら聞き取りにくい。壁一面に張り出された箴言のような言葉の数々が卓越した言語感覚を実証していただけに、映像の稚拙さが際立っていたのかもしれない。あるいは、このように他者をあえて遠ざけることによって、今回の自己露出に見合う程度に「こっち見んな」というメッセージを強調しようとしたとも考えられる。だがしかし、みずからのヴィジュアル・イメージを見せることを決断した以上、いまさら孤絶感を担保することは、文字どおり中途半端な「いいわけ」という印象を与えかねない。東村アキ子のマンガ『主に泣いてます』が鋭く描き出しているように、美人の悲喜劇は固く閉ざされた殻を打ち破り、さまざまな人間関係に翻弄されるようになってはじめて語られるものだからだ。

2011/04/12(火)(福住廉)

小谷真輔「無重力サーキット」

会期:2011/04/12~2011/05/07

MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w[京都府]

自身の内面に宿る妄想的世界を描いてきた小谷だが、元々は映像作品でキャリアをスタートさせたのだという。ということは、映像とインスタレーションと絵画をミックスした本展の構成は、彼にとってバック・トゥ・ルーツ的な意味合いがあるのかもしれない。映像は、カラフルな影絵のような作品と、飼い猫を撮った2点。その周囲に映像の世界から抜け出してきたようなインスタレーションが施され、壁面には絵画が展示されている。室内の照明は落とされており、絵画は備え付けのペンライトを使って見ることになる。また、ペンライトでインスタレーションを照らすと映像作品と相似のシチュエーションを再現することもできる。ある意味、本展は、彼の絵画世界を3次元に拡張したものと言える。身体ごと作家の脳内にダイブしたような気分になれる、ユニークな個展だった。

2011/04/12(火)(小吹隆文)

河合晋平博物館

会期:2011/04/06~2011/04/12

大阪タカシマヤギャラリーNEXT[大阪府]

スプーン、ロールパン、ゴムチューブ、プッシュピン、電球など、その制作環境や身の周りにあるさまざまなものを進化する生命体に見立て、作品化して発表している河合晋平。百貨店内のギャラリーという、いつもとは異なる雰囲気の空間で個展が開催された。近年の個展では毎回展示されている、河合のこれまでの発表作品の歴史をひとつに纏めた《存在物体系系統樹》は、まるで自然科学系の博物館にある解説年表のようで面白いが、初期から最新作までが並んだ今展は、空間そのものがまさに博物館の展示室のように設えられていて、作家の世界観や作品のユニークな魅力がいっそう際立っていた。作品の細部を備え付けられた10数センチのルーペで覗き見るコーナーや、店のディスプレーさながらに美しく作品を陳列した壁面など、展示の工夫がすごいこともさることながら、電子部品も虫ピンも、作品化されたそれらがアクセサリーか装飾品の類いに見えてくるのも面白い。デパートの買い物客だろうか、初老の夫婦(?)が作品に顔を近づけて「奇麗やねえ、細かいねえ」と熱心に見ていたのが印象的だった。


河合晋平博物館、会場風景

2011/04/11(月)(酒井千穂)

没後150年 歌川国芳 展

会期:2011/04/12~2011/06/05

大阪市立美術館[大阪府]

没後150年を記念し、420点が揃う大展覧会ということで、さすがに見応えがあった。過去の国芳展ではさほど大きく扱われてこなかった美人画も十分な点数があったし、初公開作品、版下、同じ版を流用した作品など珍しいものも沢山見られた。また作品のコンディションが良好なのも満足度を高めた。しかし、残念な点がひとつある。点数が多いため、一度にすべてを展示できず、前半と後半でほとんどの作品が入れ替えられるのだ。熱心なファンなら二度通うのも構わないだろうが、一般的にはどうだろう。二度行けば大人で計2,600円という、美術展としては高額な出費になってしまう。今後大規模な展示替えを行なう展覧会の主催者は、チケットの半券を提示すれば2度目は半額になるとか、あらかじめ2枚綴りの割引チケットを発売するなどのサービスを是非検討してほしい。

2011/04/11(月)(小吹隆文)

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瓜生祐子 展

会期:2011/03/29~2011/04/17

neutron kyoto[京都府]

淡色系のやわらかい画面の印象と、鉛筆で描かれた細やかな輪郭線にただでさえ目が誘い込まれるのだが、私が女だからなおさらだろうか。ケーキやクリームあんみつといった食べ物のモチーフをのどかな山里や山脈の風景に見立てた作品世界がそれに輪をかけて気持ちをくすぐり、ついつい長いあいだ画面を凝視してしまう。アクリル絵の具でキャンバスにイメージを描いた上に綿布を貼り、それから鉛筆で線を描いているという画面の色彩は一見、染めもののような趣きもある。円形や四角形のキャンバスはそれぞれが食べ物を盛りつける器に見立てられていて、かわいらしくもあるのだが、ただそれだけではなく、甘い香りや食べ物が焼けるときの香ばしい匂いなど、食欲を刺激する嗅覚の記憶をも連鎖的に誘発する要素になっていた。

2011/04/10(日)(酒井千穂)