artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
梅田哲也 個展『はじめは動いていた』

会期:2011/04/02~2011/04/24
VOXビル(art project room ART ZONE)[京都府]
ありふれた道具や雑貨を組み合わせて、可動型のオブジェを制作する梅田哲也。しかも彼の作品は、「風が吹けば桶屋が儲かる」的にひとつの動きが他に次々と波及する点に特徴がある。そういう意味では、ビル一棟を使って大規模な仕掛けを行なうのは、彼ならではの試みと言えるだろう。実際、迷路のような空間を縦横に行き来するのは楽しい体験だった。ただ、作品の連動性という点では少々不満も。全体にもっと有機的な統一性を持たせることができれば、さらにワンランク上の感動を与えられただろうに。
2011/04/05(火)(小吹隆文)
安喜万佐子 展 Absence of Light──歩行と逆光

会期:2011/04/05~2011/04/16
ギャラリー16[京都府]
瞼を閉じて暗闇を見つめると、不可思議な光や模様が眼前に映る。見ようとすればするほど捉え難いその情景。安喜万佐子の作品を見ていると、そんな体験を思い出さずにいられない。基本的に風景をもとに描いている安喜だが、彼女の狙いは再現的な情景描写ではない。記憶と現実を往来し、残像とでもいうべきものをなんとかして画面に定着させようと格闘しているのだ。近年は金箔を用いてソラリゼーションのような効果を狙った作品も発表。着実に自己の世界を深化させている。
2011/04/05(火)(小吹隆文)
「20世紀日本建築・美術の名品はどこにある?」第19回アート・スタディーズ

会期:2011/04/04
INAX:GINZA 8階セミナールーム[東京都]
アート・スタディーズとは、彦坂尚嘉の声がけにより、2004年にスタートし、建築と美術の20世紀を振り返るべく、5年ごとに区切り、全20回が企画された連続シンポジウムである。本当に完結するのかと思われていたが、いよいよ第19回を迎え、ついに8年目に突入した。とりあげる時代は、1975年~1984年。美術は「前衛の終焉から保守への回帰」、建築は「都市住宅の時代」をテーマとし、編集者の植田実と安藤忠雄事務所出身の建築家、新堀学が住吉の長屋について語る。植田は、当時の建築家の住宅作品が理念的かつ自閉的になったことを指摘し、新堀はヴォイドのデザインの系譜から位置づけた。筆者は、住吉の長屋を見学した経験をもつが、想像以上に小さい空間であり、理念的な幾何学形態ながら、身体に親密なスケール感をもっていることに驚かされた。
2011/04/04(月)(五十嵐太郎)
浅見貴子 展──光合成

会期:2011/03/18~2011/04/10
アートフロントギャラリー[東京都]
雲肌麻紙に描いた水墨画。画面いっぱいにサイズも濃淡も異なる点々がうがたれ、その間を枝のように細い線が走っている。一見植物のように見えるが、表現主義的な抽象と見てもいい。これって、今年初めの「『日本画』の前衛」展にも出ていた船田玉樹の絵に似ているなあ。そういえば船田もアートフロントのバックアップで再評価された画家だし。でも似ているのは表面だけで、文字どおり裏面が決定的に異なっている。雲肌麻紙に表裏があるのかどうか知らないけれど、浅見は紙の裏側に描き、墨が染み出た表を見せるというのだ。つまり描いてるときは完成作とは左右逆になってるわけ。時間軸でいうと、ふつうの絵とは逆に、初めに描いた部分が画面の手前に見え、後で塗り重ねた部分は背後に隠れることになる。とくに油絵だと絵具を徐々に塗り重ねて完成させていくので、表に現われるのは最後の筆跡ということになり、このように表裏逆転した絵というのは想像がつかない。大げさにいうと、過去の光ほど遠ざかって見える相対性理論を思い出させる。あ、ここでは過去の筆跡ほど手前に見えるから逆だ。ともあれなにか創造の原点に触れるような試み。
2011/04/04(月)(村田真)



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