artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
鹿島茂コレクション1 グランヴィル──19世紀フランス幻想版画展

会期:2011/02/23~2011/04/10
練馬区立美術館[東京都]
仏文学者の鹿島茂のコレクションを紹介する企画展。フランスの幻想版画家、グランヴィルによる挿絵がまとめて展示された。石版画の多くは世情を風刺したもので、動物を擬人化した図像によって、その風刺の力を効果的に引き立てていた。《大自由狩り》(1832)という石版画は、下半身は人間だが、上半身は「LIBERTE」というそれぞれのアルファベットに化した生き物を、軍隊がライフル銃や大砲で狙い撃ちにする光景を描いたもの。社会風刺の伝統を忘れつつある日本のクリエイターにとっては、見習うところが多い作品である。
2011/04/10(日)(福住廉)
新野洋 展「いきとし“いきもの”」

会期:2011/04/09~2011/05/07
YOD Gallery[大阪府]
新野は、自宅近辺の山中で四季の植物を採集し、それらからインスパイアされた架空の昆虫を制作している。植物から型を取り、成形したシリコンを組み合わせた作品は、まるで植物の精のよう。今までに見たどの作品とも似ておらず、まったく新たな体験に軽い興奮を覚えた。また、採集した植物を春夏秋冬に分類し、そのなかに擬態のように作品を紛れ込ませる展示方法も秀逸だった。四季の移ろいに合わせて制作されるため、点数が限られるのが難点だが、それを補って余りある魅力的な作品だった。
2011/04/09(土)(小吹隆文)
鍾局──生きることの枠で/西村のんき──のんきの戒壇めぐり

会期:2011/03/28~2011/04/02
Gallery AMI & KANOKO[大阪府]
自分をカボチャだと思う画家。闇の中で光と戯れ、光の中で闇と戯れ、私たちは自由に次元を飛び越え、宇宙を知るというアーティスト。日本と韓国を行き来する二人の作家の展覧会だ。韓国の作家・ 鍾局は《カボチャ》と題された絵画連作8点を出品、西村のんきは《のんきの戒壇めぐり》というインスタレーションを展示していた。木炭の黒で縁取られた白いカボチャ。ごつごつしていて、存在感を放つ。西村の作品は、6畳の和室いっぱいに二重に張り合わせた紙で迷路をつくったもの。その迷路(紙)には蓮や蛙、龍などが描かれている。それぞれの作品も興味深かったが、とくに面白かったのはギャラリーを訪ねた日に行なわれていた「評論を書くことを考えてみる。」会(共催:大阪大学文学部美学研究室)。展覧会の作品を実際に見て、評論文を書き、それを作家のまえで発表する。物書きにとっては冷や汗が出る作業だろうし、作家たちも同じ思いかもしれない。2人の作家と4人の発表者、多くの聴衆による白熱した議論は4時間も続いた。もちろん決まった答えはない。つくることと見ること、そして伝えること。おのおのの思いはどこまで共有でき、どこまで共有すべきだろうか。[金相美]
2011/04/09(土)(SYNK)
田中偉一郎 個展「平和趣味」

会期:2011/03/05~2011/04/16
田中偉一郎の新作展。ブランコを勝手に組み換える《公園革命》シリーズや、民芸品をもとにした《民芸ロボ》シリーズなど、田中の偉才を遺憾なく発揮した、(いい意味で)くだらない作品ばかりで、安易に社会性やメッセージ性へと偏らない潔さもすばらしい。なかでも秀逸だったのが、《ラジオ体操アドリブ》。公園で行なわれているラジオ体操に紛れ込み、周囲と同じように音楽に合わせながらも、滅茶苦茶な身体運動をアドリブで披露した映像作品だ。身体動作をラジオ体操と同一化させないことを命題としつつも、時折垣間見せるシンクロの瞬間や、わずかな躊躇によって一瞬生まれる変な間が、なんともおかしい。
2011/04/07(木)(福住廉)
大久保潤「ちょっと訪ねたカンボジア」

会期:2011/04/01~2011/04/30
Green Caf[東京都]
珍しい展覧会を見た。大久保潤は1970年生まれ。1997年より横浜市港北区の社会福祉法人かれんに属して、主に絵画作品を発表してきた。ところが彼は写真にも強い興味をもち、18年もの間24枚取りのフィルムを週に1本のペースで撮影し続けてきたという。概算すると900本以上、2万2千カット余りの写真というわけで、この量だけでも尋常ではない。それに加えて彼のスナップ写真はのびやかさと集中力をあわせ持っており、被写体の配置もうまく決まっていてなかなか魅力的だ。普通は知的障害者のアート作品(アウトサイダー・アート、あるいはアール・ブリュット)というと、絵画を思い浮かべることが多いので、写真というのは意外な盲点なのではないだろうか。おそらく、絵画や版画と同じように、写真においても優れた才能を持つ者がたくさんいるはずだ。今回の展示を見てそんなふうに強く思った。
今回は1998年に家族とともに訪れたカンボジアへの旅を題材としている。写真の特徴としては、自分の反射像や影を取り込んだ作品が多いこと、被写体を画面全体にバランスよく散りばめていること、日付を必ず入れていることなどが挙げられる。ともかく、気持ちのよいエネルギーの波動が伝わってくるチャーミングな写真が多い。今回は14点とやや数が少なかったが、もっとたくさんの写真を一度に展示できるような機会があればとても面白いと思う。ただし、古い写真はネガごと捨てられてしまったそうだ。残っているものだけでも、もっと彼の写真を見てみたいと感じさせる展覧会だった。
2011/04/06(水)(飯沢耕太郎)


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