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美術に関するレビュー/プレビュー

画家たちの二十歳の原点

会期:2011/04/16~2011/06/12

平塚市美術館[神奈川県]

日本近現代の画家たちが二十歳前後に描いた絵画を集めた展覧会。黒田清輝をはじめ青木繁、草間彌生、石田徹也など54人が油彩画を中心に発表した。誰もが若かりし日の日記を読み返すことを躊躇するように、二十歳の感性とはおおむね「無知と恥」と同義である。しかし日記とちがって、どうやら絵画の場合はそうでもないらしいことに、本展を見てはじめて気づかされた。村山槐多の《尿する裸僧》は、手をあせて拝みながら立ちションする裸僧を描いているが、おどろおどろしい色彩も相俟って、パンク的な暴力性を先取りしているように見えるし、会田誠や山口晃は青春期の反骨精神を、かたちを変えながらも、それぞれ今も持続させていることがよくわかる。とりわけ注目したのは、森村泰昌。鮮やかな青色を中心に構成された平面作品は、色彩とかたちによって対象を分解しながら再構成した立派な抽象画で、現在の著名人や芸術家に扮するポートレイトの作品とは似ても似つかない。これをあえて見せてくるところに、「青い時代」をためらうことなく振り返ることのできる芸術家の強さがある。もしかしたら、この強靭な精神こそ、芸術家の条件なのかもしれない。

2011/04/20(水)(福住廉)

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海沼武史「八人の王が眠りに就く処」

会期:2011/04/07~2011/04/30

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

作家本人のプロデュースで会期中に「アイヌ音楽ライブコンサート」が開催されるということもあり、写真を見て最初は北海道の風景なのかと思った。そこに写っている、ゆったりとした丘陵地帯のたたずまいが、いかにもそれらしく感じたのだ。だが、聞けば撮影場所は海沼武史が住む八王子周辺だという。それで、この不思議な響きのタイトルの意味もわかった。「八人の王」というのは八王子から来ていたのだ。
その「八人の王」=八王子は、いま眠りに就こうとしている。太陽が沈み、黄昏時の紫がかった大気があたりを包み込み、家々の明かりが点灯され、空には星が瞬きはじめる。その移り行く時間を細やかに定着した写真群を眺めていると、そこに写っているのが現在の都市化された八王子ではなく、いわば太古の昔の風景であるように感じる。起伏のある地形が、より剥き出しのままあらわにされているようなその眺めは、安らぎとともにどこか怖さも感じさせるものだ。海沼がもくろんでいるのは、そんな始源的な風景のあり方を、黄昏時の光の魔術的な効果を利用しつつ、丁寧に写しとっていくことなのだろう。
1962年生まれの海沼は1996年に渡米し、帰国までの9年間、ニューヨークを中心にスピリチュアルな風景写真を発表してきた。その緻密な観察力、広がりを持つ作品の構想力が、いま大きく開花しつつある。

2011/04/20(水)(飯沢耕太郎)

プレビュー:没後100年 青木繁 展──よみがえる神話と芸術

会期:2011/05/27~2011/07/10

京都国立近代美術館[京都府]

青木繁といえば《海の幸》や《わだつみのいろこの宮》などの傑作が思い浮かぶ。しかし、彼の作品をまとめて見た機会はない。そもそも展覧会が滅多に行なわれない彼の、なんと39年ぶりの回顧展が関西にやって来る。青木の展覧会が関西で行なわれるのは初めてではなかろうか。伝説的なエピソードに彩られ、実像がよく分からなかった作家の真価を知る絶好の機会である。今回を見逃すと次は何十年後になるか分からないので、しっかりと目に焼き付けておくつもりだ。

2011/04/20(水)(小吹隆文)

プレビュー:THE OSAKAN DREAMS

会期:2011/05/04~2011/05/17

JR大阪三越伊勢丹6F「アート解放区」、同3F「DMO ARTS」[大阪府]

4つの百貨店が相次いで開業、リニューアルオープンし、経済誌等で「百貨店戦争」などと喧伝されているJR大阪駅周辺。その一角として5月4日にオープンするJR大阪三越伊勢丹には、百貨店の美術画廊とは別に「DMO ARTS」という画廊がオープンする。ここは大阪のラジオ局、FM802が主宰するアートプロジェクト「digmeout」が運営する店舗で、今まで同プロジェクトが発掘してきた作家の展覧会を行なうほか、同一サイズのエディション作品を9,800円均一で販売する「My First Art」など、既存の画廊ビジネスとは異なる展開が予定されている。果たして新規のマーケット開拓は成功するのか!? 5月以降「DMO ARTS」の動向に大きな関心が注がれるのは間違いないだろう。初回の展覧会は「THE OSAKAN DREAMS」。大阪市内の4画廊との共同開催で、若手9作家を紹介する。

2011/04/20(水)(小吹隆文)

プレビュー:森口ゆたか あなたの心に手をさしのべて

会期:2011/04/29~2011/06/26

徳島県立近代美術館[徳島県]

人と人との触れ合い、愛情の交感をストレートに表わした映像インスタレーションで高い評価を受けている森口ゆたか。以前はオブジェや映像、鏡を組み合わせて存在の不確かさを表現していたが、1998年から約2年滞在した英国で目にしたホスピタル・アートに衝撃を受ける。帰国後は日本でホスピタル・アートを広めるNPO活動を行なう傍ら、自身の新たな作風を深めてきた。本展では、《TOUCH》《LINK》《光の刻》などの近作をまとめて展覧。寛容な慈愛の精神を喚起する作品は、きっと多くの人の心を揺さぶることだろう。

2011/04/20(水)(小吹隆文)

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