artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
豊富春菜 展 drops

会期:2011/02/05~2011/03/05
ギャラリーノマル[大阪府]
約7年ぶりの個展となった本展。以前の作品は、写真に大胆なトリミングやコラージュを施すことでイメージの意味を解体するものだったが、新作は、階調を粗くした写真をトレースし、線に沿って樹脂を垂らした平面作品へと変化を遂げていた。半透明の樹脂がつくり出す光に満ちた世界は、たいへん美しい。特に、樹木をモチーフにした2点の大作に魅了された。アートフェアなど多数の目に触れる機会を得れば、たちまち注目を集めるのではなかろうか。今後の活動ペースにもよるが、大きな飛躍が期待できる。
2011/02/05(土)(小吹隆文)
八木マリヨ展 縄の森をくぐりぬけると…

会期:2011/01/14~2011/03/10
GALLERY A4[東京都]
会場にあるのは、縄である。八木マリヨは徹底して縄の作品を制作するアーティストで、巨大な縄を空間に配置したインスタレーションにしろ、観客参加型のプロジェクトにしろ、表現形式は異なるものの、主題が縄から離れることはない。縄といえば自然環境や原始社会、あるいは縄文的なものを連想するが、八木の作品には岡本太郎のそれ以上に縄文的なものが強く立ち現われているように見える。太郎の縄文論は思想としては強かったが、それが必ずしも作品と対応していなかったところが弱みである。大衆的な人気とは裏腹に、太郎の絵画はまったくチンケでつまらない。けれども、作品がダメだからといって思想も退ける必要はない。太郎の縄文論をマリヨの作品で甦らせてしまえばよいのだ。これからの時代を生き抜くヒントがあるとすれば、それは太郎を再び呼び出して消費することにあるのではなく、そうした、ある意味で節操のない異種混交にあるのではないか。
2011/02/04(金)(福住廉)
「日本画」の前衛 1938-1949

会期:2011/01/08~2011/02/13
東京国立近代美術館[東京都]
前衛とは何か? 平たく言えば、それはジタバタすることではなかったか。1938年の歴程美術協会から1949年のパンリアルまで、日本画の前衛を集めた展覧会で、思い至ったのはこの点だ。丸木位里や山岡良文、船田玉樹などによる日本画は、花鳥風月に終始する日本画とは対照的に、シュルレアリスムの要素を取り入れたり、構成主義的だったり、たしかに前衛的には見える。けれども、しょせん「日本画」や「美術」という既成の枠内で標榜された前衛だったことを思えば、その実態はたかが知れているし、肝心の絵も、前衛的ではあっても、それ以上でも以下でもない代物が多い。そうしたなか、唯一眼を惹いたのは、山崎隆。戦時中の茫漠とした大陸の地平線を描いた大作から構成主義的な画面まで、その画業は幅広く、戦後になるとさらにシュルレアリスムに展開していく。手広く器用に手がけたと思えなくもないが、右往左往して何かをまさぐり続けているようにも見える。唯一無二の画風を確立してよしとするのではなく、たえず自己否定を繰り返しながら前進していく、まことの前衛の姿を見たような気がした。
2011/02/04(金)(福住廉)
松田啓佑 個展 WORDS LIE II

会期:2011/02/04~2011/02/27
eN arts[京都府]
私が松田の作品を知ったのは、2009年の「京都市立芸術大学作品展」だった。その時の正直な感想は“巨大なウンコ”。今までの批評軸が通用しない別世界から現われたかのような作品を前に、ただただ当惑したことを覚えている。2年ぶりに見た彼の作品は、相変わらず強烈だった。それは何かと問われても、今の私には答えるすべがない。しかし、作品が放つ野太い存在感が代替不可能なものであることだけは確かである。
2011/02/04(金)(小吹隆文)
吉田友幸/絵画

会期:2011/02/01~2011/02/06
アートスペース東山[京都府]
主に花や果実を描いた静物画の小品を出品。画面には何度も削ったり擦ったりした痕跡があり、その古びた表情が主題の存在感を一層際立たせている。特殊な手法を用いていないのに作品から目が離せないのは、高い描写力と背景の効果が絶妙にマッチしているからであろう。作者は高校卒業とともに海外に渡り自己流で研鑽を積んだと聞く。今までまったくノーマークだったが、今後は注視したい。
2011/02/04(金)(小吹隆文)


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