artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

横山裕一 展

hitoto[大阪府]

会期:2011/02/01~2011/02/14・19・20・26・27

イラスト、挿絵、漫画などで活躍する横山裕一のことは一応知っていたが、あくまで漫画をチラ見する程度。また、当方は関西在住なので先日終了した川崎市民ミュージアムでの個展やその評判も詳しく知らなかった。そんな状態で横山が大阪で個展を行なっていることを知り、とにかく実物を見ようと出かけた次第。展示していたのは、主に顔を描いたドローイング30数点だった。その特異なセンスは確かに窺い知れたが、私としては彩色したペインタリーな作品よりも、線だけで構成された作品に興味がある。もし次回があるなら、線画中心のセレクトをお願いしたい。

2011/02/08(火)(小吹隆文)

平成22年度(第14回)文化庁メディア芸術祭

会期:2011/02/02~2011/02/13

国立新美術館[東京都]

デジタル技術が映像文化を著しく成長させている一方、私たちの感性は依然としてアナクロニズムにとどまっているのではないだろうか。映像は日進月歩で進歩するが、それを映す眼球が追いつけないといってもいい。テクノロジーの進歩によって身体感覚を思いのままに拡張させることが容易になった反面、かえって肉体の物質性が際立ち、その不自由なリアリティの求心力が強まるという逆説。現在の映像表現が直面しているのは、このパラドクスにほかならない。今回のメディア芸術祭でいえば、Google earthやインターネットの情報セキュリティを主題とした作品がおもしろくないわけでないが、どうも理屈が先行している印象が否めず、眼で楽しむことができない。むしろ、素直に楽しめるのはサカナクションのミュージック・ビデオ《アルクアラウンド》。関和亮監督によるワンカメラ・ワンカットで撮影された映像は、CGを一切用いることない愚直なアナクロニズムに徹しているが、楽曲の進行にあわせて移動する画面に歌詞を視覚化したタイポグラフィーが次々と現れる仕掛けがたいへん小気味よい。ある一点によってはじめて文字が成立して見えるという点では、ジョルジュ・ルースを動画に発展させた作品といえるかもしれない。

2011/02/07(月)(福住廉)

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チャンキー松本 おいてけぼりの町

会期:2011/02/07~2011/02/20

ギャラリー月夜と少年[大阪府]

彼が近年精力的に取り組んできた貼り絵のシリーズを中心に、ドローイング作品も併せて出品。貼り絵は手でラフに裂いた紙を貼り付けたもので、水平線を強調した風景画が多い。絵柄は作者の心象を反映しており、メランコリックな風合いが持ち味だ。また、作品は1点ずつポートフォリオ仕立てになっており、観客は作品を手に取り、一対一で向き合うことになる。それはまるで作家の独白を聞いているような感覚で、額装された作品を見るのとは全然違う濃密な体験だった。この展示方法こそが本展のキモである。

2011/02/07(月)(小吹隆文)

松岡徹 展「旅する島──京都編」

会期:2011/01/12~2011/02/06

京都造形芸術大学芸術館/GALLERY RAKU[京都府]

今展には「キオクダマ」という人々の記憶のつまった玉を内包する島と、その島を探し求める旅人という物語の設定があり、旅人が描いた絵や、島の地図、放浪しながら蒐集したという“コレクション”などが展示されていた。“京都編”はこの会場がある瓜生山が物語の舞台になっていて、古びた雰囲気の瓜生山の地図や風景のドローイングには、そこに生息する架空の生き物や「キオクダマ」が描かれている。ここに登場するキャラクターは立体作品でも展示されているのだが、《守人 阿(モリビト ア)》、《守人 吽(モリビト ウン)》をはじめ、その容姿がとにかくどれもユーモラスだ。一気にその物語世界に引き込まれる。会場にはこの島で使われていた(という設定の)お面も展示されていたのだが、お面をかぶって少し恥ずかしそうに記念撮影をしていた学生らしき若い女性たちの楽し気な様子も微笑ましかった。また、ギャラリーに隣接する、縄文土器などの考古資料が常設展示されている「芸術館」にも、まぎれこむように不思議な生き物が潜んでいたのが面白い。作家の自由な想像力とともに鑑賞者を魅了するその展示力も思い知る。最終日だったが見ることができてよかった。

2011/02/06(日)(酒井千穂)

カントリーエレベーター──三野優子 写真展

会期:2011/02/01~2011/02/06

アートスペース虹[京都府]

田んぼが続く道を走っていると、ときどき見かける巨大なサイロ(?)。それが稲刈り後の“もみ”を乾燥させて保管貯蔵する施設であるのは知っていたのだが、のどかな風景のなかにそびえ立ち、やや違和感を覚えるその建物が「カントリーエレベーター」という名だとは、恥ずかしいがここで初めて知った。その外観や施設内部、機械の一部を写した写真は「ありのままの様子をできるだけ淡々と取りたかった」と本人が言うように、ただ記録として撮影したものや教材写真のように素っ気なく、テクニックもまだまだ勉強中という印象。そのため、写真自体に魅了されるようなポイントを見つけることは難しいのだが、赤い屋根の小屋(?)が巨大なサイロの上にポンと載っているその異様な外観や、サイロに記されたコマーシャルの書体がかわいらしく興味をもったと話す三野の、最初の違和感やその風景を発見した喜びがなんだか初々しく新鮮で、「カントリーエレベーター」とともに印象に残った。

2011/02/06(日)(酒井千穂)