artscapeレビュー

増山士郎 展 Intervention

2010年08月01日号

会期:2010/06/12~2010/07/19

市原市水と彫刻の丘[千葉県]

昨年の第1回所沢ビエンナーレで話題を集めた増山士郎の個展。展覧会の会場で寝泊りしながらアルバイトに出かけていく様子を見せた《アーティスト難民》(2009年)のほか、展覧会のオープニングに訪れた客を個室化したカウンターでもてなす《Parky Party》(2010年)、警察による違法駐車取締りから車を守る《合法駐車》(2000年)、灰皿が設置されていない渋谷駅のモヤイ像前に球体状の剣山を置いてシケモクを生ける灰皿として機能させた《生けモク》など、増山の代表的な作品やプロジェクトを振り返る構成だ。新作《crossing the border》は、オランダのスキポール空港内で輪ゴムをセキュリティ・チェックを通過することなく飛ばすパフォーマンスを記録した映像作品。クリアボックスにうやうやしく収納された輪ゴムがなんともおかしい。全体的には、社会に批判的に介入する増山の真骨頂が表わされていた展示だったように思う。しかし、この会場は千葉の山奥の湖畔に立てられた美術館。文字どおり人里離れた美術館で見せられる社会介入型のアートに違和感を覚えたのも事実だ。もちろん田舎が社会ではないというわけではないが、社会に介入する増山の作品の魅力を最大限に引き出すのであれば、むしろ都心の美術館のほうがふさわしい。何より増山が介入する現場はつねに都市のど真ん中にあるのだから。ぜひとも都市型の美術館に巡回してほしい。

2010/07/17(土)(福住廉)

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