artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
やなぎみわ「Lullaby」

会期:2010/01/29~2010/03/21
RAT HOLE GALLERY[東京都]
やなぎみわの新作は、お馴染みの少女と老婆をテーマとする仮面劇の映像作品。縮尺が微妙に狂った暖炉のある部屋の中で、黒い小さな老婆が、白い大きな少女に膝枕をしてあやしながら、子守唄を唄っている。そのうち不意に少女が目覚め、激しい格闘が始まり、老婆はねじ伏せられる。そうすると、今度は少女が老婆を優しくあやしながら子守唄を唄いだす。そういう短いストーリーが何度かくり返され、そのたびに老婆と少女の立場は逆転することになる。
話そのものは単純だが、フォークロアによくある繰り返しの効果がうまく使われていて、なかなか面白かった。何よりもよかったのは「笑える」ことで、これはやなぎの新境地といえるのではないだろうか。二人の格闘シーンがかなりリアルで、静かな子守唄の場面との落差が笑いを呼ぶのだ。最後に今まで老婆と少女がいた居心地のよさそうな部屋の壁が崩れ落ちて、彼女たちが吹きっさらしの都会のビルの屋上にいたのがわかる。このあたりの展開も、鮮やかに決まっていた。神話の中に日常が紛れ込む方向性が見えてきたのが収穫といえそうだ。入口のパートに旧作が数点かかっているだけで、あとは映像を淡々と上映するだけの会場構成はすっきりして悪くないのだが、もう一工夫あってよかったかもしれない。
2010/02/06(土)(飯沢耕太郎)
mariane 食べる eat

会期:2010/01/23~2010/02/20
studio J[大阪府]
薄茶色に焼けた古い和紙の上に、動植物や微生物らしき有機的フォルムを描くmariane。画材はアクリルガッシュと胡粉で、日本画出身ではないが、作品から漂う雰囲気はどことなく和テイストだ。しかも濃密なエロティシズムが滲み出ている。女性でここまでエロい作品を描く人は珍しいのではないか。彼女はブラジル生まれで、日本とシンガポールを行き来して育った。作品が醸し出す独特の雰囲気は、その出自と関係があるのかもしれない。なお、今回は「食べる」がテーマだったので、作品にはすべて食関連のタイトルがついてていた。
2010/02/06(土)(小吹隆文)
MOTアニュアル2010:装飾

会期:2010/02/06~2010/04/11
東京都現代美術館[東京都]
工芸館の「装飾の力」が終わったと思ったら「MOTアニュアル」でも「装飾」がテーマだという。両展に重なってるのは青木克世ただひとりで、工芸館でも見かけた作品があった。引っぱりダコってやつ? 引っぱるだけでなく買ったげなさい。ほかに、大きな紙を細かく切り抜いていく塩保朋子、超絶技巧で網の目のような木彫をつくる森淳一、床に塩で迷路状のパターンを描く山本基など、装飾というよりどっちかというと偏執狂的な作品が多い。
2010/02/05(金)(村田真)
サイバーアーツジャパン──アルスエレクトロニカの30年

会期:2010/02/02~2010/03/22
東京都現代美術館[東京都]
なんだろう、一見にぎやかそうなのにこの寒々とした空気は。ちょうど、近未来を予測したかのような大阪万博が30年後に回顧されたときに感じた切ない気分、に近いかもしれない。10分で出た。
2010/02/05(金)(村田真)
レベッカ・ホルン展

会期:2009/10/31~2010/02/14
東京都現代美術館[東京都]
なんか懐かしいなあレベッカ・ホルン。なんでいまごろ東京で個展をやるのかわからないけど、動く作品を見て思ったのは、動きや形態がカニやウミユリみたいな水中生物に似ていること。墨をかけるところはイカみたいだし。映画『エイリアン』と通じる世界。
2010/02/05(金)(村田真)


![DNP Museum Information Japanartscape[アートスケープ] since 1995 Run by DNP Art Communications](/archive/common/image/head_logo_sp.gif)