artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
ロバート・プラット“TALES FROM THE LIMEN”

会期:2010/02/05~2010/02/28
eN arts[京都府]
ロバート・プラットは森と狩人を軸に、自然と文明の対比や、見つめる側と見つめられる側の関係などを織り込んだ絵画作品を発表している。まるで織物のような細かなテクスチャーが特徴で、そのなかにデジタル画像のバグを思わせるスペクトルのような色帯も混入されている。近年は壁面にヨーロッパ中世の古書から引用した挿絵の一部を描くようになり、作品の構造が一層複雑化しているようだ。私はまだ彼の作品をつかめたとは言い難い状態なのだが、その多面性はやはり魅力的で、何とか自分流の解釈を見つけたいと思っていた。ところが、彼は留学先の京都市立芸大で無事博士号を取得できたため、春には英国に戻るという。じっくり付き合いたい作家だったのでとても残念。帰国しても機会を作って、日本での発表を続けてほしいものだ。
2010/02/05(金)(小吹隆文)
公募京都芸術センター2010

会期:2010/02/05~2010/02/24
京都芸術センター[京都府]
南北二つのギャラリーでの展示プランを募集した本展。今回は映画監督の河瀬直美を審査員に迎え、126件の応募の中から寺島みどりと森川穣のプランが採用された。北ギャラリーを使用した寺島は、空間全体をキャンバスに見立てて巨大な壁画の公開制作を実施。絵ができあがる過程自体を表現として提示した。寺島は直感や身体性を重視するタイプ。幾層も色を塗り重ねながら落とし所を見つけ出すので、公開制作向きの作家と言える。一方、南ギャラリーの森川は、館の床下から掘り出した土や遺棄物を細長いスリット越しに見せるインスタレーションを発表した。ちょうど虫の目線で京都芸術センターのもうひとつの姿を覗き見るような作品で、部屋の壁に一筋の線が引かれただけに見えるミニマルな空間構成もスタイリッシュだった。動と静、二つの対比が際立つ今回の展覧会。河瀬監督の狙いもその辺りにあったのだろう。
2010/02/05(金)(小吹隆文)
高須健市 surface

会期:2010/02/02~2010/02/14
neutron-kyoto[京都府]
展示室の壁面いっぱいに、村上隆とのコラボで知られる某高級ブランドのモノグラムが貼り付けられていた。そして床には大量の紙屑が。漫画や雑誌の断片、折り込みチラシの類だ。それらはいずれも切り抜かれており、モノグラムの素材だということがわかる。たとえ素材が紙くずでも、高級ブランドのシンボルは揺るがないということか。いや逆に、ブランド信仰の虚構性を揶揄しているとも取れる。どう受けとめるかは見るもの次第だが、展示が鮮やかに決まっていたことだけは確かだ。
2010/02/05(金)(小吹隆文)
安楽寺えみ「CHASM(裂け目)」

会期:2010/01/12~2010/02/20
ギャラリーパストレイズ[神奈川県]
なにかの隙間からひとりの女性を見ている構図。われわれは女性が服を脱いで風呂に入る姿を、彼女に気づかれないようにのぞいている。つまり「のぞき写真」。スザンナと老人みたい。でもホンモノの「のぞき写真」なら犯罪もんだが、安楽寺自身がモデルだから「自作自演」のセルフポートレート(+セルフヌード)ですね。そのぶん臨場感は減るが、付加価値は増す。
2010/02/03(水)(村田真)
現代絵画の展望──12人の地平線
会期:2009/12/08~2010/03/22
旧新橋停車場鉄道歴史展示室[東京都]
休館中の東京ステーションギャラリーの企画。堂本尚郎、イケムラレイコ、中村一美、小林正人ら、どういう規準で選んだのかよくわからない顔ぶれ。しかも会場が狭いせいかひとり1点ずつなので、どうにも中途半端感が否めない。
2010/02/03(水)(村田真)


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