artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
プレビュー:太田三郎 新作展「子供の時代」

会期:2010/03/19~2010/04/10
ARTCOUT Gallery[大阪府]
切手をモチーフにした作品で知られる太田三郎が新シリーズを発表。近年の作品は原爆や中国残留孤児など先の大戦にまつわるものが多かったが、新作では「子供」を巡る状況がテーマとなる。ひとつは、ダウン症児を持つ親たちが設立した団体「あひるの会」との交流から生まれた《あひるの子供たち》。もうひとつは児童虐待の新聞報道に基づいて制作された《石の小箱》だ。切実なメッセージが込められた作品になりそうなので、こちらもその心づもりで出かけたい。
2010/02/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:かなもりゆうこ展 物語─トショモノ

会期:2010/03/08~2010/03/27
ギャラリーほそかわ[大阪府]
映像、言葉、オブジェ、ダンスなどさまざまなメディアを駆使して、日常と非日常の狭間にある繊細な世界を紡ぎ出すかなもりゆうこ。新作のインスタレーションは書物と書物を愛する人へのオマージュになるらしい。会場の画廊では、2月初旬からじっくり時間をかけて撮影や設営が行なわれてきた。その出来栄えに今から期待が募る。
2010/02/20(土)(小吹隆文)
InsideOut of Contexts:大山エンリコイサム+荻野竜一/たまむし展:玉田多紀

会期:2010/02/20~2010/03/07
ZAIM[神奈川県]
2日前に年がいもなくムリをして肉離れを起こしてしまい、杖をついてZAIMへ。2展とも審査にかかわった「YOKOHAMA創造界隈ZAIMコンペ」の受賞作品展なので、オープニングに出なければならないのだ。前者は「ポスト・グラフィティ」を掲げる2人展で、歴史的・社会的なコンテキストにのっとった知的なテーマ設定が評価されたが、作品的にはきわめて整然としたタブローに収まり、グラフィティから連想される逸脱感がないのがものたりないといえばものたりない。一方、後者は昨年までカフェとして使っていた中庭に、たまむしならぬ恐竜の化石みたいなものを段ボールで毎日増殖させている。こちらはたくましさとわかりやすさが高ポイント。まったく対照的な2展。
2010/02/19(金)(村田真)
北尾博史 森の部品 元土御門の森

弘道館[京都府]
会期:2010/01/24~2010/01/25、2010/02/11~2010/02/21
瀟洒な住宅が点在する京都御所西側の一角に、「弘道館」という古い邸宅が存在する。見事な建築と苔庭からなり、江戸時代中期には学者の皆川淇園が学問所を開いていたという由緒ある場所だ(ただし、現在の建物は近代以降に建てられた別物)。今は老舗和菓子店「老松」が所有している。同館の新たな活用法として美術展が催された。北尾博司の彫刻が室内外に配置され、同時に同館ゆかりの器や掛軸、屏風なども展示。そして「老松」の菓子職人たちが、展示からインスピレーションを得た創作和菓子を添えている。会期中には茶会も催されたとのこと。なんとも贅沢な、京都でしかあり得ない展覧会。至福の空間に包まれて、しばしの間、時が経つのを忘れた。
2010/02/19(金)(小吹隆文)
小泉明郎 展「A LOVE SUPREME 至上の愛」

会期:2010/02/12~2010/02/28
ギャラリーRAKU[京都府]
小泉明郎はイギリスの美術大学で学び、日本と欧米で映像やパフォーマンス作品を発表しているそうだ。関西では恐らく今回が初個展ではないか。恥ずかしながら私は彼の存在を知らなかった。展示のメインは、初日夜に行われたパフォーマンス《男たちのメロドラマ#3》の映像と舞台装置のインスタレーションで、別室では過去の3作品も上映された。同作品はは三島由紀夫の『金閣寺』を題材にしたものだが、小説の主人公というより三島自身をモデルにしたと思しき登場人物が、切腹すると思いきやマスターベーションを始めたのには驚かされた。濃密な暴力性にたじろぐとともに、右寄りの人たちに見つかったらえらい目に遭うんじゃないかと心配になった。旧作も人の神経を逆なでするまがまがしさが充満しており、《僕の声は、きっとあなたに届いている》は、青年が携帯電話で母を温泉旅行に誘う情景と思いきや、実は企業のカスタマーサポートに向かって一方的に喋っているという不条理なものだった。また《ヒューマン・オペラXXX》は、ある人物から深刻な体験を聞き出すインタビューだが、取材の過程で相手の顔に落書きしたり、訳のわからない道具を持たせたりして徹底的におちょくるというもの。正直見ていて不愉快になったが、その一方で日本人アーティストでここまでニヒルな作風を通す人は珍しいのではないかと感心もした。決して好きとは言い難いのだが、見る者の心にトラウマのような傷を刻む強烈な作品であることは間違いない。
2010/02/19(金)(小吹隆文)


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