artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
大西伸明 展「Chain」

会期:2009/12/19~2010/01/23
ギャラリーノマル[大阪府]
大西伸明の新作展。動物や植物、量産される製品を樹脂で型取った作品や、トレースや版画などの手法による連続、反復という要素を通して、モノのとらえ方をさまざまな意味で揺さぶる作品を発表してきた。そのテーマは一貫しているのだが、今展では映像や音による表現という新たな試みが加わっていた。会場に設置された5台のモニタ画面では、偽物のバナナの中に混じった本物のバナナだけが時間の経過とともに変化していく映像が繰り返し流れていた。氷が溶けていくという別のパターンもあったのだが、これらの映像作品にはあまり興味を持てなかった。私自身が想像しなくても、そこで起こっている時間の経過、物質の変化の過程が「自動的」に見せられるという印象が強かったからかもしれない。だが一方で、音の作品は面白い。壁面に設置されたスピーカーから鳥がチュピチュピとさえずる音が延々と聞こえてくる。音を聞いた瞬間から鳥のイメージは浮かぶのだが、実際にはその場にはもちろん鳥はいない。そこで、壁から聞こえてくる鳴き声の反復の空しさを知るのだ。ひとつの存在へ思いを巡らせるセンスはさすがだなあ、と感動したのだが、でも、個人的には本物そっくりの立体作品がやっぱり好きだ。それらにはいつも、想像力をフル回転させてじっくりと見つめなければ味わえない、はかなさが潜んでいるからだ。それは“微妙”という虚実すれすれの存在感であり、大西作品の素敵なところなのだ。
2010/01/15(金)
絵画の庭 ゼロ年代日本の地平から

会期:2010/01/16~2010/04/04
国立国際美術館[大阪府]
1990年代以降の絵画シーンを語るうえで外すことのできない“具象的傾向”を持つ作家たちをまとめて紹介。奈良美智、小林孝亘、O JUN、会田誠ら90年代後半に頭角を現わした世代と、ゼロ年代に登場した若い世代28作家が一堂に会した。また、世代的には異質だが、草間彌生が2004年に描いた未発表の連作絵画も出品された。具象的傾向といっても作品の様相はバラエティに富み、主催者も何らかの結論を打ち出すつもりはないようだ。ここから何を見つけ、どんな主張を導き出すのか。議論のお膳立てをした点に本展の意義はあるのだろう。初日前の記者発表には出品作家のほとんどが来場していたが、30歳前後の若い作家が半数以上を占めていたのではないか。その華やいだ雰囲気を前に「うわー、こんなに若くても国立美術館で発表できるのか」とオヤジ臭い感慨を抱いた筆者(45歳)であった。
2010/01/15(金)(小吹隆文)
俺のモナリザ
会期:2010/01/12~2010/01/15
東京藝術大学学生会館2階展示室[東京都]
上記「デジタル展」の副産物みたいな展覧会。モナリザをモチーフにした新作もあれば、昔描いた彼女(現妻)のポートレートでお茶を濁したり(佐藤教授だ)、まったくモナリザとはほど遠い抽象画を出すやつもいたり。まあ余興みたいなもんですか。余興ついでに、本日の金獅子賞はその抽象(みたいな)伊勢周平に決定。
2010/01/14(木)(村田真)
絹谷幸二「生命の軌跡」

会期:2010/01/05~2010/01/19
東京藝術大学大学美術館[東京都]
退官記念展なので、学生時代の絵から最新作まで出している。立体もあって一見華々しくバラエティに富んでいるが、立体はよく見ると正面性のある書割りだし、絵画は団体展のために制作したらしくほとんどサイズが同じで、なにかうすら寒さを感じる。入口には花輪がいっぱい並んでいた。政治家や画材店のほか、高橋英樹、石井竜也からの花輪も。夜の交遊がうかがい知れる。
2010/01/14(木)(村田真)
まばゆい、がらんどう

会期:2010/01/06~2010/01/20
東京藝術大学大学美術館[東京都]
なんだろうこの展覧会。絵もあれば写真もあるし、インスタレーションもあれば映像もあるし、旧作もあれば新作もある。出品作家は、鷹野隆大、高嶺格、谷山恭子、平野治朗ら7人で、年齢的にはアラフォーか。みんなそこそこ知られているし、作品もそこそこイケてるけれど、飛び抜けたものがない。「まばゆい、がらんどう」というから光がテーマなのかというと、そうでもない。だいたいどういう選択規準でこの顔ぶれになったのかわからない。そんな位置づけからわざとハズレようとしているのかもしれない、不思議な展覧会。
2010/01/14(木)(村田真)


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