artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
大友良英 hyper wr player-without records hi-fi version-

会期:2010/01/08~2010/01/31
shin-bi[京都府]
会場の中央には、4本のアームがついたレコードプレーヤー型オブジェが1点。レコードは乗っておらず、本来レコード針があるはずのヘッド部分には独自の改造が施されている。それら4本のアームはランダムな動きを見せながらターンテーブルを引っ掻き、ノイズの自動演奏を行なうのだ。音楽を再生する機械から本来の目的を奪った時、そこからどんな音(音楽)が生みだされるのか。その実験の成果がこのサウンドオブジェなのだろう。
2010/01/12(火)(小吹隆文)
DOMANI明日展2009 未来を担う美術家たち

会期:2009/12/12~2010/01/24
国立新美術館[東京都]
文化庁による「芸術家在外研修(新進芸術家海外研修制度)」の成果発表展。12人の作家がそれぞれ作品を発表した。木製の廃材を高く積み上げて巨大な本棚を見せた高野浩子や、高層ビルが乱立する風景写真にレイヤーを重ね、求心力と遠心力を同時に体感させる安田佐智種などが見応えのある作品を見せた。それにしても展観を見終わって痛感するのは自律した批評の必要性だ。成果発表展という性格上、出品アーティストは短いコメントを発表させられていたが、「成果」を客観的に評価するには、観客や批評家による判断が不可欠である。だが、芸術家を海外に派遣する制度が確立されている一方で、そうした批評的な判断を成熟させる制度は十分に用意されていない。内容の如何が問われることがないまま、展覧会の履歴が自動的に更新されていき、その目録が新たな挑戦の資格となってしまう現状は、アーティストのみならず展覧会の企画者にとっても、彼らの表現がまっとうに吟味されないという点で、大きな不幸といえるのではないだろうか。
2010/01/11(月)(福住廉)
ドゥシャン・カーライの超絶絵本とブラチスラヴァの作家たち

会期:2009/11/21~2010/01/11
板橋区立美術館[東京都]
スロヴァキアの絵本作家、ドゥシャン・カーライの展覧会。《不思議の国アリス》や《アンデルセン童話集》などをモチーフとした原画、油彩画などおよそ250点と、カーライの影響を受けた絵本作家による挿絵の原画50点あまりが展示された。「超絶」というほどの超人的なテクニックが駆使されているようには見えなかったが、それでも絵の構図や色彩のセンスはたしかに唸るものがある。
2010/01/10(日)(福住廉)
うつゆみこ「はこぶねのそと2」

会期:2010/01/08~2010/01/31
G/P GALLERY[東京都]
昨年同じギャラリーで開催された「はこぶねのそと」の続編というべき個展。アートビートパブリッシャーズからうつゆみこの最初の写真集『はこぶねのそと』が刊行されたのにあわせて、旧作に未発表の新作を加えた勢いのある展示になっていた。
うつゆみこのキッチュ+ポップ+グロテスクの三位一体の作品群は、発想、手法、仕上げとも完全に安定期に入っているように見える。レベルの高い作品を次々に生み出すことができるようになり、手を替え品を替えてマンネリズムをうまく回避している。今回は古典的な肖像画のスタイルをうまく取り込んでおり、以前ほど派手さはないが、古代遺跡から発掘された人類学的な遺品の集積といった趣も感じさせる。メキシコ辺りの土産物屋の店先に実際に並んでいてもおかしくないような、やや渋めの作品も多い。ただ、ここから先どんなふうに彼女の作品世界が展開していくかが、楽しみであるとともにむずかしい所にさしかかっているとはいえるだろう。とはいえ、生産力と引き出しの多さは同世代の作家の中でも群を抜いている。さらに見る者を驚かせるような奇想を全面展開していってくれるのではないだろうか。
2010/01/08(金)(飯沢耕太郎)
小谷元彦展 Hollow

会期:2009/12/17~2010/03/28
メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]
小谷元彦の新作展。展覧会のタイトルにもなっている《Hollow》シリーズなど、10点が発表された。人体を構成する鋭角上の突起物が天に逆上していくような形態と白で統一した色彩によって、彫刻らしからぬ浮遊感を醸し出すのが特徴だが、ここには重力にもとづいた彫刻というジャンルへの反逆的な態度が貫かれている。反重力という志向性は、たしかに21世紀的であり今日的なモチーフなのだろう。けれども肉眼で作品を見た実感でいえば、どうにもこうにも粗雑な仕上がりが目について仕方がない。表面の処理が甘いからなのか、曲線が有機的に描き出されていないからなのか、フォトジェニックな魅力とは裏腹に、いくら実物を見ても視線の快楽が満たされることがないのである。そうした視線の寄る辺なさこそ、あるいは反重力的な彫刻を見るという矛盾した経験を如実に物語っているのかもしれない。しかし、究極的には、私たちは肉眼で鑑賞するほかなく、つまり「重力の圏内」から逃れられない以上、重力に規定された視線に耐えうる造形物をつくりだす必要があるのではないだろうか。重力と反重力のせめぎあいをよりいっそう極限化する余地が残されているように思えてならない。
2010/01/07(木)(福住廉)


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