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美術に関するレビュー/プレビュー

アイヌの美──カムイと創造する世界

会期:2009/11.23~2010/01/11

京都文化博物館[京都府]

ロシア民族学博物館が所蔵するアイヌ民族の資料から215点を展示。衣類や木製道具などの模様や図柄の「美」に焦点を当てた展覧会。衣服の刺繍や、小刀などの道具に彫られたさまざまな模様の美しさもさることながら、丁寧に時間をかけてつくられ、大切に扱われてきたことがうかがえる資料群には圧倒的な魅力と迫力がある。魔除けやお守り、儀式でシャーマンが用いるかぶり物などもあったが、トナカイの足、セイウチや鮭の皮など見たこともない素材にも目を見張った。厳しい自然の環境で暮らす人々の切実な祈りが込められた知恵と工夫の塊であることがどの資料からも伝わってきてとにかく凄い。日本初公開というアイヌ絵12点の展示も見応えがある。江戸時代から明治のはじめに活躍した絵師・平沢屏山の作品なのだが、《種痘図》《熊送り図》など、実際に蝦夷地に住みながら描いたというアイヌの生活は、なんとも生々しい臨場感だ。会場の解説は雑なものに感じられたが、かえって展示資料の用途や使用場面など詳細が知りたくなってカタログも購入。素晴らしい内容だった。

2010/01/06(水)(酒井千穂)

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アイヌの美──カムイと創造する世界

会期:2009/11.23~2010/01/11

京都文化博物館[京都府]

ロシア民族学博物館が所蔵するアイヌ民族の資料から215点を展示。衣類や木製道具などの模様や図柄の「美」に焦点を当てた展覧会。衣服の刺繍や、小刀などの道具に彫られたさまざまな模様の美しさもさることながら、丁寧に時間をかけてつくられ、大切に扱われてきたことがうかがえる資料群には圧倒的な魅力と迫力がある。魔除けやお守り、儀式でシャーマンが用いるかぶり物などもあったが、トナカイの足、セイウチや鮭の皮など見たこともない素材にも目を見張った。厳しい自然の環境で暮らす人々の切実な祈りが込められた知恵と工夫の塊であることがどの資料からも伝わってきてとにかく凄い。日本初公開というアイヌ絵12点の展示も見応えがある。江戸時代から明治のはじめに活躍した絵師・平沢屏山の作品なのだが、《種痘図》《熊送り図》など、実際に蝦夷地に住みながら描いたというアイヌの生活は、なんとも生々しい臨場感だ。会場の解説は雑なものに感じられたが、かえって展示資料の用途や使用場面など詳細が知りたくなってカタログも購入。素晴らしい内容だった。

2010/01/06(水)

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まばゆい、がらんどう

会期:2010/01/06~2010/01/20

東京藝術大学大学美術館 展示室1[東京都]

「絵画、彫刻、写真、映像、音響、インスタレーションなど、さまざまな手法を横断する作家による尖鋭な作品を紹介し、“アート”とテクノロジーの可能性を探る」という趣旨で、東京藝術大学写真センターの椎木静寧が企画・構成した現代美術のグループ展。出品作家は、志水児王、鷹野隆大、高嶺格、谷山恭子、玉井健司、平野治朗、森弘治の7人である。
志水のレーザー光線を使った繊細な光のインスタレーション、谷山の柔らかに伸び広がっていく有機的なオブジェの構成など、面白い作品もあるのだが、あまりにも手法、テーマがバラバラ過ぎて展覧会全体の輪郭がうまく像を結ばなかった。「まばゆい、がらんどう」というなかなかいいタイトルも、あまりぴったりフィットしているとは思えない。出品作家の中で唯一の写真家である鷹野隆大は《男の乗り方》シリーズと《ヨコたわるラフ》シリーズから、ロールサイズに大きく引き伸ばしたモノクローム・プリントを出品していた。これも技術的な問題のためなのか、いつもののびのびとした展示の効果が充分に発揮されているようには見えなかったのが残念だ。鷹野はこの所、息を継ぐ間もなく展覧会や写真集の出版が続いている。小休止が必要な時期に来ているのかもしれない。

2010/01/06(水)(飯沢耕太郎)

上田順平・山本太郎・龍門藍「俗なる美意識」

会期:2010/01/20~2010/02/20

イムラアートギャラリー[京都府]

卑俗で過剰な装飾をまとったキッチュな陶オブジェで知られる上田順平、現代と伝統がハイブリッドした日本画を制作する山本太郎、少女人形などをモチーフにした油彩画の龍門藍が出品。いずれも日常生活に根差した視線で現代の雑食的な日本文化を浮き彫りにする作家たちだ。3人のなかでは龍門の作風がやや浮いているように思われるが、それをどのようにまとめ上げるのか、ギャラリーのディレクションにも注目したい。

2009/12/31(木)(小吹隆文)

正延正俊─1960年代を中心に─

会期:2010/01/16~2010/02/20

ギャラリーヤマグチクンストバウ[大阪府]

正延正俊(1911~1995)は具体美術協会結成に関わった作家で、すべての「具体展」(第1回/1955~第21回/1968)に参加した稀有な存在である。具体メンバーの多くがアクションペインティングやパフォーマンス等の実験的作風に傾斜していくなか、彼は一貫してペインティングにこだわり続けた。それゆえという訳でもなかろうが、現在では知る人ぞ知る存在になってしまった。本展はそんな正延の再評価を試みるもの。芦屋市立美術博物館学芸員の加藤瑞穂をキュレーターに起用し、1960年代の作品を中心に主要作品を紹介。彼の大規模な個展としては実に45年ぶりの開催となる。

2009/12/31(木)(小吹隆文)