artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
デジタル・オイル・ペインティング展

会期:2010/01/06~2010/01/20
東京藝術大学大学美術館[東京都]
東京藝大と東京工大の共同研究により、まるで筆で油絵を描くような描画効果が得られるペイント・ソフト「OPS:油画描画シミュレータ」が完成したという。その研究発表とシミュレータを使って描いた作品の展示。なぜか《モナ・リザ》の模写も何点かある。このような描画シミュレータのすばかしい(すばらしく、ばかばかしい)点は、本来は欠点と見なされるような絵筆のかすれや混色のムラなどを、わざわざ人工的につくり出すことだ。たとえてみれば、100点満点じゃ大人げないからわざと間違えて90点をとるみたいな。ちょっと違うか。じゃあ、ニセ1万円札を1枚つくるのに2万円かかってしまったとか。もっと違うか。でもそんなアホえましい(アホらしく、ほほえましい)研究ではある。。
2010/01/14(木)
国宝 土偶展

会期:2009/12/15~2010/02/21
東京国立博物館[東京都]
つい最近まで土偶と埴輪の区別もつかなかった。区別する必要に迫られたことがなかったのだ。それほどこいつらは美術史の端っこにいたわけだ。土偶は(埴輪もそうだが)見るため、愛でるためではなく、祈るため、壊すため、埋めるためにつくられた。そんな美術品は、少なくとも有史以降は見当たりませんね。だからシカトする、というのではもったいない。これからは土偶のように祈るため、壊すため、埋めるための美術もありかも、と勇気づけられるのが正しい接し方というものだ。
2010/01/14(木)
内藤礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している

会期:2009/11/14~2010/01/24
神奈川県立近代美術館/鎌倉館[神奈川県]
内藤礼の個展。糸やテープ、リボン、ビーズ、テグス、そして透明なガラス瓶など、繊細な素材を組み合わせたインスタレーションなど9点を発表した。ガラスの奥の展示スペースに観客を誘い入れたり、青空の真ん中でひらひらと舞うリボンを見上げさせるなど、私と世界のひそやかな関係性を追究してきた内藤ならではの展観で、おもしろい。リボンの向こうの青空を数匹のトンビがゆっくりと旋回していた光景は、どんな絵画作品よりも美しく、同時に美術のはかなさをも暗示していた。ただ、見方を変えれば、内藤のような静かではかない作品は、展覧会を企画する側にとって経済的に安上がりで、好都合なのだろう。絵画や彫刻のように大きな輸送費もかからず、映像のようにプロジェクターを何台も用意しなければならないわけでもない。今後も改善される見込みがないデフレ時代においては、こうした類の現代アートが主流になるのかもしれない。
2010/01/13(水)(福住廉)
小谷元彦「Hollow」
会期:2009/12/17~2010/03/28
メゾンエルメス[東京都]
白い樹脂の彫刻。身体から発散されるアウラか、毛穴からはい出る寄生虫かみたいな気色悪い、でもそれゆえに「自分」の境界が揺らいでしまいそうなモチーフだ。それにしても最近、水とか煙とか彫刻になりにくい非実体的なものをモチーフとする彫刻が増えてる気がする。絵とは違って彫刻は大きな固まりから彫り出したり、鋳型をつくって流し込んだりするから、実体とか境界とかに敏感にならざるをえないのだろう。でもそれをまた彫刻で表現しなければならない難しさ。などと考えさせられた展覧会。
2010/01/12(火)(村田真)
富田有紀子 展

会期:2010/01/12~2010/01/30
ギャラリーなつか[東京都]
花や果実をドーンと正方形の画面いっぱいに描いている。それらには中心があり、そこから内部があふれ出すイメージだ。別に彼女は花や果実を描きたいわけじゃなく、中心からエネルギーが放射される瞬間を描きたいのだろう。だから核爆発のキノコ雲でも宇宙開闢のビッグバンでもよかったはず。と考えるのは男の浅知恵。それがキノコ雲ではなく、花や果実である点が富田の富田たるゆえんなのだ。
2010/01/12(火)(村田真)


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