artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

広島アートプロジェクト2009「吉宝丸」

会期:2009/09/05~2009/09/23

広島市中区吉島地区[東京都]

街なかの広場や倉庫に作品を点在させ、観客はそれを自転車で見てまわるという、ま、最近よくあるやつ。予算も乏しそうだし、名の知られたアーティストも少ないのであまり期待しないで見に行ったら、これが意外とよかった。作品は全体に小ぶりで、場所的にも谷口吉生設計の中工場を除いて「絶景」はなかったが、それぞれの場所に敏感に反応してつくられたサイト・スペシフィックな作品に秀作が多かったように思う。たとえば、倉庫にもともと備わっていた機器類をポップにリニューアルした谷山恭子や、中工場のデッキ突端に対岸のクレーンを模して糸製クレーンを建てた岩崎貴宏、1枚のパンティをほぐした糸で数カ所にクモの巣を張った平野薫、建物の外壁の汚れを削って山水画を描いた水口鉄人(写真)などがいい例だ。また、フライドチキンの骨を組み合わせて小さな人体骨格をつくった祐源紘史や、能面の表面を削ってかわいい顔にしてしまった青田真也など、場所とは関係なくおもしろい作品も散見された。村田真賞は水口鉄人に決定。いやあ、広島まで足を伸ばしてよかった。

2009/09/10(木)(村田真)

トロマラマ

会期:2009/07/18~2009/09/13

広島市現代美術館[広島県]

木炭デッサンを少しずつ描き直しながら撮るアニメはしばしば見かけるが、木版画でそれをやったのを見るのは初めて。作者のトロマラマはインドネシアの若手アーティスト3人によるグループ。上映された《セリガラ・ミリシャ》は、まっさらな板に少しずつ彫りながら撮影したものだが、ある程度彫ったら新しい板に換えてまた彫らなければならないから大変な作業だ。その厖大な労力に心を奪われ、へヴィメタの音や社会的メッセージは記憶が薄い。

2009/09/10(木)(村田真)

小沢剛──透明ランナーは走りつづける

会期:2009/08/01~2009/09/27

広島市現代美術館[広島県]

《地蔵建立》《なすび画廊》《ベジタブル・ウェポン》などなじみのある作品から、初めて見る《天空からの絨毯》と新作《広島・比治山七不思議》まで、20年の活動を回顧。こうやって見ると、かつてのヌケてたところが抜けてきて、なんか社会派っぽくなりつつあるんじゃないか。

2009/09/10(木)(村田真)

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版画がつくる 驚異の部屋へようこそ!展

会期:2009/08/08~2009/09/23

町田市立国際版画美術館[東京都]

版画にはあまり興味がないのでこの美術館にはあまり足を運ばないが、今回は喜び勇んで駆けつけた。というわりに会期も半ばをすぎているのは、こんな展覧会をやってることすら知らなかったからだ。ヴンダーカマー同好会(いま設立)としてはもっと宣伝してほしいし、カタログもつくってほしかった。16~17世紀ヨーロッパの王侯貴族のあいだで流行した、科学と魔術と芸術の未分化なヴンダーカマー(驚異の部屋)の雰囲気を伝える版画をはじめ、キルヒャーの『シナ図説』、ヨンストンの『動物図譜』、18世紀の人体解剖図、ソーントンの植物誌『フローラの神殿』など、澁澤龍彦ならずとも狂喜しそうな博物図譜が並んでいる。さすが版画美術館、こんなのももってるとは。

2009/09/08(火)(村田真)

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土岐謙次 漆器展 捨てられないかたち

会期:2009/09/05~2009/09/19

GALLERY GALLERY[京都府]

スーパーマーケットなどで使われている包装用トレイを、脱活乾漆技法で漆作品として提示した。卵、納豆、豚バラ肉、なかには英国で見つけたマンゴー用のトレイという珍品も。漆黒の漆器に生まれ変わったそれらはいずれも美しく、高級感さえ漂わせている。日頃リサイクルごみとして消費されている物とはとても思えないほどだ。よくよく考えれば、トレイは厳密に設計されたプロダクト製品であり、美しくても何ら不思議ではない。土岐はその事実を改めて明らかにすると同時に、実用品という意味では伝統工芸とプラスチック製品が同列にあることをも示したのだ。

2009/09/08(火)(小吹隆文)