artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

児玉靖枝 展「深韻II」

会期:2009/09/07~2009/09/19

Oギャラリーeyes[大阪府]

《深韻》というシリーズの最新作を発表。展示作品はどれも、水面に映る光景を描いたものだが、暗い森の木々の間を通り抜けるような微妙な光線、温度や周囲一帯の湿度の感触など、作家が目にし、感受したその風景を追体験するような感覚を覚えた。現実と幻の入り混じった、映像を見ているような気持ちにもなる底知れない奥行きを感じる。深く沈んでゆくような色の豊かな表情が美しく、タイトルを反芻するように余韻に浸った。ちなみに児玉さんは現在開催中の神戸ビエンナーレ招待作家展「Link──しなやかな逸脱」(兵庫県立美術館、10/3~11/23)に出品中。まるで画面の奥から音が聞こえてくるかのような作品が並ぶ。

2009/09/11(金)(酒井千穂)

慶應義塾をめぐる芸術家たち

会期:2009/06/20~2009/09/23

国立国際美術館[大阪府]

なんで大阪で慶應の展覧会を?と疑問に思ったら、慶應義塾を創設した福沢諭吉が美術館の近くの堂島浜に生まれ、しかも「水都大阪」の会場のひとつでもある適塾で学んだという大阪人だからだ。でも慶應には美術学部もないのに、だれがなにを出すんだ? というと、詩人の西脇順三郎や瀧口修造、彫刻家の飯田善國、版画家の駒井哲郎らOBと、慶應の建築を手がけた谷口吉郎、その谷口とコラボしたイサム・ノグチの作品を展示していた。でも小品が多いし、あまり脈絡もないし、やなぎの作品を見たあとでは吹っ飛んでしまいますな。ま、KO負けってことで。

2009/09/11(金)(村田真)

やなぎみわ 婆々娘々!

会期:2009/06/20~2009/09/23

国立国際美術館[大阪府]

CGを使った初期の《エレベーターガール》から、半世紀後の自分に扮する《マイ・グランドマザーズ》、今年のヴェネツィア・ビエンナーレに出した巨大な最新作《ウィンドスウェプト・ウィメン》まで出品。ウムをいわせぬ迫力に圧倒される。まいりました。

2009/09/11(金)(村田真)

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水都大阪2009

会期:2009/08/22~2009/10/12

中之島公演ほか[大阪府]

かつて大阪は「水の都」といわれたくらい川や運河が縦横に走っていたが、近代以降は水に背を向けフタをしてきた。その水=川にもういちど目を向け、アートでにぎわいを取り戻そうというプロジェクトが「水都大阪」だ。プログラムは、中之島の東端の公園で繰り広げられる体験型の作品やワークショップを集めた「水辺の文化座」、中之島近辺の歴史的建造物に作品を設置する「水都アート回廊」など、いくつかに分かれている。いわば巨大都市を相手にした「水際作戦」だが、それだけにアーティストもプロデュース側も苦戦した様子がうかがえる。自分でポンプを押さなければ水が出ない小沢剛の《人力噴水》や、福沢諭吉らを輩出した適塾に最小限の作品しか置かなかった今村源の《茸的熟考》は、そのへんの事情を逆転させた佳作といえる。

2009/09/11(金)(村田真)

大正期、再興院展の輝き

会期:2009/09/12~2009/10/25

滋賀県立近代美術館[滋賀県]

今では日本画壇の権威となった院展だが、再興した大正期には在野の立場で文展に挑んでいた事実を再認識した。展覧会は6つの章で構成されているが、速水御舟や小茂田青樹ら細密描写に長けた腕利きが揃う第三章「写実表現の追求」と、冨田渓仙、川端龍子、北野恒富らを紹介した第四章「個性の表現」に見応えがあった。また、酒井三良の作品を(恥ずかしながら)初めて知ったが、その類まれな個性にいたく感心した。在野の雄として官展に対抗した院展だが、そんな彼らの内部でも大正末期には権威化が始まっていたと聞く。いつかその経緯を扱った展覧会を見たいものだ。

2009/09/11(金)(小吹隆文)

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