artscapeレビュー

広島アートプロジェクト2009「吉宝丸」

2009年10月15日号

会期:2009/09/05~2009/09/23

広島市中区吉島地区[東京都]

街なかの広場や倉庫に作品を点在させ、観客はそれを自転車で見てまわるという、ま、最近よくあるやつ。予算も乏しそうだし、名の知られたアーティストも少ないのであまり期待しないで見に行ったら、これが意外とよかった。作品は全体に小ぶりで、場所的にも谷口吉生設計の中工場を除いて「絶景」はなかったが、それぞれの場所に敏感に反応してつくられたサイト・スペシフィックな作品に秀作が多かったように思う。たとえば、倉庫にもともと備わっていた機器類をポップにリニューアルした谷山恭子や、中工場のデッキ突端に対岸のクレーンを模して糸製クレーンを建てた岩崎貴宏、1枚のパンティをほぐした糸で数カ所にクモの巣を張った平野薫、建物の外壁の汚れを削って山水画を描いた水口鉄人(写真)などがいい例だ。また、フライドチキンの骨を組み合わせて小さな人体骨格をつくった祐源紘史や、能面の表面を削ってかわいい顔にしてしまった青田真也など、場所とは関係なくおもしろい作品も散見された。村田真賞は水口鉄人に決定。いやあ、広島まで足を伸ばしてよかった。

2009/09/10(木)(村田真)

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